東京の湾岸エリアにあるタワーマンションを保有している人や購入を検討している人にとって「湾岸2024年問題」は知っておくべきトレンドです。
具体的にどのような問題なのでしょうか。湾岸2024年問題によって、不動産売買にどのような影響があるのかを知ることで、後悔のない取引ができます。
湾岸2024年問題とは何か、そして売り手や買い手はどのような行動をとるべきなのかを解説します。
目次
湾岸2024年問題とは何か
湾岸2024年問題とはどのような問題なのでしょうか。不動産で「〇〇年問題」と聞くと、法令制限の解除やルール改正が思い当たりますが2024年問題は少し内容が異なります。
2024年に新築マンションの引き渡しが多く発生する
湾岸2024年の「湾岸」とは、東京都中央区や江東区の湾岸エリアを指し、そのエリアの新築タワーマンションに関する事柄を指しています。湾岸2024年問題の要因のひとつとなる湾岸エリアの代表的なタワーマンションには、今後引き渡しが予定されている「晴海フラッグ」や「パークタワー勝どき」などが該当します。
東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地に建築される晴海フラッグ(総戸数:5,632戸)は2024年に引き渡し予定になっています。パークタワー勝ちどき(総戸数 2,786戸)については、晴海フラッグよりも工期は短くなる予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で晴海フラッグと同じタイミングでの引き渡しとなる予定です。
晴海フラッグとパークタワー勝ちどきの入居者が2024年に入居することになり、引っ越しと住み替えが一時的に多くなります。
中古不動産が供給過多となる可能性がある
「晴海フラッグ」や「パークタワー勝どき」といった大規模マンションの引き渡し時期が重なってしまうだけであれば、大きな問題とはならないでしょう。
しかし、引き渡しにあわせて現在住んでいる戸建てやマンションを売却する場合、多くの中古不動産が流通することになります。これによって不動産が供給過多となり、価格が下落するおそれがあります。
このように、2つのマンションの引き渡しと住み替えが重なることで不動産が供給過多状態になってしまう問題が「湾岸2024年問題」と呼ばれています。
買い手にとっては大きなチャンスとなる
2024年問題は、タワーマンションのオーナーにとっては価格が下落するリスクを抱えることになります。一方で買い手にとっては多くのタワーマンションを比較検討できる状態になります。
タワーマンションはもともと人気が非常に高く、公開されて数時間で売れてしまうことも珍しくありません。そのため、タワーマンションの売却物件が多く公開されることで選択肢が増え、希望する物件が購入できる可能性が高くなります。
2024年問題の前に買い手、売り手がとるべき行動とは
湾岸2024年問題は、買い手と売り手のどちらにも大きな影響を与えます。そのため、事前に対策をしておく必要があります。
湾岸2024年問題に関する対策について、買い手と売り手の両側面から解説します。
売り手は2024年になる前に売却を!
売り手は2024年になる前に売却活動を開始したほうがよいでしょう。
売り手からすると、一時的に競合物件が増えてしまうことで買い手がつきづらくなり、販売が長期化するおそれがあります。また、競合物件の台頭は価格交渉を受ける要因にもなります。
そのため、タワーマンションを早期売却したいと考えている売り手は2024年までに売却するとよいでしょう。売却活動を早期から計画的に進めることで、販売価格を下げずに済む可能性が高まります。
そのため、売却を検討している売り手は早めに不動産会社へ相談しましょう。
長期保有するという選択肢もある
売却の予定はなく、時間がかかっても相場かそれ以上で売却したいと考える場合、2024年以降に売却を開始するとよいでしょう。
湾岸2024年問題による供給過多は一時的な現象であり、早ければ2024年度中に通常の供給に戻ると考えられるからです。
そもそも湾岸沿いのタワーマンションは、新築でも中古でも非常に人気が高く、公開した瞬間に申し込みが入ることもあります。そのため、供給物件数が多い時期に無理に売却をスタートするよりも需要と供給のバランスが落ち着いたタイミングで売却することで、適正価格で売れるでしょう。
買い手は即決できる準備を進めておく
買い手にとって、供給過多になることで選択肢が増えます。それでも優良物件は早い者勝ちであることは変わりません。
また、物件数が増えることで買い手の物件を見る力が養われ、良い物件と悪い物件を見分けられる買い手が増加するでしょう。
2024年はこのような状況が予想されるため、即決できる準備をしっかり完了させておくことが重要です。そのため、2024年になる前には以下のような準備をしておくことをおすすめします。
- 家族間でニーズを決め、優先順位がつけておく
- 検討物件やマンションの周辺環境を調査しておく
- 資金計画の立案と銀行の事前審査を受けておく
- 親の援助有無を確認しておく
- 狙っている物件の学区を把握しておく
- 転入、転出に関連する手続きを調べておく
- 手付金の準備をしておく
湾岸エリアのタワーマンション、2024年問題以外の注意点とは
湾岸エリアのタワーマンションには、2024年問題以外にも注意点があります。2024年以降にも、注意点は継続して存在するため、タワーマンションを検討する際には必ず注視する必要があります。
買い手はライフプランを立案する
アメリカの金利上昇を受け、日本の大手銀行の固定金利も上昇傾向にあります。2024年には日本銀行の黒田総裁とFRBのパウエル議長が同時に解任となることから、今後も金利の動向は不透明といえます。
このような金利情勢の中、高額なタワーマンションを購入するためには、必ずライフプランの立案が必要です。ライフプランはファイナンシャルプランナーが作成する、将来にわたっての支出バランスのことで、今後の金利上昇を加味したシミュレーションが可能です。
そのため、将来の金利動向をなるべく可視化したい人にはライフプランがおすすめです。
売り手はトレンドの変化を注視する
タワーマンションの人気は十数年前から変わりませんが、少しずつ求められるマンションのトレンドは変化しています。
たとえば、新型コロナウイルスの前はトレーニングジムや託児所が併設されているタワーマンションが人気でしたが、昨今はクリーニングや冷凍宅配ボックス付きのマンションが注目されています。
売却しようとしているタワーマンションが、世の中のトレンドに合致しているかどうかは非常に重要なポイントです。
タワーマンションの売買は不動産のプロに相談
湾岸2024年問題は、基本的には買い手に有利で売り手に不利な問題です。
しかし、物件が多すぎて悩み過ぎたり、そもそも購入のタイミングでないのに無理に購入して生活が苦しくなったりと、買い手にも注意点はあります。
つまり、買い手も売り手も2024年問題に対して正しい対応をしなければ、大きな損失につながりかねないということです。
このような失敗をしないためにも、タワーマンションを売買する際にはまず不動産会社に相談し、情報収集しましょう。そのうえで、適切なタイミングで適切な行動をすることが重要です。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。