所有するマンションは大切な資産です。老後の生活を考えたときに、売却して現金化するかどうかは重要な問題になるでしょう。マンション売却は老後資金をつくれるものの、いまの住まいを失うことになります。まずはメリットとデメリットを把握して、老後にマンションを売却するかどうかを検討しましょう。
目次
老後にマンションを売却するメリット
子どもの独立や定年退職などをきっかけに、マンションの売却を検討することがあります。老後にマンションを売却することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。まずは代表的な5つのメリットを紹介します。
老後に合う住環境に改善できる
子どもが独立したあと、夫婦ふたりの暮らしに合ったマンションに買い替えることで、住環境を改善できます。
たとえば広さよりも立地を優先することで利便性が向上し、日々の買い物や通院が楽になります。また、コンパクトな住まいにすることで、固定資産税や管理費などの支出を抑えることにつながり、生活にゆとりが生まれるでしょう。
老後資金の確保になる
マンションを売却して賃貸住宅へ住み替えることで、住宅ローンを完済でき、老後の資金を確保できます。
持ち家の場合は、税金以外にも維持費がかかります。たとえば水回りや設備を改修する場合、数十万円~数百万円単位の改修費がかかります。しかし、賃貸住宅であれば、家賃や管理費以外の費用はかかりません。つまり、資金を温存しやすいこともメリットといえます。
相続トラブルを回避できる
マンションの相続人が複数人いる場合、どのように資産を分割するかでトラブルになることがあります。売って現金化したいと考える人もいれば、賃貸物件として貸したいと思う人もいるかもしれません。
しかし、マンションを売却して現金化しておけば、資産を平等に分割しやすく、トラブルを最小限に抑えられます。とくに相続人が多い場合は、早めの売却を検討しておきましょう。
固定費を削減できる
退職後は、収入が減少します。家を売却して賃貸住宅に住み替えれば、固定資産税や都市計画税はかからないため、固定費を削減できます。たとえばコンパクトな住宅に住み替えることで光熱費を削減でき、住み替え先によっては管理費や修繕積立金などの支出も減らせるでしょう。
住み替えがしやすくなる
マンションを売却することで、ライフスタイルに合わせて住み替えがしやすくなります。いまの暮らしに合っていると思う住まいも、5年後には合わなくなるかもしれません。たとえば将来的に海外移住や田舎暮らしを検討している人にとっては、マンション売却がその足掛かりになるでしょう。
老後にマンションを売却するデメリット
老後のマンション売却にメリットがある一方で、デメリットもあるため注意が必要です。ここでは、代表的なデメリットを5つ紹介します。
賃貸住宅への入居が難しい
傾向として高齢者は賃貸住宅の入居審査が厳しく、希望するマンションやアパートへ入居できないことがあります。
とくに高齢者のひとり暮らしは孤独死を心配して、入居を断る貸主もいます。子どもが近くに住んでいるなど、安心材料を提示して、入居申し込みをするようにしましょう。
荷物の整理に負担がかかる
若いうちは何でもないと思っていた荷物の整理や住環境の変化も、年齢が高くなるにつれて負担に感じるようになります。
もし老後に引っ越しを検討している場合は、なるべく早めに計画しましょう。引っ越し会社によっては、荷づくりも依頼できるプランもあります。なるべく心身に負担を感じることがないよう、ゆとりを持って準備を進めましょう。
愛着や思い出の場所を手放す
マンションを売却することは、家族の思い出が詰まった住まいを手放すことになります。いざ売却をする段階になって、さみしさを覚えるかもしれません。また転居先によっては、住み慣れた環境から離れることになります。子どもや家族とよく相談したうえで、マンションの売却を進めるようにしましょう。
家賃の支払いが生じる
マンションを売却して賃貸住宅に転居することで、家賃の支払いが発生します。車を所有している場合は、駐車場代もかかります。
賃貸住宅に駐車場がない場合は近隣で探す必要があり、その場合は駐車場代が割高になることもあります。退職後は収入が減るため、無理のない範囲で住み替え先を検討しましょう。
売却価格が低いことがある
マンションの築年数や条件によっては、想定よりも売却価格が低く、手元にそれほど資金が残らないことがあります。
まずは不動産会社に査定依頼して、売買代金で住宅ローンを完済できるのか確認しましょう。またマンションを売却する際は仲介手数料などがかかるため、諸費用も含めて資金計画を立てておく必要があります。
準備が重要!老後のマンション売却のポイント
老後にマンションの売却をする場合、どのような点に気をつけて進めたらよいでしょうか。最後に、マンション売却を成功させるためのポイントを紹介します。
適切なタイミングを見極める
マンション売却は、タイミングが重要です。不動産価格は需要と供給の影響を受けやすいため、なるべく高く売却するためには不動産市場が好調で、需要が高まるタイミングを見極める必要があります。
マンション価格は右肩上がりに上昇し続けていますが、金利が上昇することも考えられ、今後もこの流れが長く続くとは限りません。自身のライフステージも見極めたうえで、売却時期を検討する必要があります。
売却で得た資金の活用を検討する
マンションを売却して得た資金を、どのように活用するのかよく検討したうえで行動に移すようにしましょう。
たとえば高齢者施設への入居資金や新居購入資金、賃貸に住み替えるための初期費用など、さまざまな活用方法が考えられます。どの程度の費用がかかるのか試算しておき、むやみに資金を減らすことがないよう資金計画を立てましょう。
子どもや家族と相談する
マンションの売却は、子どもや家族とよく相談したうえで進めることをおすすめします。もし独断で決めてしまうと、あとになってトラブルになるおそれがあります。マンションは、子どもにとっては実家になります。「思い出の詰まった家がなくなってしまった」とさみしがるかもしれませんし、マンションを引き継いで、住み続けたいと思っている可能性もあります。
売却のタイミングや新居をどこにするのかも含めて、家族でよく話し合ってから進めるようにしてください。
売却後の住み替え先を吟味する
マンションの売却を進める際は、同時に住み替え先も探す必要があります。売買契約締結後、通常1~2カ月程度でマンションを引き渡すことになるため、住み替え先の選定にそれほど時間をかけられないこともあります。
しかし、引っ越してから後悔しないためにも、よく吟味したうえで住み替え先を決めましょう。スーパーや商業施設だけでなく、病院が近くにあるかどうかも重要です。また利便性だけでなく、住環境も重視して選びましょう。
ちなみに自宅を売却してから新居を購入する場合は、仮住まいが必要になります。仮住まいの期間が長くなると、その分家賃がかさむため、住み替え先の選定はなるべく早く行いましょう。
売却に向けた書類準備など
マンション売却には、権利証などの書類が必要になります。売買契約時になって慌てることがないよう、早めに必要書類を確認しておきましょう。
ちなみに、マンションの査定依頼や売買契約、決済・引き渡し時などに必要になる書類は次のとおりです。
- 登記識別情報もしくは登記済権利証
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
- 印鑑証明書・住民票
- 固定資産評価証明書
- 固定資産税納税通知書
- 購入時のパンフレット・間取り図
- 管理規約・使用細則
- 長期修繕計画書・総会議案書
- 抵当権抹消書類
- 設備の取扱説明書・保証書
ただし、すべて揃っていないと、売買契約を締結できないわけではありません。実際に準備しなければならない書類は、早めに不動産会社に確認しておきましょう。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。
【保有資格】
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士