「マンション価格が上昇している」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。全国的にマンション価格が上昇傾向にありますが、この記事では東京都におけるマンションの売却価格について紹介します。
過去10年間の価格推移や上昇している理由について解説しているので、東京都でマンション売却を検討している方は参考にしてください。
目次
東京都のマンション売却価格の推移
ここでは、公益財団法人東日本不動産流通機構の「レインズデータライブラリー」から東京都におけるマンションの平均売却価格や平均㎡単価などの推移を紹介します。過去10年間の取引データは以下のとおりです。
東京都におけるマンションの平均売却価格をみてみると、過去10年間で一度も前年を下回ることなく上昇し続けています。売却価格の上昇や減少を正確に把握するために、㎡単価の推移にも着目してみましょう。
東京都のマンション売却価格の㎡単価は、売却価格同様に過去10年間上昇し続けており、10年間で30万円以上上昇しています。たとえば、60㎡のマンションを売却する場合に、2012年と2021年では、単純に計算すると、約1,800万円の差が生まれることになります。
東京都のマンション売却価格が上昇している理由
なぜ、東京都のマンション売却価格が上昇しているのでしょうか。東京オリンピックも終わり、人口減少が続く東京都のマンションのニーズは高くないという見解もあります。
しかし、東京都のマンションは高くなる一方です。これは、「マンションを買いたい」という人が増えていることを示しています。ここでは、東京都のマンション売却価格が高くなる理由について解説します。
銀行融資の低金利が継続
東京都に限らず、全国的に中古マンション市場は拡大傾向にあります。その理由には、継続している低金利政策があります。条件のよい銀行では0.4%台(2022年10月時点)という超低金利で住宅ローンを受けられるため、マンション購入の大きな後押しになっていることは間違いありません。
また、アメリカの利上げの影響を受け、金利がいつ上がるかわからないという状態も同様に続いています。そういった不透明な情勢も、消費者を「金利が安いうちに購入した方がよい」という心情にさせているといえるでしょう。
ウッドショックとアイアンショックの影響
新型コロナウイルスによって、一時的に世界の物流がストップし、世界から日本に木材や鋼材が輸入されにくくなりました。アメリカや中国は経済活動の再開が早く、本来日本に輸入されるはずの木材や鋼材を購入するようになりました。
その結果、より日本に建築資材が輸入されにくくなり、建築工事ができなくなるという事態が起きました。
これが、ウッドショックとアイアンショックと呼ばれるものです。この影響は2022年においても続いており、新しいマンションの建築棟数が伸び悩んでいる状態です。そのため中古マンションの需要が増え、売却価格が上昇する原因となっています。
東京都の土地価格が高騰
東京都の土地価格は現在、非常に高い水準をキープしています。たとえば、東京都品川区であれば2022年の平均坪単価が約350万円となっており、車1台停車するためのスペース約5.5坪を購入するだけでも2,000万円近い土地費用が必要となる状態です。
住宅用地を購入するとなれば、土地価格だけで2億円以上かかることも多く、資金に余裕のある人でなければ戸建ての購入は難しいです。このような状況を受け、戸建てを諦めてマンションを購入する人は増加し続けています。
また、いざとなったら売りやすいというのもマンションが評価される理由のひとつです。ライフスタイルが変わり、東京都を離れる際にすぐに換金できるマンションを購入し、不測の事態に備えるというリスクヘッジは、都会に住む人ならではの考え方だといえます。
パワーカップルの増加
少し前まで、家族構成は両親と子ども1〜3人で生活するといった核家族が主流でした。しかし、現在は核家族に加え子どもをつくらない、夫婦2人生活という家族構成も増えています。
夫婦がともに働き、世帯年収が数千万円以上の高所得世帯をパワーカップルといいます。このアパワーカップルが都内の利便性の高いマンションを購入するというケースが増えています。東京都から離れた郊外で家を購入し、世帯主だけが長い通勤時間をかけて通勤するよりも夫婦2人で東京都のマンションを購入し、快適に過ごす方が効率がよいです。そのようなライフスタイルが支持されるようになり、マンション購入者が増加しています。
マンションを少しでも高く売却するために
東京都のマンションは需要が高く、高く売れる可能性があります。そこで、より納得のいくマンション売却をするためのポイントを紹介します。
買取ではなく仲介で売る
買取とは、不動産会社に直接マンションを買い取ってもらう売却方法です。買い手を探す手間が省け、仲介手数料もかからないため、不動産売却方法として人気です。
しかし、買取のデメリットとして売却価格が安くなるという点があります。不動産会社はマンションの買取後、買取価格に税金や諸費用、そして利益をのせた価格で再販売を行います。その際の再販売価格は、周辺のマンション相場と同じ価格帯になっている必要があります。
つまり、買取価格は相場よりも低い価格になります。一般的には、相場の約60%〜70%が買取価格です。そのため、より高くマンションを売るためには買取を選択せず、仲介で売却するようにしましょう。仲介は、マンションを市場に売り出し、買い手を探す売却方法です。
仲介は、仲介手数料がかかるものの、相場の価格で売れる可能性が高いです。価格交渉を受けたとしても買取価格よりは高くなるケースがほとんどです。買取を選択する場合は最終手段とし、仲介で一般顧客に購入してもらう方法を選択するようにしましょう。
不動産会社選びを間違えない
たとえば、同じマンションを5,000万円で売る場合と4,000万円で売る場合を比べた場合、売主の利益は1,000万円の差があります。しかし、不動産会社は売却価格が1,000万円変わったとしても30万円しか仲介手数料の差はありません。不動産会社からすれば安い売却価格にした方が買い手は見つかりやすく、素早く売却できます。そのため、何かと理由をつけて売却価格を下げようとする不動産会社が多いです。
不動産会社を選ぶ際には、売却価格の根拠と売却計画の説明の納得度合いで判断するようにしましょう。そもそも売却価格を提案する際には、根拠を明示する義務があります。何の説明もなく「相場だから」「弊社の経験上」という理由で価格提示することはありえません。
また、大切なマンションをどのような計画で売却していくのかを前もって提案を受けることは重要です。売却価格の根拠と売却計画の内容を確認し、最終的に信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。
まずは査定してみる
マンションを売却する際には、売主が売却価格を決める必要があります。そのため、まずはどのくらいの価格で売却できるのかを事前に把握しておきましょう。
売却価格を把握するためには、不動産会社に査定依頼をしましょう。おおよその売却価格を把握することで、売却後の計画が立てやすくなります。また、査定を受けたうえで売却の可否を決めても構いません。査定は無料でできます。不動産売却を検討したならば、まず査定から始めましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。