住み替えの住宅ローンには年齢制限がある?何歳まで借りられるのかを解説

もっと過ごしやすい地域に引っ越したい、家が手狭になってきたなど、住み替えを検討している人は少なくないでしょう。住み替えで課題になるのは、住宅ローンを借りられるかどうかです。

所有する自宅の売却代金だけで新居を購入できればよいのですが、実際には不足して住宅ローンを組む必要がある人がほとんどです。しかし、年齢が40代、50代だと定年まで10~20年ほどしかありません。それでも住宅ローンは借りられるのでしょうか。

住み替えで住宅ローンを借りるときの年齢制限について解説します。

住宅ローンは40代、50代でも借りられる?

40代や50代でも、住宅ローンを借りることは可能です。ただし、住宅ローンには年齢制限があり、住宅ローンを組むときの年齢によって借入期間や借入可能な金額が変わります。

住宅ローンの年齢制限の内容と審査基準、借入金額を解説します。40代や50代で住宅ローンを組むために、年齢による制限や条件をしっかり把握しましょう。

住宅ローンの年齢制限の内容は?

住宅ローンには、借入時と完済時にそれぞれ年齢制限があります。借入時の年齢を65~70歳未満、完済時の年齢を80歳未満に制限している金融機関が多いです。金融機関によって異なるため、利用したい金融機関の要件をしっかりと確認しましょう。

40代や50代の場合、借入時の年齢制限は要件を満たしていますが、完済時の年齢に注意しましょう。完済時の年齢の数え方は、完済時の年齢制限が80歳未満なら、ローンの最後の返済がある月に79歳でなければなりません。80歳の誕生日が来る前に、ローンを完済できるように返済期間を決める必要があります。

住宅ローンの借入期間は?

住宅ローンの借入が可能な期間は、多くの金融機関で最長35年となっています。フラット35では、最短の借入期間も規定があり15年です。借入期間は借入可能期間内を1年単位で自由に設定できます。

返済期間が長いと毎月の返済額を減らせるため、若い年齢では最長の35年にするケースが多く見られます。しかし、50代が借入期間を35年にすると完済時の年齢が80歳を超えてしまうため、借入期間を短くしなければなりません。

たとえば、54歳で住宅ローンを組む場合、完済時の年齢制限が80歳未満だとすると、返済期間を最長25年にすれば完済時に79歳となり、要件を満たせます。

住宅ローンの借入金額

住宅ローンの借入可能額を決める基準は、収入に対してローン返済額が占める割合です。借入期間が長くなれば毎月の返済額を減らせるため、借入額を増やせます。

40代や50代は、借入期間が短くなってしまうため、毎月の返済額が高くなってしまい、結果として借入可能額が少なくなります。そのため、40代や50代が住宅を購入する場合は、購入価格の高くない物件を選ぶか、自己資金を増やすなどの対処が必要です。

住宅ローンの審査基準

金融機関が住宅ローンの審査を行う際の審査基準では、年収や勤続年数より健康状態や年齢を重視する傾向があります。国土交通省が行った「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、98.9%の金融機関が完済時の年齢を重視すると回答しています。

融資を行う際に考慮する項目

完済時年齢98.9%
健康状態98.5%
担保評価97.6%
借入時年齢97.1%
年収95.0%
返済負担率94.6%
勤続年数94.5%
連帯保証94.5%
金融機関の営業エリア92.2%
国土交通省|令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書

住宅ローンを組む際には、年齢が審査の対象になる可能性があります。年齢が上がると、定年などにより収入が減るのに、ローン返済額が高くなるためです。

自己資金を増やすなど借入金額をできる限り減らしたり、定年後も問題なくローンを返済できるだけの収入があることを証明したりすることにより、年齢が上がっても住宅ローンの審査に通りやすくなる可能性はあります。

ただし、ローン審査は総合的な判断で行われるため、年収に対する返済比率が低くても必ず審査に通るわけではありません。反対に、年齢が高いから審査に通らないというものでもありません。

住宅ローン以外に借入がある場合は審査前に完済するなど、対応しておくべきことに対応したら、現状の資産状況を誠実に説明して審査を受けましょう。

住み替えで住宅ローンを組むときの注意点

住み替えで住宅ローンを組む際には、新規の借入とは違った注意点があります。

主な注意点は以下のとおりです。

  • 住み替えローンは利率が高くなる
  • 住宅の購入以外の費用に注意する
  • 現実的な返済期間を設定する
  • 現実的な返済額を設定する
  • 手元に資金を残す
  • 団信の加入が必要

住み替えを成功させるために、注意点をしっかりと理解しましょう。

住み替えローンは利率が高くなる

住み替えローンとは、いま借りている住宅ローンの残債金額と新規の借入金額の合計額を借りるローンのことです。自宅の売却代金がいま借りている住宅ローンの残債額より下回る場合に利用します。

住み替えローンは借入金額が多額になるため、金利が通常の住宅ローンより高くなります。結果として、毎月の返済額が高くなることがあるため、しっかりと返済計画を立てることが大切です。

住宅の購入以外の費用に注意する

自宅の売却と住み替え先の購入には、代金以外に諸費用がかかります。仲介手数料や登記費用、ローンの保証料や手数料、税金、引っ越し費用などです。

諸費用は合計するとまとまった金額になる可能性があるため、住宅の購入資金以外に諸費用の資金を用意しておく必要があります。

住宅ローンの借入金額に諸費用も含めて借りられる場合もあるため、金融機関に確認しておくとよいでしょう。

現実的な返済期間を設定する

住宅ローンは80歳未満までに完済することになっていますが、現実的には80歳までローンを返済するのは困難です。定年を迎えたら再就職の給料や年金が生活資金となり、年収が減ってしまうからです。少なくなった収入から生活費とローンの返済を支払うのは、大きな負担になるでしょう。

老後に収入がどれくらいあるのかを想定して、現実的な返済期間を設定する必要があります。

一方で、返済期間を短くすると毎月の返済額が高くなってしまうため、借入時に長めの借入期間に設定して、まとまった資金が準備できたら繰り上げ返済をする方法もあります。ただし、自己資金を使って繰り上げ返済すると、老後資金に不足するおそれもあるため、きちんとシミュレーションをして判断しましょう。

現実的な返済額を設定する

住宅ローンの借入可能な金額は年収と借入期間から算出するため、実際に支払える金額とは異なります。そのため、借入可能金額の上限まで借入てしまうと、現実的に返済できる金額を超えてしまうケースがよく見られます。

住宅ローンの借入金額は、現実的に返済できる金額で決めましょう。借入可能額が高くても、たくさん借りてしまうと返済が困難になり、経済的に破綻するおそれがあります。老後資金をしっかり判断して、無理のない資金計画を立てることが重要です。

手元に資金を残す

住み替え先を購入する自己資金に手元の資金や退職金をあてる場合、資金をすべて使わないようにしましょう。老後の収入減少や急な入院など、突然の出費に備えるためです。定年になると年収が減るため、生活費と住宅ローンを返済しながら貯金を増やすのは困難です。

手元にある資金はできる限り使わず、残しておくことをおすすめします。

団信の加入が必要

住宅ローンを借りるには、団体信用生命保険への加入が必要です。団体信用生命保険とは、住宅ローンの借入中に病気などで本人が亡くなった場合、住宅ローンの残債をすべて保証してくれる保険のことです。団信に加入していれば、自分が亡くなったあとに家族がローンの返済義務を負う心配がありません。

40代や50代になると、病気になったり持病があったりして、団体信用生命保険の加入ができないケースがあります。加入できないと住宅ローンは借りられないため、住み替えを考え直さなければなりません。

フラット35など団信加入が義務ではない住宅ローンもありますが、万が一のときに残された家族に負担がかかってしまうため、団信に加入しない判断は慎重に行う必要があります。

自宅売却から住み替えの流れ

自宅を売却してから住み替えるまで、おおまかな流れは以下のとおりです。

  1. 自宅の査定をする
  2. 不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を始める
  3. 並行して住み替え物件を探す
  4. 住宅ローンの事前審査を行う
  5. 自宅売却と住み替え物件購入の契約・決済・引渡し

自宅を売却して住み替える流れをご紹介します。住み替えの流れを把握できれば、住み替えに必要なことがイメージできるでしょう。

1.自宅の査定をする

いま住んでいる自宅がいくらで売れるのか、不動産会社に査定を依頼します。住み替えにあてられる資金の目安をつけるためにも、査定価格は早めに把握しておきましょう。査定価格の比較は仲介を依頼する不動産会社を選ぶ基準のひとつになるため、複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。

2.不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を始める

査定価格をもとに売り出し価格を決めたら、不動産会社と売買契約を締結して売却活動を始めます。売却までの期間は想定が難しいため、なかなか売れない場合があることを考えて早めに売却活動を始めましょう。

3.並行して住み替え物件を探す

売却活動と並行して、住み替える物件を探します。購入の手続きは、売却の仲介を依頼した不動産会社に依頼しましょう。ひとつの不動産会社に売却と購入を依頼したほうが、住宅ローンを含めた資金契約や住み替えのスケジュールを管理しやすくなります。

4.住宅ローンの事前審査を行う

住宅ローンをいくら借りられるか確認するために、金融機関に事前審査を提出しましょう。おおよその借入金額がわかれば、住み替え物件の価格の目安がわかり、物件を探しやすくなります。

5.自宅売却と住み替え物件購入の契約・決済・引渡し

自宅の売却が決まり、気に入った購入物件が見つかったら、それぞれの売買契約を結び、決済・引渡しへと進みます。

自宅の売却代金をいま借りている住宅ローンの完済や住み替え物件の自己資金にあてたり、住み替え物件を購入するために新しく住宅ローンを借りたりすると、売却や購入の契約・決済・引渡しのスケジュールが複雑になります。どのような流れで進めるとよいのか、不動産会社と相談しながら決めましょう。

仮住まいが必要になる場合やダブルローンになる場合は、資金計画を見直さなければならないケースもあります。資金の流れとスケジュールをしっかりと照らし合わせて、間違いのないように進めなければなりません。

住み替えを成功させるポイント

40代・50代の住み替えを成功させるために、何に気をつければよいのでしょうか。40代・50代の住み替えを成功させるには、次のようなポイントがあります。

  • 売り先行で進める
  • 自宅をできるだけ高く売却する
  • 収入と支出のバランスを考える
  • 信頼できる不動産会社を見つける
  • 家族と相談してライフプランを立てる

それぞれのポイントを詳しく解説します。

売り先行で進める

住み替えは、自宅の売却を先行して進めるのがおすすめです。自宅の売却が決まれば、いま借りている住宅ローンの返済や住み替え先の購入にあてる自己資金など、金額の目安がついて、資金計画を立てやすくなります。

売却代金と住宅ローンの事前審査の結果を踏まえて、住み替えの自己資金をいくらにするのかを決めましょう。

自宅をできるだけ高く売却する

住み替えの場合、自宅の売却代金をいま借りている住宅ローンの残債の支払いにあてたり、住み替え先の購入時に支払う自己資金にあてたりします。

仮に売却代金が住宅ローンの残債や購入の自己資金の予定額より下回った場合、手元の資金を自己資金や残債の支払いにあてなければなりません。手元の資金を減らしてしまうと、老後資金に不安が残ります。

そのため、自宅はできる限り高額で売却しましょう。売却代金で住み替えに必要な資金をすべてまかなえれば、手元の資金を残しておけます。

収入と支出のバランスを考える

住み替え後の住宅ローンの返済は、定年後の再就職の給料や年金から支払うケースが多いです。年収が減ってしまうため、住宅ローンを多く借りてしまうと返済が困難になったり生活資金が足りなくなってしまったりします。

定年後に年収が下がることも考慮したうえで、収入と支出のバランスを考えて、資金計画を立てましょう。無理のない返済計画が、住み替えを成功させるポイントです。

信頼できる不動産会社を見つける

住み替えは資金計画やスケジュールが複雑です。スムーズに進めるために、信頼できる不動産会社を見つけましょう。

自分の希望に添った売却や購入を提案してくれたり、売買の取引や住宅ローンの借入などにアドバイスしてくれたり、専門的な知識と経験がある不動産会社に依頼できれば安心して住み替えを進められるでしょう。

家族と相談してライフプランを立てる

実家の売却に子どもが反対した、子どもが実家をリフォームして2世帯住宅にしようとしていたなど、自宅の住み替えは親夫婦だけでは決められない場合があります。

売却が決まってから子どもと揉めないように、あらかじめ老後のライフプランについて子どもと話し合っておくことが大切です。