住み替える理由は離婚が多い?『3組に1組』の真相と財産分与の問題

巷では「3組に1組」が離婚しているとよくいわれており、聞いたことがある人も少なくないでしょう。その中で、

「実際に3組に1組が離婚しているの?」

「そんなに多いってことは住み替えの理由でも離婚は多い?」

と気になっている方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事では「住み替えの理由ベスト5」「住み替え理由に離婚は多いのか」という点を解説したうえで、実際に離婚することになった場合にトラブルとなりやすい財産分与の問題を整理していきます。

離婚時は財産分与が大きな問題となるため、トラブルなく手続きを進めるには「住んでいる家(不動産)はどうなるのか」理解を深めておくことが大切です。

夫婦の離婚に伴って今後の財産分与に関してお悩みの人は、ぜひ参考にしてください。

『3組に1組』は実際に離婚した世帯の割合ではない

離婚する夫婦の割合は「3組に1組」といわれますが、実際のところ「3組に1組」という割合は「離婚した世帯」の割合ではありません。

厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計」によれば、2022年における婚姻件数は504,930件ですが、対して同年の離婚件数は179,099件になります。

両者の数字を見れば、確かに婚姻件数に対する離婚件数はおおよそ3分の1になることがわかります。

しかし、重要なのは504,930組の夫婦が同年に離婚し、離婚件数=179,099組となっている訳ではないことです。

2022年に離婚に至った179,099組の夫婦は、2021年結婚の夫婦かもしれませんし、90年代に結婚し熟年離婚した夫婦かもしれません。

「3組に1組」という数字は、単に同じ年の結婚件数と離婚件数を参照し算出したもので、実際に離婚に至る割合とは異なるため注意しましょう。

ここで疑問として浮かび上がってくるのは、「住み替え理由として離婚は本当に多いのか」という点です。

続いて、よく見られる住み替えの理由を整理していきます。

離婚理由の住み替えは多い?住み替え理由ベスト5

結論からいうと、離婚による住み替えは意外に少ないのが実情です。

国土交通省が実施した調査をもとに「住み替え理由ベスト5」を作成すると、以下のとおりになります。

通勤・通学35.1%
広さ・部屋数21.4%
独立18.2%
新しさ・きれいさ16.2%
結婚14.1%

参照:国土交通省『平成30年住生活総合調査(確報)』

離婚による住み替えはベスト5にはランクインしていないことがわかるでしょう。しかし、3番目の『独立』は離婚による独立も含んでいるため、離婚での住み替えは決して少ないとも言い切れません。

この章では、どのような理由で住み替えをする人が多いのか、トップ5についてくわしく解説していきます。

【1位】通勤・通学:35.1%

住み替えの理由として最も多く見られたのは「通勤・通学」です。

学校に進学したり就職したりすれば、日々の動線が変わるため、より交通利便性の良い場所に住み替えたいと考えるのは自然なことです。

そのため、実際に引越しは年度末に集中する傾向にあり、1月~3月付近は不動産会社・引越し業者にとって繫忙期になります。

ほかには人事異動に伴って住み替えするケースも多いため、一般的に異動の多い10月前後なども、住み替え・引越しは集中しやすいでしょう。

【2位】広さ・部屋数:21.4%

広さや部屋数を理由に、住み替えを検討するケースも少なくありません。

家族構成やライフスタイルの変化によって住みにくさを感じるとき、多くの場合は、広さや部屋数がネックになっていることが多いです。

たとえば、夫婦二人暮らしから子どもが生まれれば、子どものために部屋を用意したい・もう少し広い家に住みたいと考えるでしょう。

同居する人が一人増えるだけでも、普段生活するスペースや収納スペースなどは圧迫され、住みにくさによるストレスを感じてしまいます。

反対に、子どもが独立したことでスペースに余分が生まれ、広すぎない・部屋数の多すぎない家に住み替える場合もあるでしょう。

また、近年はリモートワークの機会が増えたことによるライフスタイルの変化も、住み替えに影響しています。自宅で仕事をする機会が多くなれば、仕事用の部屋を作りたいと考えるケースも少なくありません。

【3位】独立:18.2%

住み替えには、独立が関係しているケースもあります。

ここでいう「独立」とは単身赴任や離婚なども指すため、今回、解説していく離婚による住み替えは、離婚以外の理由も含め18%程度の割合と考えられます。

転勤に伴って遠くの地域で生活する必要が出たときは、さまざまな事情から家族を連れていけない場合、単身赴任を選択することになります。

離婚の場合は、今までと同じように二人で住むわけにはいかなくなるため、どちらかが新居に住み替えるか、それぞれが住み替えを検討する必要があるでしょう。

ほかには、同棲カップルが別れに伴ってそれぞれ住み替えするケース、割合は少ないですがルームシェアの解消に伴って住み替えするケースなども挙げられます。

【4位】新しさ・きれいさ:16.2%

新しい家、今よりもきれいな家を求め、住み替えを考える人も多いでしょう。毎日を過ごす住まいは、少しでも快適であってほしいものです。

そのため現在の住まいよりも新しくきれいな家が見つかった場合や、費用やスケジュール的に引越しのめどが立った場合は住み替えを検討する人は多いでしょう。

特に今の家の住みやすさに対して、何らかの悩みや不満を持っている場合は、なおさら新しさやきれいさを求めるものです。

  • 築年数が古いため、窓やドアの建付けが悪い
  • 水回りの設備が古く、水の出にくさを感じる
  • すきま風が入ってくるせいで、エアコンが効きにくい

上記のような不満があれば、住み替えの理由として、新しさ・きれいさは大きな理由になります。

【5位】結婚:14.1%

結婚に伴い住み替えを検討するケースも、一定の割合が見られます。

結婚すれば多くの夫婦が同じ家に住むため、それまで別々の家に住んでいた場合は、二人で住める家を新しく購入したり借りたりするものです。

片方の家にもう片方が住むパターンも見られますが、そのタイミングで新居を構えたいという人も多いでしょう。

新しい家に住み替えれば、結婚を機にそれぞれの職場に対してアクセスの良い場所に住める場合もあります。

新婚の段階から子どもを設けることに前向きな夫婦であれば、家族が増えることを最初から想定し、住む家の広さ・間取りを考えるケースも少なくありません。

離婚時に必要な不動産の財産分与

離婚の際は、それぞれ新居に住み替えたり片方が家を出たりする必要が出てきます。しかし、その際に財産分与をどうするかが大きな問題になります。

「離婚したらローンの残っているマイホームはどうなるの?」

「離婚を機にマイホームを売却する場合はどうすれば良いの?」

離婚することになり、財産分与について上記のように悩んでいる人は多いでしょう。ここからは、財産分与の概要について解説したうえで、ケース別に対処法を解説していきます。

①財産分与=2人で築いた財産を貢献度に応じて分ける

財産分与は、共同生活において夫婦が共に形成した財産を分けることです。

離婚するときは単純に離婚届にサインすれば良いのみではなく、済ませなければならない手続きがいくつも出てきます。

そのうちの一つが財産分与で、分け方は貢献度をもとに公平に分けることが特徴です。財産分与で適切に分けなければならない財産は、たとえば下記が挙げられます。

  • 金融財産(預貯金・株式など)
  • 貴金属
  • 不動産(建物・土地など)

財産分与の分け方は公平でなければなりませんが、原則として決定は当事者同士の協議によって下されます。

しかし、離婚の場合は意見が衝突して協議が進まなかったり、そもそも接触できなかったりするケースも少なくありません。

そのため協議がうまくまとまらない場合は、家庭裁判所を通じて離婚調停・離婚裁判を行うこととなります。なお、財産分与は公平性を考慮し、一般的には「折半」でまとまることが多い傾向です。

ただし、あくまで協議によって決まること、貢献度に基づく判断であるため必ずしも折半になるとは限らないことなどは事前に理解しておきましょう。

②財産分与する際の不動産の評価

財産分与にあたって家や土地などの不動産を分ける際は、不動産の評価について衝突するケースが見られます。

まず、不動産には以下のように複数の評価額があることを認識しておきましょう。

  • 公示地価
  • 基準地価
  • 固定資産税評価額
  • 路線価
  • 時価

一般的に不動産の評価は、時価によって決められます。時価とは、不動産市場における流通金額を指すため「不動産査定を受けた際に提示される金額」ととらえておけば問題ありません。

簡単に流れを整理すると、離婚に伴う財産分与でマイホームを分ける場合、まずは協議と不動産査定によって家を評価していきます。

その後、最終的に売れた金額を協議の決定に従って分けていきます。

③離婚後も共有するのはリスクが伴う

「家を売りたくない」「なかなか売れない」などの事情から、離婚後も家や土地などの不動産を共有するケースもありますが、リスクが多いためあまりおすすめできません。

主なリスクは、以下が挙げられます。

  • 不動産の手続きには双方の合意が必要な場合が多い
  • 税金やローンの支払いでトラブルになりやすい
  • 相続でトラブルになることが多い

たとえば、家をいざ売却するとなれば、共同名義の場合はお互いの合意が必要になります。この時、元配偶者と連絡が取りにくい状態になっていると、合意が確認できないせいで手続きが進まない可能性があるでしょう

ほかにも、税金やローンの支払いでトラブルになるケースがありますが、どちらかにすでに新しい配偶者がいる場合は、問題がより一層複雑化します。

後々の相続でもめる可能性も高いため、離婚後も共同名義として家を持つ場合は、リスク・デメリットも含め慎重に検討してください。

④売却するには抵当権抹消が必要

離婚による住み替えで家を売却する場合は、まず、抵当権の抹消を済ませておく必要があります。

抵当権とは、ローンを組む際に土地・建物に対して金融機関が設定する権利ですが、抵当権が残ったままだと売却にあたってはリスクが生じます。

抵当権が行使されるタイミングは、住宅ローン残債が、何らかの事情により支払われなくなったときです。

金融機関は無担保でお金を貸すのではなく、土地・建物に対して抵当権を設定することで、いざというときに差し押さえなどの回収処分ができるように抵当権を設定します。

したがって、万が一ローン返済が滞れば、抵当権に基づいて差し押さえが行われるため、最終的に家は現金化され処分されてしまいます。

このような抵当権を残したまま家を売却しようとすると「万が一のときに家を担保として処分できる権利」を債権者に残したまま売却することになるため、基本的に買い手はつきません。

そのため『ローンを完済⇒ 抵当権抹消』の段階を踏まなければ、家の売却はできないことを覚えておきましょう。

⑤売却時にアンダーローンだった場合

アンダーローンは、売却金でローン残債を完済できる状態を指します。売却の際に「住宅ローンの残債をどうすれば…」と悩むことはないでしょう。

ただし、以下のような状況下では、反対にオーバーローンになってしまう場合があるため注意が必要です。

  • 買って数年のうちに売却しないといけなくなった
  • 何らかの情勢の影響を受け、相場が一気に下振れた

オーバーローンの場合、詳細は後述しますが、資金が足りないせいで結果として家が売れない状態に陥ることがあります。

⑥売却時にオーバーローンだった場合

オーバーローンはアンダーローンの反対で、売却金でローンを完済できない状態のことを指します。

オーバーローンは、下記のような状態で起こることが多いでしょう。

  • ほとんど購入価格を同等の金額でローンを組んだうえで、短期間で売却するに至った
  • 何らかの情勢の影響を受け、売却相場が大幅に下落した
  • 元利均等返済でローンを返済していた

元利均等返済とは毎月一定額を支払う返済方式ですが、返済金額の多くは金利部分にあたるため、元本がなかなか減らないことが特徴です。

また、短い期間で売却すれば、特に元利均等返済の場合は利息ばかりが支払われているせいで元本があまり減っておらず、オーバーローンになりやすい傾向があります。

オーバーローンの際は、返済のために自己資金を用意する必要がありますが、住み替えの際は何かと入用のため資金が不足することは珍しくないでしょう。

しかし、自己資金に不足があると、ローンが完済できないせいで抵当権が残ってしまい、家が売れない状態が続いてしまいます。

⑦離婚後もそのまま住み続ける方法

人によっては、離婚後も住み替えせず、そのまま住み続けたいと考えるケースもあります。考えられるのは、下記4つのパターンです。

  • 夫所有のまま、夫が住み続ける
  • 夫所有のまま、妻が住み続ける
  • 夫から妻へ名義変更し、妻が住み続ける
  • 不動産会社に売却し借りて住む(リースバック)

それぞれどのような手続きになるのか、注意点として何が挙げられるのか整理していきましょう。

⑦-1. 夫所有のまま、夫が住み続ける

まずは、夫所有の家から妻が出ていき、夫がそのまま住み続けるパターンです。ここでは、債務者が夫だけであった場合に関して解説していきます。

所有者が所有する家にそのまま居住するため、基本的に見た目の状況はあまり変わりません。

しかし、離婚にあたって財産分与する場合、夫婦二人で形成した財産として、家は財産分与の対象になるため分け方の協議で揉めることが考えられます。

妻は出ていくにあたって、家の相場の半額を現金でほしいと要求することが多いでしょう。しかし、現実問題として、相場の半額を現金で用意することは難しく、話の折り合いはなかなかつかないケースが多いです。

また、妻が出ていき夫がそのまま住む場合でも、連帯保証人の立場から外れることはなかなかできないため注意が必要です。

離婚すれば確かに赤の他人になりますが、だからといって連帯保証人の変更は、簡単には受け付けてもらえないのが難点です。

夫がもともとの家に住み続けたいと言及している場合は、上記の問題について、しっかりと協議する必要があります。

⑦-2. 夫所有のまま、妻が住み続ける

次に、夫所有の家に妻が住むパターンです。ここでも、債務者が夫だけであった場合に関して解説していきます。

この場合、夫は自己所有のまま家を出ていき、ローン残債の支払いのみを続けるかたちになります。子どもの生活環境を優先した場合、このようなケースになることも少なくありません。

しかし、元配偶者が所有する家に住み続けることは、多くのリスク・問題点が伴います。

  • 夫がローンを返済しなくなる場合がある
  • ローン契約の違反にあたる場合がある

元配偶者で、一度はローン支払いを続けていくことに納得したとはいえ、その後、状況が変われば返済が滞る可能性は十分にあり得ます。

離婚後ということもあり連絡をまともに取っていなければ、返済遅延に妻が気づけるタイミングも遅くなる場合があるでしょう。

さらに、住宅ローンを組む際は債務者自身が居住することが条件として設定されるため、債務者である夫が出ていくことは契約違反に該当します。

事情説明や承諾なしで「夫所有のまま妻が住む」状態を続けると、最悪の場合、ローン解約の通知を受け一括返済を迫られる可能性があります。

⑦-3. 夫から妻へ名義変更し、妻が住み続ける

夫から妻に名義を変え、妻が住み続ける場合について解説します。離婚に伴って妻が債務者になり、ローンは妻が返していくというケースです。

しかし、実際は住宅ローンの名義変更は、簡単にできるわけではありません。特に新しい債務者となる妻が専業主婦だったり、パートタイマーなどで収入が低かったりすると、返済能力の面でローンを組むことは現実的ではなくなってしまいます。

共働きで夫と同等の返済能力があれば、名義変更は可能なこともありますが、実際のところ名義変更して妻が住み続けるパターンはめずらしいでしょう。

住宅ローンは本人が当該物件に住むことが大前提となるため、もちろん、親兄弟に代わりにローンを組んでもらうこともできません。

⑦-4.【リースバック】不動産会社に売却し借りて住む

最後の方法として、リースバックが挙げられます。リースバックは、家を不動産会社に売却したうえで、不動産会社所有の家に借りて住む方法です。

ローン完済の課題を解決できれば、リースバックの場合は、そのまま環境を変化させることなく住み続けられます。

家の所有者は夫・妻どちらでもなく、不動産会社になるため、今度は毎月の家賃を支払っていくことになります。リースバックは賃貸のため、以下のような賃貸ならではのメリットがあることも特徴的でしょう。

  • 自分で家を修繕する必要がない
  • 固定資産税の負担がなくなる

ただし、リースバックは不動産会社が買い取る形式になるため、相場より売値は安くなることは理解しておかなくてはなりません。

物件の特徴や時期によっては、相場を大きく下回る金額になるケースも決して珍しくありません。そのため、家賃の高さや借りられる期間の短さが、デメリットになります。

なお、リースバックで売却した家は、のちに買い戻せることもあります。しかしながら、相場より高値での買い戻しになることもあるため、慎重な検討が必要といえるでしょう。

内部リンク:『住み替えでリースバックを利用するメリットとは!?その仕組みと注意点を解説』

まとめ:渋谷区・港区・目黒区内でお困りの方はお早めにご相談ください

夫婦の3組に1組が離婚するといわれる時代ですが、厳密にいうと3組に1組の割合で夫婦が離婚に至っているわけではなく、住み替え理由も離婚ばかりが多くを占めるわけではありません。

なお、離婚の際は財産分与の問題と向き合わなければならないため、どのような選択肢があるのか事前によく知っておくことが重要です。

「財産分与とは?」「残っている住宅ローンはどうなる?」などのポイントを理解したうえで、住み替えに伴うさまざまな論点を解決しながら進めていきましょう。

渋谷区・港区・目黒区における住み替えでお困りの際は、東京都内で取引が経験豊富な、弊社『一心エステート株式会社』までご相談ください。