持ち家がある場合、老後の生活もそのまま住み続ければよいのですから、安泰のように思えます。しかし、若いころに建てた家は、いまの身体に合っているとは限りません。また、子どもたちが独立して、空き部屋もあるような状態は、維持するのも大変です。
そういった家の管理から解放される方法として、賃貸住宅への住み替えがあります。しかし、家賃の支払いが生じるなど、さまざまなデメリットが考えられます。
老後の住み替えについて、どういったメリット、デメリットがあるのか、実際に住み替えるときに役立つ情報を紹介します。
目次
老後の住まいはどうする?賃貸と持ち家
老後の住まいを賃貸住宅にするべきか、持ち家のままでいるべきか悩む方もいるでしょう。しかし、いずれも一長一短があり、一概にどちらがよいといい切ることはできません。
老後の住まいを選ぶときは、住まいのかたちにこだわることなく、多角的な視点を持って決めることが大切です。いま一度、理想とする老後生活から住まいを考えてみましょう。
老後の住まい選びの重要性
快適な老後生活を送るには、住まい選びがカギを握っているといっても過言ではありません。現役時代と比べてライフスタイルが大きく変わる老後では、今後の生活に適した住まいを選ぶことが重要となります。
たとえば、定年退職後は年金が主な収入源となり収入の先細りが見込まれます。また年齢を重ねれば体力が衰え、身体面に不調をきたすこともあるでしょう。経済面や身体面を考慮するなら、維持費のかからない賃貸住宅へ住み替えるのもひとつの手です。
老後も持ち家に暮らすメリット、デメリット
老後も持ち家に住み続けるメリット、デメリットを紹介します。持ち家で暮らすのは安心感がある一方、老後生活では難点に思うところもあります。
メリット
老後も持ち家で暮らすメリットは次の3つです。
- 資産になる
- ローン完済後は住居費の負担が減る
- 慣れ親しんだ地域で生活できる
持ち家で暮らす最大の魅力は、自分の資産になることです。老後生活で収入が減少しても住むところに困ることなく住居を確保できます。
さらに、住宅ローン完済後は住居費の負担が減る点もメリットです。若いときに住宅ローンを組んでいれば、定年退職後ローンを完済できる人もいるでしょう。月々の支出が減れば一気に楽になります。
また、慣れ親しんだ土地で老後生活を送れることも、魅力のひとつです。新しい環境にストレスを感じることなく、これまで通りの暮らしを続けられます。
デメリット
持ち家で生活するデメリットも見ていきましょう。主なデメリットは次のとおりです。
- 維持費がかかる
- 間取りや設備に不便さを感じる
- 家の処分に手間がかかる
老後も持ち家で暮らし続けるには、税金の支払いや修繕費などの維持費が発生します。収入の減少が見込まれる老後生活において、まとまったお金を支払うリスクを抱えなければならないことは難点です。
また、これまでとライフスタイルが変わる老後生活では、現状の間取りや設備に不便さを感じることもあります。部屋を持て余してしまう、階段の上り下りがつらくなるのはよくある悩みです。
そして、持ち家は簡単に処分できないことから、気軽に引っ越せません。家に不都合を感じればリフォームすることになり、その分の費用もかかります。
老後に賃貸住宅へ住み替えるメリット、デメリット
続いて、老後に持ち家から賃貸住宅へ住み替えるメリットとデメリットを紹介します。
メリット
賃貸住宅に住み替えるメリットは、次の3つです。
- 急な出費の心配がない
- 老後に適した間取りで暮らせる
- 防犯性が向上する
賃貸住宅は、持ち家に比べて突発的な出費が少ないことが魅力です。室内外の設備が破損した際、持ち家なら自分で修理しなければなりませんが、賃貸住宅なら大家さんもしくは管理会社が対応してくれます。
さらに、老後生活に合った間取りを選べる点もメリットです。賃貸住宅のなかには高齢者向けの住まいもあるため、今後の生活に合った間取りや設備の住まいで快適な暮らしを実現しやすくなります。
また、持ち家より防犯性が高まることも魅力的です。賃貸にはオートロックや防犯カメラ、テレビモニター付ききインターホンなどが設置された防犯性の高い住宅もあり、安心して老後生活を送れます。
デメリット
よいことばかりに見える賃貸住宅にも、いくつかデメリットがあります。主なデメリットは、次の3つです。
- 家賃がかかる
- 好きにリフォームできない
- 必ず契約できるとは限らない
持ち家から賃貸住宅へ住み替えた場合、今後はずっと家賃を支払わなければなりません。収入が先細りするなか、毎月一定金額の住居費がかかることは欠点といえます。
そして、自由にリフォームできない点も、デメリットのひとつです。持ち家なら好き勝手にリフォームできますが、賃貸住宅は大家さんからの借り物であるため、入居者の都合で手を加えることはできません。
また、物件によっては高齢者の契約を断られることもあります。支払い能力や体調面を理由に契約、または更新を断られるケースは少なくありません。賃貸に住み替える際は、担当者に契約のみならず更新のことも聞いておくと安心です。
老後の賃貸住宅を選ぶポイント
老後に賃貸住宅に住み替えるなら、どのようなことに気をつけて住まいを選べばよいのでしょうか。老後の住まいとして、賃貸住宅を選ぶ5つのポイントを紹介します。
買い物に困らないこと
徒歩圏内にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの生活利便施設があり、買い物に困らない環境であることです。日々の買い物がままならなければ、快適な老後生活とはほど遠くなります。
そのほか、医薬品や衛生用品を購入できるドラッグストアもあると便利です。
医療機関や介護施設が近いこと
近隣に医療機関や介護施設があることも、重要なポイントです。いまは元気であっても将来、何が起こるかわかりません。万一のときに備えて、病院や介護施設がそばにある立地を選びましょう。
交通の便がよいこと
特に駅から近い物件やバス停がそばにある物件など、公共交通機関の利用に不便のない立地をおすすめします。高齢者は移動による負担が大きくなるため、駅から数キロ離れているような物件は避けましょう。
無理なく支払える家賃であること
今後も無理なく支払える家賃の住宅を借りることも大切です。年金受給額の範囲内で支払える家賃の住まいを選ぶことで、住居費に家計を圧迫される心配がなくなります。
セキュリティー対策が講じられていること
セキュリティー対策がきちんと講じられている物件を探すことです。高齢者を狙った空き巣や強盗が多いことから、セキュリティー面は重要視しなければなりません。
また、オートロックや防犯カメラの設置があることはもちろん、管理人が常駐している物件を選ぶのもひとつの方法です。人の気配を感じる物件は、空き巣や強盗の被害に遭いにくいでしょう。
老後に賃貸住宅で暮らすときの注意点
最後に、老後に賃貸住宅で暮らす際に、気をつけるべき点を紹介します。以下の注意点を把握して、安心安全に実りある老後を過ごしましょう。
住宅ローンを完済する必要がある
持ち家を売却するなら、住宅ローンを完済しなければなりません。ローンを組んで購入した住まいには抵当権がついており、抹消手続きしなければ売却しにくくなります。
住宅ローンが残っている物件でも売却できないわけではありませんが、売却で得たお金で残債を一括返済する必要があります。
持ち家の売却と並行して賃貸住宅を選ぶ
持ち家の売却を決めたら、売却と同時に住み替え先となる賃貸住宅を探しましょう。高齢者の契約を断る物件もあるため、売却後の住まいがなくならないよう早い段階から探し始めます。
しかし、不動産会社に売却の相談をする前に、賃貸住宅を決めるのはおすすめしません。持ち家の売却の目処が立っていないうちに賃貸住宅を契約してしまうと、住まいがふたつになり、それだけ出費もかさみます。
信頼できる不動産会社を見つける
信頼できる不動産会社を見つけることも、大切なポイントです。担当者とのやり取りのなかで、少しでも不審に思う点があれば契約してはいけません。思い通りの不動産売買、賃貸を実現するには不動産会社選びにかかっています。
また、持ち家から賃貸に住み替えるなら、売買と賃貸の両方を営んでいる会社を選ぶのもひとつの手です。どちらも営んでいれば会社を変えることなく、持ち家の売却から住み替え先の賃貸住宅選びまでトータルでサポートしてもらえます。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。