住み替えでも住宅ローン控除は利用できる?特例との併用は可能?

所得税を控除できる住宅ローン控除は、マイホームを購入したときの強い味方です。なかには所得税の支払いがほとんどないという人もいるでしょう。しかし、住み替えて新しく組んだ住宅ローンでも、住宅ローン控除を受けられるのでしょうか。

住み替えたときの住宅ローン控除と、そのほかの特例との併用について解説します。

住宅ローン控除を基本からおさらい

住宅を購入する際に自己資金ですべて支払うことはまれで、大抵は住宅ローンを利用して購入する方が多いでしょう。

住宅ローンを利用して住宅購入した場合は、ある一定の条件を満たしていると所得税額を控除する住宅ローン控除の対象になります。ここでは住宅ローン控除の概要と、利用できる条件について解説します。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、金融機関の住宅ローンを利用して住宅を購入したときに一定の要件を満たすと、住宅ローンの年末残高をもとに算出した金額を所得税額から控除する制度です。

住宅ローン控除は対象となる住宅に住みはじめた期間によって、適用される住宅ローン金額や住宅ローン控除額が異なります。各期間の住宅ローン控除期間や控除額は下記のとおりです。

住みはじめた日が含まれる年控除期間控除額
平成26年1月1日〜令和元年9月30日10年住宅ローン年末残高等×1%(上限40万円)
令和元年10月1日〜令和4年12月31日13年・1〜10年目住宅ローン年末残高等×1%(上限40万円)・11〜13年目住宅ローン年末残高等×1%(上限40万円)と建物購入価格×2%÷3のいずれか少ない方
令和5年1月1日〜令和5年12月31日13年住宅ローン年末残高等(上限3,000万円)×0.7%
令和6年1月1日〜令和7年12月31日10年住宅ローン年末残高等(上限2,000万円)×0.7%
参考:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

2024年1月以降に建築確認をとった場合は、省エネ基準に適合したものでなければ控除を受けられなくなります。

では、実際に住宅ローン控除を適用すると、どれくらいの所得税額が控除になるか試算してみましょう。

たとえば、住宅ローンの年末残高が3,000万円だった場合、控除率が0.7%だとすると21万円が所得税額から控除されます。令和5年12月31日に対象の住まいに住みはじめた場合、控除期間が13年なのでトータルで最大273万円が控除されます。令和6年1月以降になると、控除期間が10年に短縮してしまうため、最大210万円と60万円以上の差額が生じます。

住宅ローン控除を利用する条件

住宅ローン控除の利用にはさまざまな条件があり、主なものには下記のとおりです。

  • 住宅を新築した日から6カ月以内に居住している
  • 控除を受ける年の12月31日まで居住し続けている
  • 住宅の床面積が50㎡以上で、かつ床面積の2分の1以上を自身の居住に使っている
  • 控除を受ける年に合計所得額が3,000万円を超えない
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上ある
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていない

参考:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

これらの条件を満たしていると住宅ローン控除を利用できます。住み替えするときは、売却する住宅に適用する特例が関係するため注意が必要です。

住み替えでも住宅ローン控除は利用できる

住み替える前に住んでいた住宅で住宅ローンを利用していた場合、すでに住宅ローン控除を利用していた方も多いでしょう。住み替えで新たに住宅ローンの融資を受けても、住宅ローン控除を利用することは可能です。

ただし、いままで住んでいた住宅を売却するときに、特例を利用していると住宅ローン控除と併用できないことがあります。住み替えで住宅ローン控除を利用するときの注意点を、詳しく解説します。

住み替えでの住宅ローン控除の適用条件

住み替えで住宅ローン控除が適用される条件は、はじめて住宅を取得したときと同じです。ただし、住み替えの場合はこれまで住んでいた住宅を売却するため、そのときに適用した特例によっては住宅ローン控除との併用ができる場合と併用ができない場合があります。

売却時に適用できる特例は売却益が出るか、売却損が出るかで異なります。

住宅ローン控除と併用できない特例

住宅ローン控除と併用できない特例には、次のものがあります。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 住まいを売ったときの軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産の買換えの特例

これらの特例はいままで住んでいた住宅を売却した際に、売却益が出たときに適用になる特例です。それぞれの特例について、詳しく見ていきましょう。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

住まいを売却したときに、居住期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を控除する特例です。

この特例を受ける条件は、「自己が住んでいる住まいや敷地、借地権を売却すること」となっており、住まなくなってから3年を経過する日が属している12月31日までに売却しなくてはなりません。

ほかにも、売却した前年、前々年にこの特例または住まいの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと、売主と買主が夫婦や親子などの特定の関係ではないことなどの条件があります。

なお、別荘などの保養や趣味を目的とした家は該当になりません。

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

自分が住んでいた日本国内の住宅や敷地を売却したときに一定の条件を満たしていると、長期譲渡所得を通常より低い税率で計算できる特例です。

この特例の条件には、住宅を売却した年の1月1日に所有期間が10年を超えること、売却した前年または前々年に同特例を受けていないことがあります。

ちなみに、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例との併用は可能です。

特定の居住用財産の買換えの特例

令和5年12月31日までに自宅を売却して買い替えたときに、譲渡益に対する課税を買い替えた住宅を売却するときまで繰り延べられる特例です。

この特例を受ける条件として、自宅を住まなくなった日から3年を経過する日に属する12月31日までに売却しなくてはなりません。

そのほかにも、売却した前年または前々年に住まいを売却したことによる3,000万円の特別控除の特例やマイホームを売ったときの軽減税率の特例などの特例を受けていないこと、売却代金が1億円以下であることなどが条件になっています。

住宅ローン控除と併用できる特例

住宅ローン控除と併用できる特例として、マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例があります。

この特例は、自宅を令和5年12月31日までに売却して、新たな住宅へ住み替えたときに売却で損失が生じたら、その年の給与所得や事業所得などのほかの所得から損失を控除できます。損失を控除しきれなかった場合は、売却した翌年以降3年間損失を繰り越しての控除が可能です。

この特例は住宅ローン控除との併用が可能ですが、譲渡損失が優先的に控除されるため、所得がゼロになってしまった場合、住宅ローン控除の恩恵を受けられなくなります。

併用できない特例と住宅ローン控除、どっちがお得?

住宅ローン控除と併用できない特例と住宅ローン控除ではどちらが得かを考えるには、売却した自宅の売却額の影響を考慮する必要があります。

自宅が高値で売れて利益が出る場合は、併用できない特例を利用したほうがお得になる可能性が高いです。しかし、売却益が数百万円ほどであれば、住宅ローン控除を利用したほうがお得になるでしょう。

住み替えで住宅ローン控除を受ける方法

住宅ローン控除を受けるには、初年度は確定申告が必要です。住宅ローン控除を適用する住宅を購入した翌年の2月16日から3月15日のあいだに確定申告書に必要書類を添付して、住所地の所轄税務署に提出します。

2年目以降は(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書に住宅ローンの借入金年末残高証明書を添付して、年末調整のときに勤務先へ提出することで手続きが完了します。

住宅ローン控除の必要書類

住宅ローン控除の確定申告に必要な書類は下記のとおりです。

  • 確定申告書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの借入金年末残高証明書
  • 登記事項証明書
  • 家屋の工事請負契約書または売買契約書
  • 源泉徴収票
  • 住民票

2年目以降は年末調整で住宅ローン控除の手続きを行うため、確定申告は不要です。

住宅ローン控除の確定申告はスマートフォンでも手続き可能

住宅ローン控除の確定申告は、確定申告会場へ足を運ばなくてもスマートフォンで申告が可能です。必要書類のほかに、マイナンバーカードとマイナンバーカードの読み取り対応しているスマートフォンがあれば自宅からでも確定申告が行えるようになっています。

必要書類を見ながら、国税局の確定申告特集のWebページで住宅ローン控除入力メモを記入します。次に、確定申告書等作成コーナーへアクセスし、確定申告書を作成・送信すれば手続きは完了です。

詳しい手続き方法はYouTubeの国税庁動画チャンネルで紹介しています。