住み替えにおける資金計画を解説。どのような費用がかかるのかも紹介

これまで所有していた家を売却して、新しい家を購入して住み替える場合、資金計画が非常に重要です。想定していた金額で持ち家が売れるのか、希望通りの新居を購入できるのかなど、不安は尽きません。

理想の住み替えをするために、どのような資金計画を立てたらよいのか解説します。

住み替えには綿密な資金計画が必要

住み替えでは、新居の購入にかかる費用以外にも、いま住んでいる家の売却や住宅ローンの対応など、資金面を中心に、考えなければならない要素がたくさんあります。

また、最初に家を購入したときから、自分や家族の年齢も高くなり、ライフステージも変わって、今後必要な生活資金にも変化が生じているはずです。そのため、住み替えの資金計画を綿密に立てないと、住宅ローンの負担が重くなりすぎて、今後の生活に支障が出てしまいます。

住宅ローンの残債、家の売却価格を調べる

住み替えの資金計画を立てるうえで、最初にやらなければならないのは、いま住んでいる家を売却したときの収支を確認することです。

具体的には次のふたつの作業が必要になります。

  • 住宅ローンがどれぐらい残っているか確認する
  • 家の売却価格を調べる

住宅ローンの残高は簡単にわかります。金融機関が作成した「返済予定表」が、住宅ローン契約時に郵送されていますので、手元にあればすぐに確認できます。

ほかにも、住宅ローンを組んだ金融機関でネットバンキングを利用していれば、リアルタイムでわかりますし、住宅ローン控除の際にも使う「住宅ローン残高証明書」が毎年10月下旬に送付されます。

一方で、家の売却価格は自分ではわからないため、不動産会社に価格の査定を依頼しましょう。

査定の方法には机上査定と訪問査定があり、机上査定は市場価格などの情報をもとに算出する方法で、訪問査定は実際に現地へ訪問して査定する方法です。訪問査定は実際に家を見て査定するため精度が高く、売り出すときの価格の参考になります。

また、持ち家を売却するときは、査定とは別に不動産会社へ仲介を依頼します。複数の不動産会社に訪問査定を依頼し、依頼する不動産会社の目星をつけておきましょう。

新居にかけられる費用の目安をつける

新居にかけられる費用はどれくらいになるのか、まずは大まかに計算してみましょう。

計算式は以下のようになります。

家の売却額-住宅ローン残高+自己資金+新たな住宅ローン借入額

ここでは、家の売却額はあくまで査定価格であって、この価格で売れるかどうかわからない点に注意が必要です。

自己資金は、当面の生活には支障がない範囲で捻出する額を決めます。新たな住宅ローン借入額は、これまでの住宅ローンと比べて負担が多すぎないか、あるいは何歳まで返済するのか、といった視点を持って返済可能な額を想定しましょう。

住み替えにかかる費用一覧

住み替えをすると、「家の売却したとき」「新居を購入したとき」「引っ越すとき」それぞれで手数料、報酬、税金などの費用がかかります。

家の売却にかかる費用

家の売却時にかかる費用の一覧です。特に「不動産会社の仲介手数料」は、まとまった金額になるので注意しましょう。

内容費用概算
不動産会社への売却仲介手数料売却額×3%+ 6万円+消費税
※取引額400万円超の場合
印紙税1,000円~6万円※売却金額により異なる
抵当権抹消費用約5,000円~2万円
※司法書士へ依頼した場合
住宅ローンの一括返済手数料5,000円~5万円程度※金融機関により異なる
譲渡所得にかかる税金保有期間5年未満:譲渡所得の39.63%
保有期間5年超:譲渡所得の20.315%※不動産を売却して利益が出た場合

新居の購入にかかる費用

新居の購入にかかる費用の一覧です。

内容費用概算
不動産会社の仲介手数料売却額×3%+6万円+消費税
※取引額400万円超の場合。新築は不要
登記費用登録免許税:固定資産税評価額×税率
※登記の種類により0.4~2%前後司法書士手数料:数万円程度
印紙税1,000円~6万円※売却金額により異なる。売却価格が100万円超~5億円以下の場合
住宅ローンの設定費用融資事務手数料として3万円~5万円
あるいは融資額の1~2%前後
不動産取得税税額=固定資産税評価額×4%
※令和6年3月31日まで軽減税率3%

売却のときと同じように、不動産会社の仲介手数料が大きくなります。新築であれば仲介手数料は不要ですが、そのほかにも家具や家電の買い替えなどで費用がかかります。費用は多少多めに見積もりましょう。

引っ越し・仮住まいにかかる費用

引っ越し費用は3,4,10月の繁忙期と、それ以外の時期で費用に差が出ますので、引っ越し時期の選択も重要です。また、新居の購入が先になれば、引っ越しは1回で済みますが、引っ越しが先になれば、仮住まいが必要となり、引っ越しは2回となります。

仮住まいが必要な場合は仮住まい先の賃料に加え、敷金・礼金が必要なケースもあります。ウィークリーマンションなど、敷金・礼金がない物件もありますが、ファミリー向けは物件数が限られるため、まずは賃貸物件で想定しましょう。

内容費用概算備考
引っ越し費用
※家族の場合
荷物量・移動距離などにより10~40万円程度
※時期により変動あり
仮住まいなし1回
仮住まいあり2回
仮住まい費用仮住まいの期間・家賃等により変動
※仮住まい期間6カ月、家賃10万円、敷金・礼金3カ月分の場合
10万円×6カ月+10万円×3カ月=90万円

住み替えの資金計画を立てるときの注意点

実際に住み替えをするときに、どのように資金計画を立てたらよいのでしょうか。資金計画を立てるときの注意点について解説します。

買い先行、売り先行で資金計画が変わる

住み替えでは新居の購入を先に行うのか、いまの持ち家の売却を優先するのかによって、資金計画の内容が大きく変わります。

それぞれメリット・デメリットがあり、資金面のリスクを抑えたいのであれば「売り先行型」、新居選びや引っ越しを1回で済ますのが最優先であれば「買い先行型」がおすすめです。

自分が何を優先したいのか考えてから、スケジュールを組んでみましょう。

売り先行型買い先行型
メリット資金計画に無理が生じにくいじっくり持ち家の売却ができる仮住まいの必要がなく、引っ越しが1度で済む妥協することなく、新居を選べる
デメリット仮住まいが必要になる可能性が高い新居選びを焦りやすい資金計画が狂いやすい住宅ローンの負担が大きくなりやすい売却を焦りやすい
向いている人自己資金がない家の売却額<住宅ローン残高資金の問題を優先したい資金に余裕がある家の売却額>住宅ローン残高新居選びを妥協したくない引っ越しは一度で済ませたい

家の売却額は変動する可能性がある

資金計画で失敗しがちなのが、「持ち家が思っていた金額で売れず、資金計画が狂う」ことです。持ち家の売却額は買主との交渉で決まり、市場の影響も受けるため、変動するリスクが大きく、想定していた価格で売れないことがあります。

特に買い先行型で住み替えを進めるときは、売却があとになるため、資金面のリスクが大きいです。

また、売り先行型であっても、持ち家が思っていた金額で売れないと、資金を確保できず、新居を妥協して購入したり、新居の購入自体を断念したりすることになりかねません。

そのため、査定額より少し低い売却額を想定して、資金計画を立てることが大切です。

オーバーローンなら住み替えローンを利用

通常は家の売却代金で住宅ローンを完済する手続きを取りますが、家の売却額よりも住宅ローンの残高が大きい「オーバーローン」の状態であれば、それも難しくなります。

そのようなときでも、住み替えたい場合は「住み替えローン」を利用します。住み替えローンとは、購入する新居を担保にして、売却する家の住宅ローン残高と新居の購入資金をまとめて借り入れる住宅ローンのことです。

注意する点として、通常の住宅ローンに比べ審査が厳しくなることや、売却と購入を同じタイミングにする必要があるため、スケジュール管理が重要になります。

住み替えローンを利用する際は、仲介する不動産会社や金融機関と綿密な調整が必要です。

新たな住宅ローンは、完済時の年齢にも注意して借入額を検討する

住み替えに関しては、オーバーローンではなくても、新たな住宅ローンを設定する人がほとんどでしょう。新たな住宅ローンで、いままで以上に返済額が増えると、生活を圧迫するリスクが高くなります。

また、当然ですが、最初の家の購入時に比べ、住み替えるときの年齢は高くなっています。国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によれば、初めて家を購入するのは30代の人がもっとも多くなりますが、住み替えになると60代以上がもっとも多くなり、年齢がグッと上がります。

その分、「子どもが独立した」あるいは「老後の資金を考えなければならない」など、取り巻く環境が大きく変わっている可能性もあります。

また、住宅ローンの年間での返済金額は年収の25%が上限、借入総額は年収の7倍が目安といわれますが、定年を迎えると年収は大きく下がるのが一般的です。

そのため、定年を迎える年齢、たとえば65歳までに完済するような計画にするなど、返済期間をいたずらに延ばさず、老後にしわ寄せがないよう返済額を設定しましょう。