子育てが終わり老後の住まいとして、現在住んでいる持ち家を売却してマンションへの住み替えを検討している人はたくさんいます。マンションは交通アクセスのよいエリアにあるケースも多く、体力的な衰えを感じやすい老後であっても快適に暮らしやすいといわれています。
老後にマンションへ住み替えるメリットや、住み替えを成功させるポイントなどを紹介します。
目次
老後の住み替え先の選択肢
住み替え先にはさまざまな選択肢がありますが、老後はどのような住まいを検討すればよいのでしょうか。
国土交通省が行った「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅の住み替えを2回目以上行ったことがある60歳以上の二次取得者の場合、マンションなどの分譲集合住宅へ住み替える人の割合が高いことが分かっています。マンション以外の住み替え先には、注文住宅、中古住宅、分譲戸建て住宅などが挙げられています。
マンションや注文住宅、中古住宅、分譲戸建て住宅など、それぞれにメリットやデメリットがあるので、自身の希望に適しているかの確認が大切です。
※参考:国土交通省 住宅局.「令和4年度住宅市場動向調査報告書」.“(2) 一次取得・二次取得別の世帯主の年齢”
老後にマンションへ住み替えるメリット
老後の住み替え先に多く選ばれているマンションは、住居の環境やコスト、セキュリティ、メンテナンスなどの面でさまざまなメリットがあります。ここからは、老後にマンションへ住み替える主なメリットを見ていきましょう。
足腰が弱くなっても快適に過ごせる立地に住める
老後にマンションへ住み替えるメリットとして、立地のよい物件が多い点が挙げられます。特にマンションは駅前に建てられているケースも多く、スーパーマーケットや銀行、美容院、公園などが近ければ、マンション付近で日常生活を完結させることもできるでしょう。
また、駅やバス停などの公共交通機関に近いマンションであれば、高齢になって車の運転をしなくなったとしても、電車やバスなどを利用して気軽に外出できます。
家の規模を小さくして支出を抑えられる
子どもが成長し自立した後、子ども部屋は必要なくなります。夫婦二人での生活や単身での生活を想定して、持ち家を売ってそれまでよりも規模の小さいマンションに住み替えれば、火災保険など家の維持費を下げられる点がメリットの一つです。
また部屋数の少ないマンションに住み替えることで、その分光熱費の支出が抑えられ、貯蓄に回すこともできるでしょう。
バリアフリーの生活を送れる
マンションは基本的には段差の少ない作りになっています。戸建のように室内の階段の上り下りを心配する心配もなく、老後に足腰が弱くなったときにも快適に生活できるでしょう。
また、シニア向けのマンションに住み替えれば、バリアフリーの生活を送りやすい点もメリットの一つです。バリアフリーが整っていれば「部屋ごとに段差がない」「廊下やトイレ、浴室などに手すりが設置されている」「キッチンに可動式の棚が設置されている」など、老後も暮らしやすい仕組みが取り入れられています。
さらにマンション内に同じシニア世代の方が暮らしているほか、管理人が24時間常駐していることが多いのも、シニア向けマンションのメリットの一つです。定期的な住人同士の交流の場が設けられているマンションもあるので、社会から孤立しにくくなるでしょう。
セキュリティが万全
マンションのエントランスには、防犯カメラやオートロックなどのセキュリティ設備が備わっていることが多いです。また前述したように管理人が常駐しているマンションであれば、万が一の際にすぐに相談できます。中層階の部屋に住んでいれば、泥棒が外から侵入する可能性も低くなるでしょう。
掃除やメンテナンスの負担を軽減できる
持ち家の場合、季節や住んでいる年数によって庭の草抜きや木の剪定(せんてい)、建物や外構のメンテナンスが必要です。老後を考えると、体力面で負担を感じやすいでしょう。
老後に持ち家からマンションに住み替えれば、マンションのエントランスやエレベーター、廊下などの共用部分の掃除、建物のメンテナンスなどは管理会社が対応してくれることが一般的です。自分自身で毎日掃除をしたり、メンテナンスをすべきか検討したりする必要がないので、体力的な負担を軽減できるでしょう。
定年後でも住宅ローンは組める?
老後の住み替え先としてマンションを購入する際に、住宅ローンを組むことが可能です。しかし、定年後に住宅ローンを組む場合は、返済期間や借入金額に制限がかかるケースもあることを認識しておきましょう。
融資基準は金融機関によって異なりますが、「住宅ローンを組む人の年齢が70歳未満」「80歳までに住宅ローンを完済する」といった制限があることが一般的です。このような制限があると、住宅ローンの返済期間が短く、借り入れ可能額も通常より少なくなる可能性が高いです。
老後にマンションへの住み替えを成功させるポイント
老後に持ち家を売却してマンションへの住み替えを成功させるには、事前にいくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここからはマンションの住み替えを成功させるためのポイントについて、詳しく紹介します。
家族とよく相談をする
持ち家を売却してマンションに住み替える前に、家族の中に持ち家を相続したい人がいるかどうか確認しておきましょう。子どもに住み替えを相談した際に、二世帯住宅での同居などを提案されるケースもあります。
老後に住み替えを検討している地域や暮らし方なども含めて、家族と相談する時間を事前に確保しておき、全員の理解を得ておきましょう。
数十年後の生活を想像して住み替え先を選ぶ
老後にマンションへの住み替えを成功させるには、数十年後のライフスタイルを想像することも大切です。趣味を楽しみたい人やペットを飼いたい人など、理想のライフスタイルは人それぞれです。たとえば、趣味のギターを楽しみたい人であればマンションの防音性能を確認したり、ペットを飼いたい人であればペット可のマンションかどうかを確認したりしましょう。
また年を重ねて介護される場合を想定し、浴室や洗面所、トイレなどが広く使いやすいことや、室内の段差の有無、家の中の生活動線のよさなどを考慮するようにしましょう。
現在の住まいはなるべく高く売却する
現在の持ち家は、なるべく高値で売却して購入資金に充てるのがおすすめです。また不動産会社によって、売却の交渉が得意なエリアや査定額などが異なります。そのため持ち家の売却を依頼する際には、複数の不動産会社を比較検討してください。気になる不動産会社があれば、査定を依頼して高値で売却できるかどうかや、自身の要望を聞いてくれるかなどを確認しておきましょう。
退職金や預金をすべて使い切らないように注意
老後のマンションへ住み替える際には、一定の費用がかかります。その際に退職金や預金を使い切らないようにしましょう。今後の生活費や医療費のために計画的に貯蓄しておくことが大切です。
50歳以上であれば「ねんきん定期便」で年金の見込み額を確認できるので、年金の受給額も考慮した上で具体的な資金計画を立ててから住み替えをしましょう。
売り先行か買い先行か検討する
持ち家からマンションへ住み替えるには、先に持ち家の売却をする「売り先行」と、先にマンションを購入する「買い先行」の二つの方法があります。一般的に住み替え前の持ち家の住宅ローンが残っていなければ、買い先行がおすすめです。期限を設けずにじっくりとマンションを選べます。
ただし、買い先行であったとしても、マンションを決める前に持ち家の査定を依頼しておくことがおすすめです。事前に査定額を把握しておき、どの程度マンションの購入に資金がかけられるかを判断した上で新居を決めるようにしましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。