サブリースは家賃保証型の管理形態です。サブリース契約を選択することで、オーナーは安定した家賃収入が得られます。しかし、サブリース会社が倒産して、オーナーが被害を受けるという事例が多々あります。
サブリース会社が倒産すると、オーナーはどのような被害を受けるのでしょうか。サブリース会社が倒産した場合の問題点とオーナーがとるべき行動について解説します。
目次
サブリース会社が倒産するとどうなる?
サブリース会社の利益は、入居者から得た家賃からオーナーへ支払う家賃の差額です。しかし、空室が埋まらなかったり市況の影響を受けたりすることでサブリース会社が倒産することがあります。
そのため、オーナーはサブリース会社が倒産するときのリスクをあらかじめ把握しておくことが重要です。サブリース会社が倒産することでオーナーが抱えるリスクについて解説します。
家賃収入が途絶える
サブリース会社が倒産した場合、毎月支払われていた家賃が途絶えてしまうおそれがあります。
実際に、サブリース会社が入居者に倒産の旨を伝えていなかったことで、入居者は倒産したサブリース会社に家賃を振り込むという問題が発生してしまいます。オーナーがサブリース契約を締結する理由は安定した家賃収入を得ることにありますが、サブリース会社が倒産することで家賃収入が急に途絶えてしまうこともあるのです。
倒産したサブリース会社に支払われてしまった賃料は、倒産したサブリース会社に請求することができます。しかし、倒産していることから回収に時間がかかったり、全額の回収ができなかったりするおそれがあります。
このように、サブリース会社の倒産はオーナーにとって大きなリスクを抱える事態になってしまいます。
賃貸借契約の内容によっては変わらず家賃収入を受けられる
サブリース会社が倒産をしても、入居者から直接家賃収入を得られるのであれば、当面の家賃収入は確保できるでしょう。そのためには、サブリース会社との賃貸借契約の内容が重要です。
国土交通省は契約書のひな形を公開しており、契約条項には次のような文章が記載されています。
【サブリース住宅標準契約書:第18条】
建物の所有者との間の本物件に関する賃貸借契約が終了した場合には、オーナーは建物の所有者に対し、本契約における貸主の地位を当然に承継する
引用:国土交通省「サブリース住宅標準契約書」より
この条文によると、サブリース会社が倒産しオーナーとの賃貸借契約が終了した場合には、サブリース会社と入居者との転貸借契約の地位を承継することができることになります。この契約内容は入居者を守るという意味もあります。入居者はこれまで支払っていた賃料と同額をオーナーに支払うことで、サブリース会社の倒産後も住み続けられます。
万が一の場合でも対処できるように、このような条文がサブリース契約に盛り込まれているかどうかを必ず確認しましょう。
銀行との信頼関係が崩れてしまうこともある
サブリース会社が倒産することで家賃収入が不安定になり、融資を受けにくくなることがあります。
住宅ローンとは違い、投資ローンは「収益計画」が重点な審査項目となります。倒産するサブリース会社を選択したこと事態がマイナス評価になるおそれがあります。たとえオーナーが会社員であったとしても、投資ローンを借りる時点で銀行側は「経営者」として判断します。
つまり、家賃収入が途絶えるリスクを選択した経営手腕も融資の審査対象となるため、注意が必要です。
サブリース会社倒産後、とるべき行動とは
サブリース会社を入念に選定したとしても、倒産リスクが0%の会社はありません。そのため、どのようなサブリース会社と選定したとしても倒産した場合に備えておく必要があります。
サブリース会社が倒産した場合に、オーナーがとるべき行動について解説します。
入居者に直接賃料請求をする
オーナーは入居者に直接賃料請求をすることができます。
オーナーが入居者へ直接賃料の支払いを求めることは民法でも認められています。しかし、サブリース会社と入居者との間で締結されている賃貸借契約で定められた賃料を超えての請求はできません。
また、入居者はサブリース会社が倒産していることを知らずに、すでにサブリース会社に賃料を支払っていることがあります。この場合、入居者はサブリース会社とオーナーに賃料を二重に支払う必要はありません。そのため、すでに支払っている分に対しては、サブリース会社に請求をする必要があります。
入居者への説明には注意が必要
賃料の振り込み依頼を入居者へ説明するのは簡単ではありません。
入居者の中には「サブリース」というワードすら初めて聞くことも多く、十分な説明をしなければ混乱を招くでしょう。余計な退去者を出さないためにもしっかり準備し、問題なく賃貸生活を継続できることを住民に説明する必要があります。
オーナーの説明だけでは、説得できないことも考えられます。必要であれば弁護士などに対応を依頼しましょう。第三者が入ることで、入居者は事情をスムーズに理解してくれるでしょう。
住民と賃貸借契約を締結する
1日でも早く安定した家賃収入を得るためには、現入居者と改めて賃貸借契約を締結するとよいでしょう。
その際は、新しいサブリース会社と契約してもよいですし、サブリースとは違う管理方法を選択してもよいでしょう。どちらにせよ、入居者と賃貸借契約を結ぶ際は、入居者がこれまで支払ってきた賃料と同額で契約を締結するとよいでしょう。入居者もこのトラブルの被害者です。賃料を上げるなどと、余計な負担や不安を与えないように注意しましょう。
サブリースはやはり避けるべき?
サブリース契約にはメリットもあります。また、賃貸経営にはサブリース以外の管理方法もあるため、十分に納得したうえで管理方法を選択しましょう。
サブリースのメリットとサブリース以外の管理方法について解説します。
サブリースにはメリットもある
サブリース契約をすることで、オーナーには次のようなメリットがあります。
空室があっても家賃収入が減ることがない
市況による賃下げの影響がない(サブリース会社との賃貸借契約内容によっては影響を受ける場合があります)
管理工数が非常に少ない
賃貸経営を進める際にはサブリースをただの「リスク」として捉えるのではなく、メリットとのバランスを検討する必要があります。そのため、賃貸経営を始める際には必ずサブリースのメリットとリスクを確認しましょう。
サブリース以外の管理方法も検討する
賃貸経営にはサブリース以外の方法もあり、代表的な方法として管理委託があります。
管理委託とは、物件の維持管理だけを委託する契約形態です。専門の管理会社が家賃の回収から空室の募集、物件の修繕を行うことで、オーナーの管理工数を減らすことができます。
しかし、空室による家賃減収の影響は受けることになるため、注意が必要です。
万が一倒産した場合は他の不動産会社にも相談してみる
サブリース会社が倒産することで、オーナーにも入居者にも大きな影響が出てしまいます。また、倒産した際にとるべき行動が分かっていても具体的な進め方が分からないオーナーも多いでしょう。
そのため、万が一サブリース会社が倒産した場合には他の不動産会社にも相談し、正しい進め方のアドバイスを受けましょう。相談することでその不動産会社が管理委託を受けてくれたり、売却の手助けをしてくれたりします。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。