これまで何十年と住み続けてきた家には当然愛着が湧き、このまま終の棲家として生活する人も多いです。
しかし、その一方、老後に生活拠点を変えず住み続けることには大きな弊害があります。それは、夫婦2人で生活するには家が広すぎるという点です。
この記事では、老後の家に関する問題点や解決策について解説します。
目次
老後の家が広すぎる場合の選択肢
老後の家が広い場合、どのような選択肢があるのでしょうか。現在の生活スタイルと将来の生活スタイルを見定めるためにも、次に紹介する選択肢を参考にしましょう。
広いまま住み続ける
生活拠点を変えず、家の状態も変えないまま住み続けるという選択肢は負担がなく、これまで通りの生活を送れます。精神的にも資金的にも大きな変動がないため、安心して過ごせます。しかし、家は見えない所で劣化し続けています。そのため、何もしなくてよいと思っていてもいつの間にか劣化が進み、家屋内の環境が悪くなっているおそれがあります。
身体が衰えた老後は掃除が大変です。老後の夫婦2人暮らしでは掃除をする頻度も減り、使っていない部屋や物置などは放置されるケースが多いです。こういった状態が続くと、使っていない部屋や衣装ケースにホコリがたまり、ダニやゴキブリといった害虫が発生する原因になります。害虫やハウスダストは人体に悪影響を及ぼすため、老後の家として適切とはいえません。
広い家のまま住み続けることは、これまで通りの生活が必ずしも送れるわけではないということを知っておきましょう。
リフォームする
老後は、広すぎる家の床面積を減らすためにリフォームを行うケースが多いです。
リフォームの際は、手すりの設置や段差除去工事などのバリアフリー工事も合わせて検討しましょう。リフォームして家の大きさを適切な面積にすることで生活動線は改善され、掃除の効率もよくなります。
リフォームをすることで、予期せぬ事故やハウスダストの発生を未然に防げます。後述する住み替えという選択肢を選ばないのであれば検討しましょう。
住み替える
老後の家が広すぎる場合、一般的には住み替えを選択します。なぜなら、住み替えは一番手っ取り早く、自分が望む環境を選択できるからです。
いくら慣れ親しんだ家とはいえ、掃除などの維持管理ができない家に住むのは好ましい環境とはいえません。また、リフォームは時間もかかりますし、修繕内容には限界があります。
それであれば、費用はかかるけど住み替えを選択するという人が多いです。
また、老後の住み替えはマンションが多いです。戸建てに比べて費用が安く、既にバリアフリー仕様となっているマンションも多いです。建物全体のメンテナンスも管理組合が実施してしてくれるため、維持管理の負担も最低限で済みます。
以上のような理由から、広すぎる家に住んでいる人は、住み替えを検討してみてはいかがでしょうか。
住み慣れた家を売って住み替えるメリットとデメリット
老後は住み替えることが一般的になっているとはいっても、住み替えにどのようなメリットやデメリットがあるのかを知っておく事は重要です。ここでは住み慣れた家を売り、移住する際のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
住み替えるメリットは次のとおりです。
現状にあった環境で生活できる
そもそも住み替えるという選択肢を選ぶ時点で、現状の家に不満や問題点があるということです。部屋の掃除が大変という問題点だけでなく、草むしりや車の移動がリスクであるなど、若い頃に購入した家に老後も住み続けるには、さまざまな問題点があります。
これらは住み替えによって解決できる可能性があります。たとえば、立地のよいコンパクトマンションを購入した場合、掃除が楽になり、草むしりをする必要もありません。また、車を売却してバスや電車といった公共機関での移動に限定することもできます。
このように、自身が年齢を重ねるうえで最適な住環境を選ぶという意味でも、老後の住み替えは最適な選択だといえるでしょう。
修繕の手間が減る
戸建ての場合、10年周期で屋根の漏水対策や外壁の塗り替え、基礎の防蟻処理などを行う必要があります。業者にすべて任せてもよいですが、一般的な100㎡の家屋では約150万円の費用がかかります。また、業者を自分で探す手間がかかり、悪徳業者に依頼してしまうというリスクもあります。
マンションであれば管理組合がすべて管理しており、どのタイミングで何の工事をしたのかを報告してくれます。また、共用部は常に綺麗な状態を保ってくれるため、修繕の手間がかからず安心です。
相続税対策になる
老後の住み替えは相続税対策をするチャンスともいえます。たとえば、現金を持ちすぎているのであれば、住み替えることで現金を不動産に変換でき、大きな節税効果を得られます。
これは、現金より不動産の方が、相続税評価額が低く設定されるためです。
このように、いずれ発生する相続に対して対策ができるのも、住み替えのメリットです。
デメリット
慣れ親しんだ家を売却することには、デメリットもあります。以下で紹介するデメリットも踏まえたうえで住み替えの是非を検討しましょう。
環境変化がストレスになる
何十年も住み続けた環境が変わってしまうと、大きなストレスになることがあります。
生活環境が変わらない物件への移住であればそれ程大きなストレスにはならないものの、知合いがいない場所へ移住した場合などは、落ち着いた生活が送れないかもしれません。
外出する頻度や人と話す頻度が急激に減った場合、認知症のリスクもあります。そのため、住み替え先がどのような生活環境になるのかはしっかりと把握するようにしましょう。
選択できる物件が少ない
老後は住宅ローンを組むことが難しく、現金での購入が一般的です。住宅ローンを組めないと選択肢が少なくなってしまい、妥協した家探しになってしまうおそれもあります。
現在、住んでいる家が高値で売却できるのであれば問題ありませんが、住みたいエリアと現金とのバランスは非常に重要です。
出費がかさむ
マンションであれば、大規模修繕にかかる特別修繕費の徴収や管理費など、これまで戸建て住宅に住んでいた人は聞いたこともないような出費が発生します。そのため、住み替えることで生活が圧迫されるケースもあります。
このようなことにならないよう、住み替え先で発生する費用は不動産会社に必ず確認しておくようにしましょう。
老後の住み替えにはいくら必要?
住み替えには大きな費用が必要となりますが、住宅ローンを組むのが難しい年齢での住み替えは、原則現金での支払いになります。そのため、どのくらいの支出になるのかをあらかじめ確認しておきましょう。
売却にかかる費用
売却時には、印紙代と登記費用、仲介手数料が発生します。これらの相場は、売却価格の約5%といわれています。仮に3,000万円で売却できた場合には、約150万円が必要ということになります。
一番高額になるのは仲介手数料で、売却価格の3%+ 6万円に消費税を加えた費用が必要です。ただし、不動産会社が直接買取する場合は、仲介手数料は不要です。売却に関する費用はあらかじめ、不動産会社に確認しましょう。
購入費用
住宅金融支援機構の「2021年度 フラット35利用者調査」によると、物件種別ごとの全国の平均取得費用は以下のとおりです。
物件種別 | 平均取得費用(万円) |
---|---|
マンション | 4,562 |
土地付注文住宅 | 4,455 |
建売住宅 | 3,605 |
注文住宅 | 3,572 |
中古マンション | 3,026 |
中古戸建 | 2,614 |
物件の平均取得費用は中古のマンションでも3,000万円以上となっています。しかし老後に2人で住む家は、コンパクトな住居になることでしょう。そのため、2人で住むための取得費用はこの平均取得費用よりも下回ることがほとんどでしょう。
とはいっても、不動産はエリアによって取得費用が大きく変わります。家の売却益と保有している現金でどのエリアを購入するのかしっかり検討するようにしましょう。
老後の住み替えはパートナー選びが重要
後悔や失敗をする住み替えの原因として、どのタイミングで何をすればよいのか分からないということがあります。特に引っ越しのタイミングは住み替えをする際には非常に重要です。住み替えに慣れていない不動産会社に依頼してしまうと大きなトラブルに巻き込まれたり不要な費用が発生したりするおそれがあります。
そのため、老後の住み替えを成功させるためには不動産会社選びが非常に大事です。快適な環境で老後を過ごすためにも、住み替えの際には、ぜひ当社までお問い合わせください。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。