いまの家が老後も生活しやすいとは限りません。快適に老後も過ごすには、住み替えや建て替え、リフォームの検討が必要でしょう。
どういった住まいが老後に適しているかを考えてみましょう。
目次
老後の住まいの選択肢にはどういったものがある?
住宅ローンを払い続けてきた愛着のある家ではあるものの、老後の住まいとしてはさまざまな不都合が生じることがあります。このまま住み続けるのか、それとも住み替えるのか。
老後の住まいのいくつかの選択肢について、メリットやデメリットなどを解説します。
新居へ住み替え
現在住んでいる家を売却して、新居を購入したり、賃貸したりして住み替えます。自分の希望するエリアで、戸建てやマンションなどから自由に住まいを選べるのがポイントです。
ただし、新居を購入する場合は費用がかかるため、持ち家を売却する必要があるでしょう。
メリット
- 自由に居住エリアを選べる
- 暮らしに合う間取りの家を選べる
- 家の売却代金を新居の購入費に充てられる
デメリット
- 売却が決まらないと住み替えにくい
- 賃貸住宅だと高齢者は借りにくい
いまの家を建て替える
いまの家を解体して立て替えることで、老後に住みやすい家を手にできます。住み慣れた土地から離れることなく、そのまま住み続けられます。
ただし、いま住んでいる土地が、老後も住みやすいエリアである必要があるでしょう。
メリット
- 老後の住まいを一から設計できる
- 売却などの手間がかからない
- 住み慣れた土地で暮らし続けられる
デメリット
- 建て替え中は仮住まいが必要になる
- 建て替えのための費用がかかる
- 老後も住みやすい地域である必要がある
リフォームをしてそのまま住む
いま住んでいる家を老後に住みやすいように、リフォームしてもよいでしょう。断熱材を追加したり間取りを変更したりすれば、古い家でも快適に過ごせるようになります。愛着のある家を手放さずに済みます。
メリット
- 老後の暮らしに適した家にできる
- 立て替えほど費用がかからない
- 住み慣れた土地で暮らし続けられる
デメリット
- 建物の構造は変わらない
- 老後も住みやすい地域である必要がある
老人ホーム
いまの家ではなく、老人ホームへ生活の場所を移すのもひとつの方法です。老人ホームであれば老後に孤立することなく、人と触れ合って生活できるでしょう。
生活や病気の治療に対して、高齢者に適したサポートを受けられるのも魅力です。
メリット
- 高齢者に適したサポートを受けて生活できる
- コミュニティに参加して人と交流できる
デメリット
- 入所の費用が高額になりがち
- ひとによっては集団生活にストレスを感じる
老後の暮らしならこんな家がおすすめ
暮らしやすい家は、ライフステージや年齢によってさまざまです。広々とした家は住みやすそうに見えますが、移動距離が長いため、高齢者にはあまり向かないことがあります。
どのような家であれば、老後でも暮らしやすいのでしょうか。老後に暮らしやすい家を見ていきましょう。
高断熱でヒートショックを防ぐ
高齢者が住む家はヒートショックを防ぐために、高断熱であることが望ましいです。
ヒートショックとは、急激な温度変化による血圧の変化で心臓や血管の疾患を発症することです。大動脈解離、心筋梗塞、脳内出血などの深刻な疾患だと、死に至ることがあります。
築年数の経ち古い家はいまと異なる断熱基準で建てられているため、断熱性能の低いことが多々あります。そのため、浴室や洗面所が冷えやすく、部屋を出て利用したときにヒートショックを起こすのです。
高断熱の家にすれば家の中の寒暖差を減らせるため、ヒートショックのリスクを軽減できます。また、エアコンの効果が得やすく、快適に暮らせるでしょう。
バリアフリーで長く住み続けられる家に
家を購入したときは気にならなかったわずかな段差などが、高齢になると負担になって使いにくくなってしまうことがあります。たとえば、部屋の仕切りの段差、廊下の幅の狭さなどが、車いすを使うようになると不便を感じるようになるでしょう。
そのため、老後の住まいはバリアフリーであることが望ましいです。段差をなくす、スロープを設置する、通路の幅を広げるなど、高齢者が利用しやすい家にしましょう。
適切な広さにダウンサイズ
家族の人数に合わせた間取りは、子どもが進学や結婚などで家を出ると持て余してしまうことが多いでしょう。使わない部屋が物置になってしまう、掃除が行き届かなくなるなど、人数に合わない家は、なにかと負担になります。
夫婦ふたりで暮らすのなら、家族向けの3LDK以上の間取りは広すぎるでしょう。1LDKや2DKで十分に間に合うかもしれません。必要な広さで掃除もしやすくなるため、ダウンサイズはおすすめの選択肢です。
階段などの上下移動がない
高齢者にとって階段での移動は、大きな負担になります。ところが、リビングやダイニング、浴室などと寝室が別の階にあると、毎日必ず移動が生じてしまいます。老後に住むのなら、そういった負担のない間取りがおすすめです。
リフォームで必要な設備や部屋を1階にまとめてもよいでしょうし、平屋への建て替え、マンションへの住み替えでも対応が可能です。
自分の暮らしにあった環境に住む
家を購入するときは、子どもの学区や職場との距離など、さまざまな要素からエリアを選びます。しかし、子どもが独立し、会社を退職したあとであれば、そういったことを考える必要はありません。住みたかったエリアを自由に選ぶことが可能です。
都市部で買い物などを楽しみたい人は駅から近い物件が便利ですし、田舎で穏やかに暮らしたい人は、静かで自然豊かな場所を選ぶほうがよいでしょう。住み替えをする場合には、自分の趣味や暮らし方に合った環境を選び直して住み替えることもおすすめです。
病院をはじめとした医療機関が近くにあるかなども重要となってくるでしょう。
住み替え、建て替えで注意するポイント
老後に住み替えや建て替えをして、適切な環境や間取りで快適に暮らすために注意の必要なポイントを紹介します。
住み替え、建て替えにかかる費用を把握する
住み替えと建て替えでは、かかる費用が違うため、どういった費用がかかるのかを事前に把握しておきましょう。費用を把握しておくことで、計画的に新生活をスタートできます。
住み替えでかかる費用
- 土地代
- 建築費、または物件の購入費
- 仲介手数料
- 登記費用
- 融資手数料
- 引っ越し代など
戸建てへ住み替える場合は、土地の購入が必要になるため、土地代も必要になります。しかし、いまの住まいを売却して得た売却代金が、その費用に充てられます。そのため、自己資金が少なくても住み替えが可能です。
建て替えでかかる費用
- 建築費
- 融資手数料
- 登記費用
- 引っ越し代
- 仮住まいの費用など
建て替えなら土地代はかからないため、建築費にお金をかけられます。費用が抑えられるため、間取りや設備などにお金をかけて、快適に老後を過ごせる家を建てましょう。
ただし、建て替えている期間中は仮住まいが必要で、引っ越し代もかかります。
住宅ローンが組めるかどうかを確かめる
住宅ローンを組む場合は早めに金融機関や、不動産会社に相談をしましょう。一般的な住宅ローンは80歳までしか期間を設定できないものが多く、年齢を重ねるほど借り入れできる期間が短くなります。
住み替えや建て替えでは、数千万円もの費用が必要になります。すべて現金でまかなえるのであれば問題ありませんが、住宅ローンを組んで購入するケースが多いです。
住宅ローンの借り入れが難しい場合は、親子ローンやリバースモーゲージなどの利用を検討しましょう。
住まいの資産価値を早めに知る
住み替えをおこなう場合は、いまの住まいを売却、または賃貸に出して引っ越すことになります。
売却するのであれば、どのくらいの金額で売却できるのか、早めに把握しておくと住み替えの計画が立てやすくなります。住み替えの検討段階で、不動産会社に家の査定をしてもらいましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。