10年前後でマンションを住み替えることは、さまざまな経済的メリットがあるためおすすめです。このメリットを最大限に活かすためには、効率的な住み替えと高く売れるマンションの見極めが重要になります。
10年前後でマンションをお得に住み替えるために、必要な知識を紹介します。
マンションは10年前後で住み替えるべきといわれている理由
マンションは10年を目安に住み替えるのが、得する住み方といわれています。その理由のなかでも、代表的な3つを紹介します。
築10年のマンションは需要が高い
築10年以内のマンションは需要が高く、売れやすい特徴があります。たとえば、築10年以内であれば、外観がまだ新しく、外壁のひび割れや防水性が低下している箇所なども少ないでしょう。売り出したときに写真映えするため、反響を得やすい傾向があります。
また、公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、新規登録件数に対するマンションの成約率は、築0〜5年よりも、築6〜10年のほうが高いという結果もあります。
住んでいるマンションが築6年を過ぎていても高く売れる可能性があるため、住み替えるか悩んでいる人は、不動産会社に査定依頼をしてみましょう。
住宅ローン減税の期間が終了するタイミング
「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」、いわゆる「住宅ローン減税」は、住宅ローンを借り入れて新築住宅を建てたり、中古住宅を購入、増改築をした場合、一定の条件に当てはまれば、年末の住宅ローン残高の0.7%を控除額として、所得税が還付されるという制度です。
控除期間は原則10年(※)で、そのタイミングで住まいを売却し、新たに住宅ローン控除の条件を満たした物件を購入した場合、再び住宅ローン控除を利用することができます。
※注=2019年10月以降で消費税10%が適用される物件を購入した場合などは、控除期間は13年
10年を目途に住み替えを行うことで、税制の控除を上手に受けることができるのです。
大規模修繕の追加費用を負担せずに済む
マンションは12~15年おきに、大規模修繕工事が行われます。大規模修繕工事では、建物全体のメンテナンスが行われるためそれ相応の費用がかかります。
そのため、マンションの管理会社では毎月の管理費用と同時に修繕積立金を徴収しています。ところが、この修繕積立金が不足しているケースが多々あります。
新築マンションの場合、売れやすさを優先して、修繕積立金を安く設定していることが少なくありません。そうすると、いざ大規模修繕工事をしようとしたときに、資金不足で一時金を徴収せざるを得ないことがあるのです。
10年で住み替えをした場合、この追加で徴収される資金を払わなくて済む可能性が高くなります。
5年超なら譲渡所得税が安くなる
売却して利益が出た場合、不動産には譲渡所得税がかかります。譲渡所得税とは、売却で得た利益にかかる税金の総称で、所得税・住民税・復興特別所得税が含まれます。譲渡所得税は、不動産を所有していた期間によって税率が異なります。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下の不動産 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超の不動産 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
つまり、保有して5年以下の場合は利益の約40%、保有して5年を超える場合は利益の約20%が税額となるため、5年を経過してから売却したほうが多く売却益を残しやすいのです。
マンションを住み替える手順と注意点
住み替えの方法には、売り先行、買い先行といった方法があります。売却と購入を同時に行うことは難しいケースが多く、実際にはこの売り先行か買い先行のいずれかを選択することが多いでしょう。
これらの住み替え方法の手順と、住み替えを行うにあたっての注意点をまとめて解説します。
住宅ローンを完済する必要がある
住宅ローンを借りている場合、購入した家には抵当権が設定されています。この抵当権を抹消しない限り、次の家を住宅ローンで購入できません。
抵当権は金融機関が債務者に対して、不動産を担保として設定する権利のことです。住宅ローンの返済中はこの抵当権が設定された状態になっているため、完済して抵当権を外してもらわなくてはなりません。
そのため、住宅ローンの残債がある家を売却する場合は、その家の売却代金を受け取るのと同時にローンを完済し、抵当権の抹消手続きを行う必要があります。
売り先行か買い先行か決める
住み替え方法には同時に決済を行うほか、売り先行と買い先行のふたつの方法があります。
売り先行はいま住んでいる家の買主を見つけてから、次の新居を探す手順で進める住み替え方法です。売り先行であればゆっくりと買主を探せるため、自分の求める条件で物件を売却できる可能性が高くなります。
買い先行は新居を先に見つけてから、いま住んでいる家の買主を見つける住み替え方法です。買い先行の場合は、新居をゆっくりと探せるため、自分の求める理想の住まいを購入できる可能性が高まります。
同時決済はタイミングを合わせることが非常に難しいため、通常、住み替えるときは売り先行か買い先行かを先に選択しておかなければなりません。
売り先行の場合は仮住まいが必要になる場合がある
売り先行だと仮住まいが必要になることがあり、余計な費用がかかるおそれがあります。
先に住んでいる家の買主を見つけるため、引渡日が決まればその日までに次の家を決めて退去しなければなりません。そのため、引渡日までに新居が見つからない場合は、仮住まいへ引っ越す必要があります。賃貸であれば初期費用や家賃・管理費などが余計にかかります。
買い先行の場合はダブルローンになるリスクがある
買い先行の場合は、一時的にダブルローンになるリスクがあります。また、既存の住宅ローンの借入をしている状態で、新居の住宅ローンの審査を受けるため、借入限度額が低くなることも考えられます。そのため、選択できる物件の幅が狭まるかもしれません。
あらかじめ諸費用などを貯めておく
低金利といわれている住宅ローンでも、諸費用分(物件価格の7~9%)は、金利が高く設定されることが多いため、諸費用分をあらかじめ貯蓄しておくことをおすすめします。
たとえば、3,500万円の物件を購入する場合、諸費用は 24.5~31.5万円ほどとなります。30万円前後の貯蓄が理想的でしょう。
次も高く売れるマンションを選ぶには
住み替えをしても、そのマンションが次の10年後の住み替えで高く売れなければ結果的に損してしまうおそれがあります。また、買い手を探すことに時間がかかり、スムーズに住み替えを行えないケースもあるでしょう。
高く売れるマンションには特徴があるため、その代表的なものを5つ紹介します。住み替えで失敗しないように、条件にあてはまるマンションを選択してください。
特に最初の3つの項目は重要で、この項目から外れるマンションは売却時に苦戦を強いられるおそれがあるので注意が必要です
眺望をさえぎる建物がない
マンションは眺望がよければよいほど、資産価値が高くなります。眺望のよさは戸建てにはないマンションならではの強みのため、マンション選びで重要視する人が意外と多いことを知っておきましょう。
たとえば、タワーマンションなどは豪華な共用施設やそのブランドに価値がついていることはもちろんですが、眺望がよい部屋は価値が上乗せされていることがあります。特に東京タワーなど街のランドマークとなる建物が見えたり、海が見えたりする部屋は人気が高い傾向にあります。
将来的に売却を考えてマンションを購入する場合は、眺望をさえぎる建物がなかったり、低層階(特に1~2階)を避けたりするのがベターです。
管理体制が良好
自主管理などの管理体制が悪い物件は、売れにくい傾向があります。自主管理でも管理規約などがあり管理体制に問題がなかったとしても、次の購入者が同じように考えてくれるとは限りません。
マンションの管理組合(全住人)が管理会社に管理業務を全部委託しているような通常のマンションであれば、次の購入者に心配されることは少ないでしょう。
また、管理会社が集めている修繕積立金が安すぎる場合は、注意しましょう。将来的に不足している額を補うために積立金が大幅に値上がりしたり、一括で必要な費用を徴収されたりするおそれがあります。
適正な修繕積立金の目安は、1㎡あたり200円/月 とされています。つまり、70㎡ほどの一般的なファミリータイプの部屋であれば、14,000円/月 が妥当な金額となります。
駅徒歩7分以内
マンションは戸建てに比べて駅に近いことが多く、マンションを選ぶ側も利便性を求めてマンションを選択していることが大半です。そのため、駅から遠いマンションは選ばれにくい傾向があり、高値で売れないリスクがあります。
多くの不動産ポータルサイトでは、駅徒歩5分以内、駅徒歩7分以内、駅徒歩10分以内、駅徒歩15分以内などの選択肢から物件を探せる仕様になっています。駅近の物件であることをアピールしたい場合は、駅徒歩7分以内の物件を選んでおくとよいでしょう。
決まりとして「1分=80m」とされているため、駅徒歩7分以内は駅から560m圏内の物件を指します。
中心部へのアクセスがよい
駅に近いことに加えて、街の中心部へのアクセスがよいことも、高く売れるマンションの特徴です。東京であれば、東京駅や渋谷駅、新宿駅などに1時間以内に通勤できるとよいでしょう。
また、そういった主要駅までの乗換回数の少ない沿線が、マンションの最寄り駅であることも重要なポイントとなります。
地域のニーズに合った間取り
高く売れるマンションを選ぶには、部屋の広さと間取りにも注意しなければなりません。不動産ポータルサイトなどでマンションを検索したときに、70㎡前後のファミリータイプの物件ばかり出ているにもかかわらず、50㎡前後の単身やふたり暮らし向けの部屋を選んでしまうと、売るのに時間がかかるケースがあります。
住みたい地域の特徴を把握したうえで、売れやすい広さと間取りの部屋を選びましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。