居住中の不動産を売却し新居を購入する住み替えは、工程も多く失敗したと感じる人も多いようです。
そのため、どのような失敗事例があるのかを把握し事前に対策しながら進めていく必要があります。
この記事では、住み替えでよくある失敗事例と対策、売れない時の対処法について解説します。
目次
住み替えでよくある失敗事例
住み替えの失敗事例は多く、それだけ通常の不動産売買に比べて難しいということです。
実際に住み替えを行う際は、プロのアドバイスを取り入れることでリスクを軽減できますが、まずはどのような失敗事例があるのかを把握しておきましょう。
相場より安い金額で売却することになった
不動産の購入はご縁です。よい物件と思える物件は他の購入客もよいと思っていることが多く、契約の取り合いになることは珍しくありません。
また、不動産を内覧し気に入った時はすぐにでも購入したいという気持ちになり、購入を急いでしまうケースもあります。
この場合、今住んでいる家を早く売ってしまって移住したいと焦ってしまい、安い価格で売却してしまうことがありますので、注意が必要です。
こういった場合には新居を買いたいという気持ちを抑え、冷静に判断する必要があります。
売却した資金を新居購入に充てる場合は、特に綿密な資金計画をすることをおすすめします。
住宅ローンを二重で組むことになった
売却と購入のタイミングがうまくいかず、二重ローンを組むケースがあります。
この場合では、物件が売却できるまで二重でローンを支払い続ければ、金銭的・精神的につらい日々になります。
住み替えのポイントは売却をするタイミングが重要ですが、特に売却をする物件をいつ引き渡すのか、という期間設定は必ずしておきましょう。
住み替え後の生活を安定させるためにも、二重ローンにならないようにするか、期間を決めた計画的売却を心がけましょう。
購入を急いでしまい、周辺環境の確認を怠った
購入を急いでしまうことのリスクは金銭的なものだけではありません。
たとえば、周辺環境の臭いや音は日によって変わることもあり、土日に物件の内覧をした場合は原因である工場が休みで確認することができなかったというケースもあります。
そのため、一回の内覧で決めずに周辺の状況をしっかりと確認した上で購入の判断をするようにしましょう。
周辺環境は、可能であれば平日と休日、昼間と夜間など、数回に分けて確認することをおすすめします。
住み替えに失敗しないための対策
住み替えの失敗事例を挙げましたが、具体的にはどういった対策が必要になるのでしょうか。売主と買主の立場でしっかりとポイントを抑えておくことが重要です。
売却期間は長くとる
住み替え時はどうしても、これから住む新居に対して注力してしまう傾向にあります。
売却活動を疎かにすると、売却価格や引き渡し時期などの希望条件が大きく下回ってしまうケースがあります。
売却活動は計画的に行わなければ、損をしたり、トラブルになったりするおそれもあります。一般的に、売却期間は不動産会社に相談してから、3〜10カ月といわれています。そのため、最低でも3カ月以上の売却期間は見積もるようにしましょう。
売却と購入のタイミングを細かく設定する
二重ローンや仮住まいを避けるために、売るタイミングと買うタイミングの設定は住み替えにおいて最も重要だといわれています。
このポイントは不動産売買に慣れていない売主にとってはイメージしにくいため、信頼のおける不動産会社のサポートを受けることが得策です。
「引っ越しの時期」「売却代金をもらえる時期」「税金を払う時期」など、移住とお金が動くタイミングを知っておくことでトラブルを未然に防ぐことができます。
売却と購入を同じ不動産会社に依頼する
売却と購入のタイミングが重要という点を前述しましたが、スムーズに進めるためには不動産会社は同じ会社に依頼するようにしましょう。
売却と購入を別々の不動産会社に依頼できますが、その場合計画通りに住み替えが進まないおそれがあります。
売却の依頼を請け負った不動産会社は早く高く売るために販売活動を行います。そのため引き渡しのタイミングや価格交渉など、売却することを第一優先として進めます。
一方、購入物件の捜索を請け負った不動産会社は資金計画が売却に依存する可能性があるため、提案物件の価格を定めにくくなります。その結果、売却のめどが立つまでは物件紹介ができないということになります。
このように住み替えは売却を購入の両方を同時に進めていく必要があるため、なるべく不動産会社は1社に依頼するようにしましょう。
住み替え時の注意点
住み替えを失敗しないために、抑えておきたいポイントを解説します。
住宅ローン残高を確認する
住宅ローンの残高によって、売却しなければならない最低額を計算できます。
年末に住宅ローン残高が発行されますが、売却を決めた時点で銀行担当者に連絡し、現時点での残高を確認するようにしましょう。なお、売却に必要な最低額は以下のとおりです。
住宅ローン残高+売却に必要な諸費用+引っ越し代金+税金の合計額
この中でも住宅ローン残高の割合は大きいため、売却を進める際には必ず確認するようにしましょう。
売り先行か買い先行か
売りと買い、どちらを先に進めるかで住み替えプランは大きく変わります。
仮に売却代金を新居購入に充てる場合、具体的なプランは次のようになります。
売り先行の場合
- 売りの売買契約
- 買いの売買契約
- 仮住まい先へ引っ越し
- 売却代金受け取り
- 新居の購入代金支払い
- 新居へ引っ越し
買い先行の場合
- 買いの売買契約
- 売りの売買契約
- 売却代金受け取り
- 新居の購入代金支払い
- 新居へ引っ越し
このように、売り先行の場合は仮住まいへの引っ越しを挟むため、費用負担が大きくなります。その一方、売ってから新居を買うことになるため、二重ローンとなることはありません。
買い先行の場合は引っ越しを1回で完了させることができますが、売却物件と新居の二重ローンが発生することになり、空き家の管理も必要になります。
どちらが望ましいのかはケースバイケースですが、具体的な日程に落とし込んだスケジュールを不動産会社と打合せし、決定するようにしましょう。
売れない場合は買取を検討する
住み替えをしたいのに、どうしても売却物件が売れないということもあります。
そうならないために、売却スケジュールを決めた時に買取価格を確認しておくことも重要です。
買取は市場に売り出すのではなく、不動産会社に直接買い取ってもらう売却方法です。
不動産会社は買い取った後に付加価値をつけて販売するため、買取価格は相場より2〜3割安くなる傾向があります。
買取は買主が現れるのを待つ必要はなく、早期に売却できるのがメリットです。
住み替えを進める際に、長期間にわたり空き家を保有するというケースは大きな費用負担になります。二重ローンとなることはもちろん、空き家を管理する手間もかかります。
不動産会社の中には、買取保証といって、市場で一定期間売却ができない場合に買取を行ってくれるところもあります。
そのため、売れない場合のリスクとして、買取保証の相談を事前にしておくことをおすすめします。
このように住み替えは、さまざまなリスクに備える必要があります。住み替えを検討される場合は、住み替えの提案実績が多い不動産会社へ相談しましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。