老後を迎える年齢となれば、経済的な理由やライフスタイルの変化、健康状態など、さまざまな理由から住み替えを検討される方が多くなります。
では、実際に老後に住み替えしている方はどのくらいいるのでしょうか。
ここでは、老後に住み替えを検討している人の割合や、住み替え時のメリットや注意点について詳しく解説します。老後の住み替えを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
老後に住み替えを検討している人はどのくらいいる?
子どもが独立し、夫婦だけで住むには、今の家では広すぎるという理由で小さい戸建てを買ったり、賃貸住宅への住み替えを検討したりする方は少なくありません。
老後に住み替えを検討している人は、実際にどのくらいいるのか、どういった理由で検討する方が多いのかについて詳しく解説します。
年齢とともに住み替えを検討する人が増えている
2019年に公表された不動産流通経営協会の「シニアに関する実態調査」によると、年齢に伴って住み替えを意識する人、実際に住み替えをする人の割合は増加傾向であることがわかります。
実際、45歳以上で「住み替えの意向がある」もしくは「住み替えをした」という人の割合は50%を超えています。45歳であれば、まだまだ現役であり、育児も含めた、様々な理由で住み替えをします。
また、65歳以上で老後に住み替えの意向がある、もしくは住み替えをしたという人の割合は58.1%です。半数以上の方が住み替えを検討、または実行しているようです。
住み替え先は持ち家がほとんど
45歳以上の住み替え経験者の住み替え先住居と、住み替え意向者の希望住居の大半が持ち家であることがわかります。
持ち家を選択する理由として、老後は賃貸物件が借りづらくなる点や、持ち家の購入は連体保証人が不要である点が挙げられます。
賃貸物件が借りづらくなる理由の詳細は後述しますが、家賃の未払いや孤独死などのリスクが高いという理由で貸主に敬遠されてしまう傾向にあります。
また、持ち家の購入には、賃貸住宅のような連帯保証人が不要なケースがほとんどです。
賃貸物件を借りる際には保証会社の審査を通過する必要があります。収入面に不安が残る老後は保証会社の審査に通りづらく、その場合、連体保証人を立てる必要があります。
老後は連帯保証人が見つかりにくく、周りに迷惑をかけたくないと考える方は持ち家の購入を選択することが多いです。
住み替え意向はあるものの、お金はあまりかけたくない
老後の住み替え意向において、お金もさまざまな制約につながります。住み替え先は多少狭くても、費用負担が軽いところを探し、老後資金をしっかり確保しておきたい、あるいは狭い家に住み替えてローンや家賃の負担を抑えたいと考える人が多いようです。
一方で、ローンで持ち家を買いたい人や設備が充実している物件がよいなどと、物件優先で住み替えを考えている人の割合は少ないようです。
老後の住み替えは、資金的な制限が強い中で検討していく必要がありそうです。
老後に住み替えるメリットとは
老後に住み替える人が多く、住み替え先としては大半が持ち家を検討していることが分かりました。ここでは改めて、老後に住み替えるメリットについて、詳しく解説します。
支出を抑えられる
子どもが多い場合は、広い戸建てに住んでいるケースが多いです。子どもの独立後に小さなマンションに住み替えることで、光熱費や固定資産税などを抑えられます。
賃貸物件への住み替えの場合では、単純に現在よりも安い家賃のところへ移ることで、毎月の家賃負担が減ります。浮いたお金は老後資金のために投資をしたり、貯蓄したりすることで安心できます。
立地のよい場所に住める
老後は足腰が弱くなり、なにかと生活が不便になります。
老後の生活スタイルに合わせて、徒歩圏内にスーパーや病院などがある地域に住み替えを検討するのもよいでしょう。また、高齢者向けの設備が整った環境への住み替えも検討できます。
その時々のライフステージに応じて、居住環境を変えられるのは住み替えの最大のメリットともいえるのではないでしょうか。
生活スタイルに合った居住環境を選択できる
第2の人生として、老後を満喫したい方には、住み替えることで自分の生活スタイルにぴったりくる居住環境を選択できます。
「老後は田舎でゆっくりと暮らしたい」や「南の島へ移住したい」などと、現役時代では検討できなかったことが、老後の住み替えによって実現できます。このように、余生を謳歌したい方は、積極的に住み替えを検討するべきでしょう。
老後の住み替え、失敗しないポイント
老後の住み替え時に失敗しないためには、いくつかポイントを抑えておく必要があります。
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
住み替えるタイミング
住み替えるタイミングについて、明確に決めておきましょう。
一般的に老後とは、65歳以上のことを指しますが、この年齢を超えると各種ローン契約や賃貸借契約の審査が通りにくくなります。そのため、どのタイミングで住み替えをするのかが、とても大切なポイントになります。
ある程度余裕が出てきたタイミングで老後について家族と話し合い、物件を決めたり購入したりしておくとスムーズな住み替えができるでしょう。
老後は賃貸住宅が借りにくい理由
老後に家を借りにくくなる主な理由は以下のとおりです。
- 収入が不安定になる
- 健康面が不安
一般的に、60歳もしくは65歳を超えると定年退職によって無職になる高齢者が多いです。なかには、決して十分とはいえない年金で生活をしなければいけない方も多く、収入面で不安が残ることから審査に通りにくくなります。
また、高齢者は健康面で不安を抱えている方も多く、とくに独身の方は孤独死リスクもあります。万が一のことを考えたとき、なかなか貸しにくいというのが貸主の本音です。
上記のことから、年齢が上がれば上がるほど賃貸借契約が難しくなります。そのため、できるだけ現役世代のときから住み替えを検討し始めたほうがよいでしょう。
戸建て?マンション?
老後の住み替え先は戸建住宅にするのか、マンションにするのかは自身の状況から適正に判断しましょう。
戸建住宅の場合は、家の規模は大きくなりますが物件価格や家賃が高額になる可能性があります。反対に、マンションであれば比較的小規模で物件価格や家賃を抑えられる物件はたくさんあります。しかし、災害発生時にエレベーターが止まった場合の避難経路など、老後であるからこその問題が発生します。
住みやすさやリスクを踏まえたうえで家族と話し合い、必要に応じて不動産会社に相談してみましょう。
できるだけ早めに不動産会社と相談しておく
住み替えを検討し始めたタイミングで、できるだけ早めに不動産会社に相談をしましょう。
とくに高齢者になると賃貸借契約を締結しにくくなるため、早い段階から不動産会社と関係を築き、契約を締結しておくことをおすすめします。
また、不動産会社によってはシニア向けの賃貸住宅を扱っているところもあります。もし、賃貸借契約の審査で断られてしまった場合は、シニア向け物件を取り扱っている不動産会社に相談をしてみるのもよいでしょう。
なお、現在持ち家を所有している方は、不動産売却を依頼する不動産会社にそのまま住み替え先のサポートも行ってもらうとスムーズに住み替えを行えるのでおすすめです。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。