老後の住み替えにはどれくらいの資金が必要?賃貸でも大丈夫?

若いころに選んだ住まいは、歳をとるにつれ、住みにくいところが目につくようになります。細かな段差があったり、トイレを利用するたびに階段を上り下りしたり、足腰が弱った高齢者には使いにくいことが多いのです。

そういった不便を解消するため、住まいのリフォームを検討するケースもありますが、思い切って高齢になってから住み替えるのもおすすめです。年齢に合った住まいを選べるため、日々の生活を快適にできます。

しかし、気になるのがかかる費用です。老後の住み替えやかかる費用などについて解説します。

老後の住み替えのすすめ

高齢になると車の運転がおぼつかない、長時間歩くことに負担を感じるなど、いままでのような日常生活が難しくなったりします。そのため、高齢になる前の、体力のある50代などで住み替えを検討する人が増えています。

老後に住み替えをおすすめする理由を見ていきましょう。

高齢者に合った住まいを選べる

高齢になると、いままで住んでいた住まいでは、日々の生活が難しくなるケースがあります。たとえば、段差が多いと足腰が弱くなったときに部屋の移動がしにくくなり、広すぎると部屋の掃除が大変になります。

住み替えるのであれば、段差の少ないフラットで、広すぎないコンパクトな高齢者用のマンションなどがよいでしょう。戸建てなら平屋だと2階への移動がなく、足腰の負担が少ないのでおすすめです。

断熱性・気密性が高い住宅にすれば、冬場のヒートショックのリスクが減らせるため安心して暮らせます。

利便性の高いエリアで暮らせる

住む地域を利便性の高いエリアに変えると、高齢になってからも自分の力だけで生活できます。バスや電車など公共交通機関が利用しやすいエリアなら、自動車を利用しなくても済み、買い物や通院などもしやすいでしょう。スーパーや病院などが歩いて行ける範囲にあると、日常生活にも困りません。

近年では核家族が増えており、子供と同居する世帯が減っているため、できるだけ自力で暮らしやすい環境が望ましいです。

老後の住み替えにかかる費用

老後になったら住みやすい住宅へ住み替えたいと思っても、費用が気がかりです。あまりにも高額だと、住み替え費用が老後の生活を圧迫してしまうおそれがあります。

老後の住み替えにかかる費用は、どれくらい必要なのでしょうか。

持ち家から持ち家へ

戸建てからマンション、あるいは2階建ての戸建てから平屋建てに住み替えるなど、持ち家を売却して新居を購入する場合には、次のような費用がかかります。

持ち家を売却する不動産仲介手数料(売買価額×3%+6万円 ※上限金額)印紙税(1,000万円超え5,000万円以下:1万円 ※令和6年3月31日までに作成の場合)譲渡所得税(短期譲渡所得:譲渡所得の39.63%、長期譲渡所得:譲渡所得の20.315%)
住宅ローンが残っている家を売却する抵当権抹消費用(約5,000円〜2万円 ※司法書士への手数料を含む)住宅ローン一括返済の手数料(約5,000円〜5万円 ※金融機関により異なる)
新居を購入する新居購入費用不動産仲介手数料(売買価額×3%+6万円 ※上限金額)印紙税(価格によって変動)税金(固定資産税・不動産取得税など)火災保険料、地震保険料

持ち家を売却するときと新居を購入する際には、不動産会社へ支払う仲介手数料が必要です。400万円を超える取引では、「売買価額×3%+6万円」で算出した金額が上限となります。印紙税も売却・購入時に作成する契約書に印紙を貼りつけ、消印することで納付します。

住宅ローンが残っている場合は、抵当権抹消費用も必要です。抵当権抹消登記に関する登録免許税額は、不動産1つにつき1,000円です。したがって、土地付き戸建て住宅を売却する場合は、土地と建物のそれぞれにかかり、2つの2,000円になります。通常、司法書士に代行してもらうため、手数料がかかります。住宅ローンを一括返済する際には手数料も支払います。

新居購入費用は、現在の家を売却した代金を当てることになりますが、売却代金が購入代金より低いと新たに住宅ローンを組む必要が生じます。なお、固定資産税や火災保険料などは購入後も毎年支払うことになります。

持ち家から賃貸住宅へ

持ち家を売却して賃貸住宅を借りる場合は、次の費用がかかります。

持ち家を売却する不動産仲介手数料印紙税譲渡所得税
賃貸住宅を借りる不動産仲介手数料初期費用(敷金・礼金・前家賃)家賃入居者用火災保険家賃保証料

賃貸住宅を借りるときにも仲介手数料がかかり、上限は家賃1カ月分に消費税がプラスされた金額です。初期費用として敷金・礼金を支払うケースや、前払いの家賃を支払うケースもあります。

近年では入居者用火災保険と家賃保証の加入を、合わせて求められるのが一般的です。火災保険料・家賃保証料は入居しているあいだは2年に一度、契約して支払うことになります。

入居費用は合計で家賃の4~5カ月分が相場といわれています。

賃貸では月々の家賃が発生するため、無理なく家賃を支払える物件を選びましょう。

高齢者向け住宅へ

高齢者住宅に入居するのも、ひとつの選択です。高齢者向けの住宅には、次のような種類があります。

高齢者向け住宅の種類内容費用
有料老人ホーム介護専用型・混合型月々の料金:約19万円
サービス付高齢者向け住宅賃貸形式の高齢者用住宅月々の料金:約14万円
シニア向け分譲マンション民間事業者によって販売・運営されるバリアフリーの分譲マンション新築:数千万円〜数億円中古:1,000万円〜

有料老人ホームは施設によって入居一時金が高額な場合もあり、介護専用型・混合型の2種類に分かれています。サービス付高齢者向け住宅は賃貸形式の高齢者用住宅で、初期費用を比較的安く抑えられるのがメリットです。

シニア向け分譲マンションは民間事業者が販売・運営する高齢者向けの住宅で、新築では数千万円以上するものがあります。

老後の住み替えは売り先行で進める

理想的な住み替えのスタイルは、家の売り買いを同時に進められることです。しかし、売り買いを同時に行うのは、そうそうできることではありません。

基本的に自宅を先に売却する「売り先行」で進めて、資金を確保したうえで住み替えることをおすすめします。

老後の住み替えの流れについて見ていきましょう。

売り先行なら資金を確保して住み替えられる

売り先行とは、自宅を先に売却してから新しい住まいを購入する方法です。売却代金を得てから新居を購入するため、住宅ローンを利用するとしても二重ローンになる心配がありません。資金計画が立てやすいのがメリットです。引っ越しも一度で済むため、手間や時間をかけずに済みます。

新居を先に購入していないため、売り急ぐ必要もありません。「この日までに売却しなければならない」という制限がないため、無理な値下げをしてでも売り急がずに済みます。

売り先行のデメリット

売り先行では住みながら売却活動をするため、購入希望者が内見で訪れたときは売主自身も対応しなければなりません。見知らぬ人が何度も訪問するため、人によっては気疲れしてしまうでしょう。

内見の対応をしたくない場合は、仮住まいが必要です。仮住まいをする場合、家賃を支払い、引っ越しも2回必要になるため、手間・時間・お金がかかることになります。

また、売却した家の引き渡し日までに新居へ入居できない場合も、仮住まいが必要になります。売り買いがちょうどよいタイミングで行えればよいのですが、なかなかそうもいきません。

売り先行の場合は、仮住まい費用がかかる可能性を考慮しておきましょう。

住宅ローンが残っていたら住み替えローンを利用する

住宅ローンの残債がある場合は、売却と同時に住宅ローンの残債を一括返済するのが原則です。しかし、住宅ローンが残ったままでも、住み替えローンを利用することで自宅の売却は可能です。

住み替えローンは、売却する家の住宅ローンの残債と新居の購入資金をあわせて借り入れられるローンです。支払いを一本化できるため、二重ローンを避けられます。

ただし、住み替えローンは借入額が高額になるため審査条件が厳しく、取り扱いしている金融機関も多くないのが欠点です。さらに金利が通常の住宅ローンより高く、必ず利用できるとも限りません。そのため住み替えローンは、よく検討してから利用しましょう。

住み替え先の環境に注意する

住み替え先を選ぶときは、どういった環境なのかをよく調査しておきましょう。

しっかり調べておかないと、安くない費用をかけたのにも関わらず、環境が自身に合わないということもありえます。

意外に多いのが、田舎への移住に失敗するケースです。地域に溶け込めず孤立してしまうこともあるため、地域の状況を入念にリサーチしてください。