販売価格が1億円を超えるマンション、通称「億ション」。億ションなどの高級マンションは誰もが憧れる住まいであるものの、売却時には買い手がつきづらいという欠点があります。億ションが売れない理由と売却時のポイントを解説します。
目次
億ション・高級マンションが売れない理由
都心部の新築マンションは、販売を開始する前の設計段階で完売することもあり、非常に人気があります。そのため、売却するときもすぐに買い手がつきそうですが、残念ながら苦戦を強いられることも多いです。億ションなどの高級マンションは、なぜ売れないのでしょうか。売れない理由について解説します。
高所得者は新築物件を好む
億ションなどの高級マンションを購入する層は年収が高く、住まいにこだわりを持っている人が多いです。そのため、さまざまな高級マンションを比較検討し、充分に納得したうえで購入の決断をします。また、選べるマンションの選択肢が多く、可能な限り中古ではなく新築を探す傾向にあります。
当然のことながら一度購入した億ションは、再販される時点で「中古マンション」という扱いになり、不動産のポータルサイトからも新築マンションのカテゴリーには入りません。
つまり、億ションなどの高級マンションを購入できるターゲット層は新築マンションを希望していることが多く、中古の億ションは、第一希望から外れてしまいます。このような理由から億ションは売却しにくく、販売が長期化しやすいのです。
妥協して選ぶ人はいない
億ションなどの高級マンションを購入できる高所得者層は、マンションを選択するときに妥協をしません。
一般的に、不動産購入者は広さや立地、築年数などといった希望条件に優先順位をつけます。そのうえで予算などを考慮し、優先順位の低いものを妥協し、購入するマンションを選別していきます。
億ションを購入できる高所得者層は、予算の設定が高いために妥協をしない傾向にあります。このように、本当に気に入った物件でなければ購入の決断をしないという特徴があることも億ションが売りづらい要因のひとつです。
導入されている設備が万人受けするとは限らない
億ションには、コンシェルジュ以外にもフィットネスジムや保育施設、サロンなどの設備が利用できますが、これらはすべての住民にとって必要というわけではありません。
しかし、マンションは使わない設備であっても維持管理のために管理費を支払う必要があります。高級マンションとしてのサービスが「中古マンション」の売却をする際の足枷になってしまうケースは多く、億ションの売却においても同じことがいえるでしょう。
ちなみに、東日本不動産流通機構の「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」によると、2021年の東京都区部の平均管理費は月額13,815円、平均修繕積立金は月額10,736円です。2023年1月時点に販売されている億ションの平均管理費と平均修繕積立金は以下のとおりです。
物件名(最寄り駅/平米数) | 販売価格(万円) | 管理費(円) | 修繕積立金(円) |
Brillia日本橋三越前(新日本橋駅/72.59㎡) | 12,000 | 20,800 | 11,790 |
センチュリーパークタワー(月島駅/82.26㎡) | 13,800 | 28,400 | 11,110 |
パークコート千代田一番町(半蔵門駅/62.71㎡) | 17,800 | 26,400 | 7,840 |
このように、修繕積立金は大きな差は見られませんが、管理費は中古マンションの平均を大きく上回ります。
売りやすい億ション・高級マンションの特徴
基本的に億ションなどの高級マンションは売れにくいと解説しましたが、売り出してすぐに買い手が見つかるケースもあります。なかには買い手が複数名見つかり、販売価格よりも高く売却ができる「買いあがり」が起きるケースもあります。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。その理由について解説します。
エリアの需要が高い
億ションを所有することは一種のステータスです。そのため、せっかく億ションを買うなら
港区や渋谷区といった資産価値の高いエリアで買いたいと考える人は多いです。
一方で、億ションが建つような都心のエリアであっても、高所得者層にとっては資産価値があまり高いとはいえないエリアもあるでしょう。
このように、億ションを購入しステータスを持ちたい人にとってはエリアの需要が高いという点は非常に重要です。そのため、港区や渋谷区などの希少エリアであれば中古の億ションといえど、早期売却できる可能性は高いといえます。
タワーマンションである
タワーマンションの定義はありませんが、一般的に20階を超えるような高層マンションはタワーマンションと総称されます。
億ションなどの高級マンションは、タワーマンションであるイメージがあるかもしれませんが、低層マンションであっても販売価格が億を超えるようなマンションは多く存在します。
億ションの購入を検討する層は高階層を希望していることが多く、タワーマンションを前提条件としているケースが多いです。また、周辺に同じようなタワーマンションがいくつか建っているような普遍性の高いマンションより、そのタワーマンションがより目立つような希少性の高いものであると、高所得者層に好まれやすく売却がしやすいでしょう。
都内の駅直結マンションも需要が高い
「品川グランドコモンズ」や「ジェイシティ東京」といった駅直結型の大規模再開発地域にあるタワーマンションは、高値売却と早期売却を両立できる可能性が高いです。これらは資産価値が落ちにくく、保有しているだけで差別化を図ることができます。
このように、再開発地域にある億ションは需要が下がりにくいため、どのタイミングであっても早期売却できるチャンスがあります。
億ションを売るためには担当者選びが重要
億ションを売却するためには担当者選びが非常に重要です。担当者選びの重要性や失敗しない担当者の選び方を解説します。
億ションを取り扱える担当者は少ない
そもそも億ションの売却対応ができる担当者は少ないです。億ションの売却には、高い不動産知識や経験、そして経営者や有名人などの高所得者層から頼られるような人格者である必要があります。
また、住まいのトレンドは変化しやすく、2023年現在では「サウナ」や「シミュレーションゴルフ」「ワークスペース」などの設備が完備されているマンションが人気です。高所得者層に物件を紹介するために、このようなトレンドにも敏感である必要があります。
このように、億ションには億ション特有の販売ノウハウがあるため、経験が豊富な担当者を見極めなければいけません。
高所得者層のネットワークを持つ担当者を選ぼう
億単位の不動産を売ったり買ったりする高所得者層は、贔屓にする不動産担当者を抱えていることがほとんどです。つまり高所得者層が不動産を売るときや買うときは、まずその担当者に連絡をします。
このような、高所得者層から贔屓にされている担当者に売却を依頼できれば早期売却の可能性が高まります。高所得者層の顧客を多く抱えている担当者に売却の依頼ができれば、ニーズにあった顧客に物件を紹介してもらうことができ、早期売却につながります。高所得者層に広いネットワークを持つ担当者であれば、積極的に売却の依頼をしてもよいでしょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。