管理会社などによって管理、運営されていることもあり、清潔で快適な生活を送れることがマンションのメリットです。しかし、戸建てには戸建てのメリットがあり、住み替えたいと考える人もいるでしょう。
マンションから戸建てへ住み替えるときに、あらかじめ押さえておきたい注意点などを解説します。
マンションから戸建てへ住み替えるメリット
マンションから戸建てに住み替えした場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットを5つ紹介します。
階下、隣室への配慮が必要ない
マンションは共同住宅のため、気をつけていても生活音が気になることがあります。小さな子どもがいる場合はなおさらです。走り回る足音や泣き声に気を使い過ぎて、ストレスを抱えてしまうことも少なくありません。
その点、戸建てであれば隣家とある程度離れているため、必要以上に神経を使う必要がなくなります。常識的な騒音への配慮は必要ですが、戸建てへ住み替えることで、子どもが遊んでいる様子を笑顔で見守れるでしょう。
土地の利用価値が高い
区分所有者全員で敷地を持分で所有するマンションに比べ、戸建ては所有する土地面積が大きいことが特徴です。経年により建物の資産価値がほとんどなくなったとしても、土地の価値は残るうえ、将来地価が上昇すれば資産価値も上昇します。
戸建ては土地建物を単独で所有するため家を建て替えやすく、また建物を解体して更地の状態でも売却できるため、利用価値が高いこともメリットといえます。たとえば更地にして駐車場として貸し出すことや、アパートを建てて家賃収入を得ることも可能です。
間取りや設備の自由度が高い
マンションも管理規約に定められた範囲内であれば、リフォームやリノベーションは可能です。しかし、共用部分や隣家に影響するような改装はできません。その点、戸建てであれば法律に問題のない範囲であれば自由に間取りを変更したり、設備を入れ替えたりできます。
またマンションは、外観や共用部分に手を加えられません。しかし、戸建ては外観や外構も自由に変えられるので、とくにDIYが好きな人にとっては大きな魅力となるでしょう。
庭でバーベキューやペットとの時間を楽しめる
マンションの専用庭やベランダでは、火気の使用を禁止されているためバーベキューなどはできません。また管理規約により、専用庭やベランダ、敷地内での喫煙が禁止されていることがほとんどでしょう。
ペット飼育可のマンションであっても、敷地内はもちろんベランダで遊ばせることも禁止していることが多く、鳴き声などで肩身の狭い思いをしている人も少なくありません。
戸建てであれば、庭でバーベキューや花火を自由に楽しめ、ペットも自由に遊ばせられます。もちろん鳴き声の配慮は必要ですが、マンションほどではないでしょう。
管理費や修繕積立金がなくなる
マンションは月々管理費や修繕積立金を払うことになります。車やバイク、自転車を所有していれば、駐車場や駐輪場代もかかります。
戸建てに住む場合、維持や管理に費用がかからないわけではありませんが、マンションほどはかかりません。住宅ローンが同額であれば、戸建てのほうが出費を抑えられるでしょう。
戸建てへ住み替えるときの注意点
マンションから戸建てへの住み替えにはさまざまなメリットがあるものの、デメリットもあります。住み替えてから後悔しないためにも、注意すべき点は事前に押さえておきましょう。
セキュリティ対策は自分で行う
マンションは管理人が訪問者の受付や共用部分の巡回を行っていることが多く、またオートロックや防犯カメラも設置されていたりします。
一方、戸建てはマンションに比べて不審者の侵入経路が多く、警備会社のホームセキュリティなどを契約していないかぎり、防犯対策は万全とはいえません。戸建てに住む場合は、セキュリティ対策は自ら行うものと心得て、日ごろから防犯意識を高めておく必要があるでしょう。
建物の修繕は自己管理
マンションだと管理会社が建物の維持管理や、清掃を請け負っていることがほとんどです。区分所有者は管理組合員として管理にたずさわりますが、基本的にはノータッチです。
戸建てに住む場合は、日々の清掃はもちろん、管理や修繕は自分でする必要があります。また将来かかる費用を想定し、自分ごととして計画しなければなりません。マンションのような気軽さはないため、注意しましょう。
近所づきあいが必要になる
マンションは戸建てに比べると、隣家との関係性が希薄だといわれています。また自治会への加入が免除されていることも多く、近所づきあいはあまり必要ではありません。
一方戸建ては、自治会や地域の行事、お祭りなど、近所づきあいが必要になることが多く、人付き合いを負担に感じる人にとっては人間関係が重荷に感じるかもしれません。
ゴミは回収日にしか捨てられない
戸建てに住む場合、ゴミは毎日捨てられないと考えたほうがよいでしょう。今現在24時間ゴミが捨てられるマンションやディスポーザーが備わった住戸に住んでいる人にとっては、引っ越し後にゴミの処理や保管に苦労する可能性があります。
戸建てに住む場合は、回収日に合わせてゴミ出しすることになります。場合によっては、生ごみ処理機やコンポストの採用を検討しましょう。
交通や生活の利便性が劣る可能性が高い
マンションは駅の近くなど、利便性が高い場所に立地していることが多いです。駅の近くであればスーパーや商業施設も近くにあるため、日常の買い物に苦労することはまずありません。
しかし、戸建ては予算にもよりますが、駅から近い場所で見つけることが難しく、マンションに比べて交通や生活の利便性が劣ることが多いです。通勤にバスを利用する場合は、通勤や帰宅時間帯のバスの本数や所要時間を必ず確認しましょう。
マンションから戸建てへ住み替える方法
マンションから戸建てへの住み替えを検討する場合、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。戸建ての購入を考えるときに大切な、5つのポイントを紹介します。
査定を受けてマンションの価格を調べる
マンションの売却を検討するときは、まず不動産会社の査定を受けて、マンションの価値を知ることが重要です。売却想定価格がわからなければ、資金計画を立てられません。
また、マンションが売れるだろう金額と住宅ローンの残高と比較し、売却によって手もとにいくら資金が残るのか確認しましょう。住み替えには、仲介手数料や税金など諸費用がかかります。資金計画の計算が難しいと感じるときは、不動産会社に相談することをおすすめします。
売り先行と買い先行にするのかを決める
住み替え方法は、主に2つあります。自宅マンションを売却してから新居を購入する「売り先行」と、新居を購入してから自宅を売却する「買い先行」です。
売り先行は売却価格が確定してから新居を購入するため、堅実な住み替えをしたい人に向いていますが、仮住まいをする必要があります。
買い先行は仮住まいをする必要がなく、空き家の状態で売り出せますが、住宅ローンが残っている場合は住み替えローンなどを組む必要があります。
住宅ローンの残高や年収、売却するマンションの条件などによっても、どちらが向いているかは変わってきます。住み替えの流れを把握し、慎重に検討しましょう。
住宅ローンの残債は売却代金で完済が必要
住宅ローンが残っていてもマンションを売り出すことは可能ですが、買主へ所有権移転する前に住宅ローンを完済しなければなりません。
流れとしては、マンションの残代金決済日に買主から受け取った売買代金で住宅ローンを完済し、その日のうちに司法書士へ所有権移転登記を依頼することになります。
オーバーローンなら住み替えローンを利用する
売買価格よりも住宅ローンの残債が大きい場合(オーバーローン)は、自己資金を充当するか、住み替えローンを組むなどして対処する必要があります。
住み替えローンは年収に対する返済比率が高くなるため、審査が厳しくなります。したがって誰でも組めるわけではありません。利用を検討する場合は、金融機関へ早めに相談しておきましょう。
住み替えにかかる諸費用や税金を把握する
住み替えには諸費用がかかります。売却時と購入時には仲介手数料がかかり、売買契約書には印紙を貼って印紙税を納める必要があります。
また、売り先行にする場合は、仮住まいの家賃や敷金などがかかります。住み替えには数百万円単位の諸費用がかかるため、どのくらいかかるのか把握してから、資金計画を立てるようにしてください。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。