さまざまな事情からいま住んでいる家を売却して、新居に住み替える必要が生じることがあります。いまの家の住宅ローンを返済中の場合は、簡単にはいかないかもしれません。
住宅ローンの残債があるときに、どのように住み替えたらよいのかを解説します。
住宅ローンの残債があっても住み替えるには
住宅ローンの残債がある状態で住み替えるには、住宅ローンを完済する必要があります。しかし、住宅ローンを完済するのは簡単ではありません。
住宅ローンの残債があるうえで、住み替える方法について紹介します。
家の売却代金で住宅ローンを完済する
住宅ローンの残債があっても住み替えるには、いままで住んでいた家の売却代金で住宅ローンを完済する方法があります。ほとんどの人が新居へと住み替える場合、これまでの家を売却します。もっともポピュラーな方法といえるでしょう。
しかし、そもそも家を売却できるかどうか、そして売却代金がどのくらいになるのかがわからないと、住宅ローンを完済できるかどうかがはっきりしません。
そのため、どれくらいの価格で売却できるのか、不動産会社に査定をしてもらう必要があります。
<h3>不足分がある場合は自己資金で補てん
家を売却して得た代金だけで住宅ローンを完済できない場合は、不足分を自己資金で補てんしましょう。
住宅の売却代金より住宅ローンの方が多いことをオーバーローンといい、この状態だと住宅ローンの残債があって完済できません。住宅ローンの完済ができなければ、家の売却ができないため住み替えられません。そのため、住宅ローンを完済できるように、不足した分を自己資金で補てんするのです。
これにより抵当権を抹消できるため、家の売却と新たな住宅ローンを組めるようになります。
ただし、新居への引っ越し費用や家具・家電の購入など新しい家へ住み替えるときにも資金が必要になります。それらの費用も自己資金で補えるのかも把握しておきましょう。
自己資金が不足する場合は住み替えローンを利用する
住宅の売却代金や自己資金による補てんでも住宅ローンが完済できない場合は、住み替えローンを利用しましょう。住み替えローンとは、既存の住宅ローンの残債と新居の購入費用をまとめて借り入れできる住宅ローンです。
既存の住宅ローンの残債も住み替えローンで借り入れることで完済できます。そのため、抵当権の抹消もスムーズに進められます。
住み替えローンを利用するには、既存の住宅ローンの残債が確定しなければなりません。そのため、住宅ローンの残債がどのくらいなのか、家の売却代金がどのくらいになるのかを把握する必要があります。
住み替えローンを利用する流れ
住宅ローンの残債がある状態で住み替えするには、住み替えローンの利用がおすすめです。
しかし、一般的な住宅ローンとは異なり、住み替えローンだと住宅の売却と購入を同時に進めなくてはなりません。そのため、どういった流れで住み替えローンを利用するのかを、事前に把握しておくことが大切です。
ここからは、住み替えローンを利用する流れについて、詳しくみていきましょう。
住宅ローンの残債を調べる
まずは、住宅ローンがどれだけ残っているのか調べましょう。どのくらい残っているのかがわかれば、これからの資金計画を立てられます。
そのうえで、家の売却代金で完済できるのか、自己資金は必要なのか、住み替えローンを借り入れる場合は、どれくらい必要になるのかを考えます。
住宅ローンの残債は金融機関から定期的に残高証明書が送付されるので、そちらで確認しましょう。もし手元に残高証明書がなくても、金融機関に問い合わせると再発行してもらえます。
不動産会社に家の査定を依頼する
次に不動産会社に家の査定を依頼します。査定は複数の不動産会社に依頼して、各社の査定価格を比較するのがおすすめです。
また、住み替えローンを利用するときは、家の売却と購入のタイミングを合わせなければなりません。そのため、不動産会社とのコミュニケーションが重要になります。
トラブルなく進めるために、信頼関係を築ける不動産会社を見つけて依頼しましょう。
新居の購入金額の概算を決める
家の売却とともに、新居の購入も同時に進めます。購入するのが中古住宅や建売住宅であれば、購入金額の概算はすぐにわかります。しかし、注文住宅の場合は、購入金額が計画段階から変動することがあります。それでも、ある程度予算を決めておきましょう。
また、注文住宅だと完成までどのくらいの時間がかかるのかが、住み替えローンを契約するタイミングに関わってくるため、先に把握しておきましょう。
住み替えローンの審査を申し込む
家の売却と新居の購入、それぞれの概算金額がまとまってきたら、住み替えローンの仮審査を申し込みましょう。
仮審査の申し込み段階で借り入れ希望額の記載が必要になりますので、既存の住宅ローンの不足分と新居の購入金額の合計が、住み替えローンで借り入れする希望金額になります。もし自己資金を一部入れる場合はその金額を差し引いた金額が借り入れ希望額です。
仮審査に通ると本審査へ進み、売却する家の売買契約書類や新居の売買契約書、返済予定表などの書類が必要になりますので、あらかじめ準備しておきましょう。
融資を受けたら住宅の売却、購入を行う
本審査が無事に通ったら。金融機関から融資が受けられます。融資の実行、住宅の売却・購入を同日に揃えるため、金融機関や不動産会社とも日程のすり合わせをしておきましょう。
住宅の売却・購入が済むと、住み替えローンがスタートします。ここまで滞りなく進めていくには、各手続きの流れを理解し、必要な書類等を事前に準備することが大切です。
また、売却・購入・融資の実行を同日に進めていくために、段取りをきちんと整えておけばスムーズに手続きを進められるでしょう。
住み替えローンを利用するときの注意点
住み替えローンを活用できると、住宅ローンの残債があっても住み替えが可能になります。
しかし、住み替えローンを利用するときは、通常の住宅ローンとは異なる注意点があります。住み替えローンを利用するときに気をつける注意点について、みていきましょう。
通常の住宅ローンより金利が高い
住み替えローンは、一般的な住宅ローンと比べると金利が高く設定されています。一般的に住宅ローンは優遇金利が適用されているため、低金利で借り入れられるのです
しかし、住み替えローンはそもそもの金利が高いうえに、優遇金利も適用されないため、利息支払額が多くなります。そのため、住宅ローンの支払総額も増加し、月々の返済が以前よりも増えることに注意が必要です。
住み替えローンを利用する前に、シミュレーションなどで毎月の返済額がどのくらいになるのかを確認しておきましょう。
審査が厳しいため否決になることがある
住み替えローンは借入額が通常の住宅ローンに比べて大きいため、年収に対する1年間の返済額の割合(返済比率)が上がり、審査に通らないおそれがあります。
返済比率が年収の30%を超えるようであれば、一般的に審査が通りにくくなります。自己資金で充当して借入額を下げるなど、審査の対策も必要になるでしょう。
こういった、住み替えローンの審査を通すための資金計画も大切です。
以前よりも借入額が増える
住み替えローンは売却代金の充当はあるものの、住宅ローンの残債に新たな住宅の購入費用を加えた金額を借り入れることになります。借入額が以前よりも増えているため、住み替えローンの契約後は、ほかのローンを借り入れしようとしても審査が通らないおそれがあります。
また、借入額が増えていることから毎月の返済額が増えたり、返済期間が延びたりして、返済による生活の負担が大きくなります。
<h3>売却する際の不動産会社はよく比較して選ぶ
住み替えローンを利用するときは、家の売却代金が借入額に影響するため非常に重要です。
家の売却代金は仲介する不動産会社の影響を受けるため、1社だけでなく複数社に査定してもらって話を聞くようにしましょう。不動産会社を比較することで、どの会社が信頼できるのかを判断できます。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。