新居を購入していまの家から住み替えようとすると、どうしても住宅ローンが二重に発生してしまいます。住宅ローンを二重に借りることはできるのでしょうか。そして、住宅ローンを二重に借りても大丈夫なのでしょうか。
住宅ローンが二重になってしまうケースと注意点について解説します。
目次
住み替えで住宅ローンが二重になっても大丈夫?
住宅ローンを組んで住んでいる家から新しい家へ住み替えるとき、新しく住宅ローンを組む必要が生じます。すでに住宅ローンを支払っている状態で、新しく住宅ローンを借りること自体は可能です。しかし、負担は決して軽くはないため、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
住み替えにともない、二重に住宅ローンが発生してしまうケースについて解説します。
買い先行だとローンが二重になることも
これまで住んでいた家を売却してから、新居を探して購入する方法を売り先行といいます。逆に住んでいる家を売却する前に新居を購入する方法を、買い先行といいます。
売り先行であれば売却代金を住宅ローンの返済や、新居の購入資金にあてられますが、買い先行では新居を購入する資金が必要です。買い先行で住み替える場合は、いまの住まいの住宅ローンと新たな住宅のローンで二重に住宅ローンを組む必要があります。
このように家の購入が先行すると住宅ローンが二重になってしまうことがあり、売りが先行すると住宅ローンを全額返済後に新たに住宅ローンを組む形になります。
ダブルローンとは
ダブルローンとは、二重にローンを契約することを指します。ダブルローンになるケースには、住宅ローンを支払いながら車の購入や子どもの教育資金をローンで賄うために契約する場合があります。
もうひとつのケースには、買い先行で住み替えを行う場合があります。既存の住宅ローンに加え、新たな住宅購入のために住宅ローンを別にもうひとつ契約するため、住宅ローンが二重になります。
ダブルローンで住み替える条件とメリット・デメリット
ダブルローンでの住み替えは誰でもできるのではなく、利用できる条件に合致する必要があります。
ダブルローンが利用できる条件とはどのようなものでしょうか。そしてダブルローンを利用して住み替えることのメリットとデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。詳しくみていきましょう。
ダブルローンを利用する条件
ダブルローンを利用するには、まず返済比率がオーバーしないことが大切です。一般的にはふたつの住宅ローンを合わせても、1年間の返済額が年収の30%を超えない範囲であれば借入できます。
たとえば、年収500万円であれば年収の30%だと150万円が住宅ローンの返済として充当できる最大の金額になります。それを月換算で考えると、150万円÷12カ月で12万5,000円です。
現在の住宅ローンに65,000円支払っているとします。
年収500万円×返済比率30%=150万円
150万円÷12カ月=12万5,000円
12万5,000円−65,000円=60,000円(新たに借入する住宅ローンの月々の返済額)
残りの60,000円を新たな住まいの購入資金として1%の金利で返済期間が35年だった場合、新たに借入できる住宅ローンの金額は約2,125万円です。
月々の返済額60,000円、適用金利1%、返済期間35年…約2,125万円
また、ダブルローンを組むには、ローン完済時の年齢が80歳を超えないことも条件となります。住宅ローンでは完済時の到達年齢に制限を設けており、それを超える借入年数の場合は審査で引っかかることが多いです。
ほかにも既存の住宅ローンの返済を求められたときに、返済できる預貯金や土地建物といった資産を保有しているかどうかも利用する条件になります。
つまり、ダブルローンとは返済能力内での新たな借入であり、既存の住宅ローンの返済を求められても対応できる資産を保有しているのであれば、ダブルローンを利用できるといえるでしょう。
ダブルローンのメリット
ダブルローンのメリットは買いが先行になるため、現在の家から新たな家へは仮住まいをせずに引っ越せる点です。
現在の家に住んでいるあいだに新たな家を建てるため、仮の住まいを探したり、そのために複数回引っ越したりしなくてもよいため、費用や時間を効率的に使えます。
また、これまでの家を売却するときにも、売却に焦る必要がないため、自分のペースで進められます。
ダブルローンのデメリット
ダブルローンには、住宅ローンを新たに借入するため、トータルの借入額が増加するデメリットがあります。既存の住宅ローンに加えて新たに住宅ローンを組むので、毎月の返済額も増加するのです。住宅ローンへの返済にあてる金額が増えたことで、生活費などがひっ迫するおそれがあります。
また、住宅ローン控除は住んでいる家を対象にしているため、新居へ引っ越すとこれまで住んでいた家は住宅ローン控除の対象外になります。
ダブルローンが適しているケース、適さないケース
ダブルローンが適しているケースとしては、ある程度の資産を保有している、もしくは年収が高めの人の利用が考えられます。毎月の返済金額が大きく増えるため、ダブルローンで返済をしていても生活に支障をきたさない程度の収入が必要です。
ダブルローンが適さないケースとしては、もともと住んでいた家を売却しても負債が残る、これからも安定して収入が増える見込みがない場合があります。家を売却しても住宅ローンを完済できない場合、自己資金で不足分を補わなくてはなりません。
また、ダブルローンになるときは、返済比率が審査のときに重要視されます。いまの住宅ローンで返済比率が高かったり、現状より収入が増える見込みがなかったりすると、そもそも審査をとおらないと考えられます。
住み替えのダブルローンは避けた方がいい
ダブルローンは負担が重くなるうえに利用できる人が限られているため、住み替えでダブルローンになるのは避けたほうがよいでしょう。
そのほかにも、ダブルローンを避けたほうがよい理由があります。では、ダブルローンを避けて住み替えるには、どうすればよいのでしょうか。
ダブルローンは生活を圧迫するリスクがある
ダブルローンは月々の住宅ローン返済額が大きくなるため、生活に支障をきたすおそれがあります。
ダブルローンを組むということは、住宅2軒分の住宅ローンを抱えるということです。そのため、もともとの資産が多い、収入が多いという人でなければ、負担が大きくなりすぎるでしょう。すでに住宅ローンの返済の負担が大きいという人は、それ以上の負担は生活を圧迫するリスクが高いため、ダブルローンを避けるべきです。
ほかのローンの借入ができなくなるリスクがある
ダブルローンで住宅ローンの借入をすると、返済比率の上限ギリギリまでローンを利用していることもあります。そのため、車の購入や子どもの教育資金にローンを新たに借入しようと思っても、審査がとおらないおそれがあります。
車はともかく教育資金は子どもの進路に関わるため、教育資金向けのローンが利用できないリスクは大きいです。
ダブルローンはこういったリスクがあることを理解したうえで、利用するかどうかを検討しましょう。
売り先行ならダブルローンは避けられる
ダブルローンを避けて住み替えるのであれば、売り先行を選択しましょう。売り先行は現いまの家の売却代金で住宅ローンを返済、新居の購入資金にあてる住み替え方法です。住宅ローンを完済してから新しく住宅ローンを組むため、売り先行であればダブルローンを避けられます。
なお、売却額が住宅ローンの残債より多ければ問題ありませんが、少ないと残りを自己資金で補うか、不足分を別途借入する必要があるでしょう。
住み替えローンで住宅ローンを合算できる
住み替えローンは家の売却代金で住宅ローンを完済できなかったとき、不足分と新居の購入に必要な費用をまとめて借入できるローンです。
住み替えローンを利用するには、家の売却と購入を同時に行わなくてはなりません。しかし、住み替えローンを利用することで、住宅ローンを一括返済できなかった分を自己資金で補う必要がなく、月々の返済もダブルローンより軽減することが可能です。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。