家の住み替えは、かかる税金がいくらになるのか不安に感じる人も多いでしょう。引っ越しをしたり家具をそろえたりと出費が増えるタイミングでもあるので、あらかじめ納付する税金について準備をしておくことが大切です。
家を売却・購入する際にかかる税金の種類や適用できる特例、控除制度などを解説します。
目次
家を売却する際にかかる税金とは?
家を売却する際にかかる主な税金は、印紙税、登録免許税、譲渡所得税の3つです。
印紙税とは、家を売却した際に発行される契約書や領収書などにかかる税です。現在は租税特別措置法により、記載金額が10万円を超える不動産の譲渡契約書は、令和9年3月31日までの印紙税率が引き下げられています(※1)。
登録免許税は不動産の名義変更(登記)にかかる税金のことです。住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消するために納める必要があります。登録免許税は不動産1件ごとにかかるので、一般的な戸建ての家のように、土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合は「不動産2件分」の税金を納めます(※2)。
譲渡所得税は、不動産を売却した際に生じた利益に対して課される税金で、売却益(売却価格から物件の購入額や売却にかかった費用を差し引いた額)に応じて、所得税や住民税を納める必要があります(※3)。
それぞれの税金の詳細は以下の表のとおりです。
かかる税金 | 発生するタイミング | 概要 |
---|---|---|
印紙税 | 家の売却契約時 | 不動産の売買契約書に記載する代金に応じて、貼らなければならない収入印紙代が異なる |
登録免許税 | 家の抵当権を抹消するとき | 不動産1件ごとに1,000円 |
譲渡所得税 | 家の譲渡を行った年の翌年の確定申告時 | 家の所有期間が5年以下は短期譲渡所得税率(合計):39.63% 家の所有期間が5年超は長期譲渡所得税率(合計):20.315% |
※1 参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
※2 参考:法務省民事局「住宅ローンを完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続きのご案内)一戸建て編」
※3 参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
家を売却して損が出たら損益通算をしよう
家を売却する際に売却益が出ず赤字になってしまったら、損益通算をして節税対策を行いましょう。
損益通算とは、給与所得などほかの所得から損失分を差し引いて、課税対象の所得を減らせる制度です。一般的に、減税の対象になるのは所得税と住民税です。
赤字が高額になってしまったら、繰越控除を行い翌年以降も損益通算できます。これらの制度を利用するには確定申告を行う必要があるため、忘れずに準備しましょう。
家を売却する際に適用できる特例や控除制度
家を売却する際に適用できる特例や控除制度をうまく利用すれば、節税をしつつ家の住み替えができます。ここでは主な特例や制度を3つ紹介します。
居住財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
3,000万円の特別控除の特例は、家を売却した際の譲渡所得のうち3,000万円までは課税対象から控除できる制度です。この特別控除を受けるための要件は以下の3つなどです。
- 自分が居住する家を売却、または家と一緒に土地を売却していること
- 売却相手が夫婦や親子など特別な関係ではないこと
- 家を売却する前年・前々年度に本特例もしくは、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受けていないこと
※参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
特定居住用財産の買い換え特例
特定居住用財産の買い換え特例は、令和5年12月31日までに持ち家を売却して住み替え用の家を購入した際に、売却した家の譲渡利益の課税を繰り延ばせる特例です。前述した3,000万円の特別控除との併用はできません。
買い換え特例を受けるための要件は以下の3つなどです。
- 売却相手が夫婦や親子などの関係ではないこと
- 売主が10年以上居住していて、加えて家を売却した年の1月1日の時点で家と土地の所有期間が10年を超えていること
- 1億円以下で売却していること。
※参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
軽減税率の特例
軽減税率の特例は、一定の要件を満たしている場合に譲渡所得の税額が低くなる制度です。
家を売却するときの軽減税率の計算方法は以下のとおりですが、平成25年から令和19年までは「復興特別所得税」として各年の所得税の2.1%を上乗せして申告・納付を行うことになっています(※)。
- 譲渡所得は6,000万円以下:譲渡所得額×10%
- 譲渡所得が6,000万円を超える:(譲渡所得−6,000万円)×15%+600万円
また、特例の適用を受けるためには、以下の要件すべてに当てはまる必要があります。
- 日本国内にある自分が住んでいた家を売却、または家と土地を売却していること
- 売却相手が夫婦や親子など特別な関係ではないこと
- 家を売却した年の1月1日の時点で所有期間が10年を超えていること
- 売却した年の前の年及び前々年に軽減税率の特例を受けていないこと
- 売却した家や土地についてほかの特例を受けていないこと
※参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
家を購入する際にかかる税金とは?
家を購入する際にかかる主な税金は、印紙税、登録免許税、不動産取得税、消費税、固定資産税、都市計画税、贈与税の7つです。それぞれの詳細は以下の表の通りです。
かかる税金 | 発生するタイミング | 概要 |
---|---|---|
印紙税 | 家の購入契約時 | 不動産の売買契約書に記載する代金に応じて、貼らなければならない収入印紙代が異なる |
登録免許税 | 所有権移転の登記を行うとき | 固定資産税評価額×定められた税率 ※土地の場合や建物の場合、また中古住宅なのか新築住宅なのかによっても税率が異なる |
不動産取得税 | 家の購入後半年〜1年半程度 | 固定資産税評価額×4% 令和6年3月31日までは、土地と住宅は軽減税率3%を適用(※1) |
消費税 | 家の支払い時 | 不動産会社から購入した場合に10%発生するが個人から購入する場合はなし |
固定資産税 | 毎年1月1日(納付通知書は4~5月に届く) | 固定資産税評価額×税率(標準税率は1.4%だが、自治体によって異なるため要確認) |
都市計画税 | 毎年1月1日(納付通知書は4~5月に届く) | 固定資産税評価額×税率(上限0.3%) |
贈与税 | 不動産を贈与されたとき | 直系の親族からの贈与は最大1,000万円まで非課税 直系の親族でない場合は、基礎控除額の110万円を差し引いた額に贈与税を課税する |
贈与税は、不動産を贈与される場合にのみかかる税金で、贈与側との血縁関係の有無や住宅性能などで非課税金額や税率が変わります。贈与税は、申告や納税を忘れてしまうと後に延滞税が発生するケースもあるので、注意が必要です。
※参考1:総務省「不動産取得税」
※参考2:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
家を購入する際に適用できる特例や控除制度
家の売却時と同様に、家を購入する際も適用できる控除制度があります。ここでは家の購入に適用できる住宅ローン控除を紹介します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、住宅ローン残高の0.7%分の税額を所得税から控除できます。適用期間は、購入した家が新築住宅だと13年間、中古住宅の場合は10年間です。
住宅ローン控除を受ける際の主な要件を一部抜粋して紹介します。
- 居住用の家であること
- 控除を受ける年の合計所得が2,000万円以下であること
- 家の床面積が50㎡以上であること
- 10年以上のローンがあること
- 中古住宅の場合は1982年1月1日以降に建築されたもので、耐震基準に適合するもの
令和6年12月31日までに建築確認を済ませて合計の所得額が1,000万円以下の場合、新築住宅の床面積は40㎡以上に緩和されます(※)。また、令和6年から省エネ基準を満たさない新築住宅を購入すると住宅ローン減税が受けられなくなるため、注意が必要です。
※参考:国土交通省「住宅ローン減税」
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。