老後に戸建て住宅に住み替えるメリットは、自分の好みを反映しやすいことです。デメリットは、維持費がかかることです。
老後に戸建に住み替えるメリットや、老後の住み替えの選択肢を詳しく解説します。
老後に住み替えるならマンション?戸建て?
老後の住み替えを検討している中で、マンションと戸建てのどちらがよいのでしょうか。
ライフスタイルが多様化する中で、戸建てかマンションのどちらがいいかを断言することは難しいですが、それぞれのメリット・デメリットを理解して、どちらが自身に合っているかを考えましょう。
老後に戸建てに住み替えるメリット
老後に戸建てに住み替えるメリットは、自分の好みを反映しやすいことです。
マンションのように管理規約がないため、内装をDIYしたり、趣味のスペースをつくったり、ペットを飼ったりと理想の生活を送るための制約がありません。リフォームすれば、家をバリアフリーに変えることもできます。
足音や騒音についても、マンションと比べると気にせず暮らせますが、都内などに住む場合は、隣家との距離が近く、余計に騒音に悩まされる可能性がある点に注意が必要です。
また、子供や孫が泊まりに来た際、のびのび過ごせるメリットもあります。
老後に戸建てに住み替えるデメリット
老後に戸建てに住み替えるデメリットは、維持費がかかることです。
戸建ては外壁や設備に不具合があると、当然ながら全額自己負担になります。マンションは外壁などの共用部分は、修繕費用を積み立てているため負担の感じ方は異なるでしょう。
将来必要になる修繕費用を自分で予測し、シミュレーションしておく必要があります。
自分でコツコツ用意することが苦手な人や、日々の生活で厳しい人は注意が必要です。修繕費用を予測できて、きちんと準備ができる人は、戸建てが向いているでしょう。
老後にマンションに住み替えるメリット
老後にマンションに住み替えるメリットは、生活するうえで利便性が高い場所に住めることです。
マンションの多くは、電車やバスの公共交通機関やスーパーなどが整備されている場所に建設されています。
また、マンションによっては管理人が常駐していたり、セキュリティ対策を行っているため安心して老後生活を送れるでしょう。
近隣に親族や知り合いが少ない人は、人の目につくマンションのほうがおすすめです。
老後にマンションに住み替えるデメリット
老後にマンションに住み替えるデメリットは、管理費や修繕費が必要になることです。
戸建ては必要になったタイミングで修繕費用が発生しますが、マンションは毎月支払う必要があります。
マンションの全住民で、外壁やエレベーターなどの共用部分の修繕などを負担しているためです。
毎月の支出が3万円ほど必要になることも珍しくないため、収入が少ない人は注意が必要です。一般的に、築年数が古くなるほど管理費や修繕積立金が高くなるケースが多いです。
住み替えるなら田舎?都会?
老後の住み替えで悩むのが「田舎か都会か」です。
住み替え先を選ぶときは、以下のポイントを参考にしてください。
- 人間関係
- 買い物しやすく、電車やバスを利用できるかどうか
- 治安はいいのか
田舎の場合、地域とのつながりを感じたり、のんびり落ち着いた生活を送れたりしますが、人間関係が濃くなりやすいため人付き合いが苦手な人は合わない可能性があります。
都会の場合、利便性や公共交通機関が整っていますが、家賃が高かったり治安が良くない可能性もあります。
上記のポイントを考慮し、住み替え先を検討してください。
住み替えるなら購入?賃貸?
住み替え先を選ぶうえで「購入か賃貸か」についても悩む人が多いです。
住み替え先に購入を選択すると、自分が亡くなった後の相続も考慮しておく必要があります。
特に相続人が複数人いる場合、分割するときに揉める原因になる可能性が高いです。
住み替え先に賃貸を選択すると、老後も一定の家賃が必要です。多くの人が収入が減るにも関わらず、家賃は減らないため家計を圧迫するでしょう。
老後の資金面を考慮すると、購入して住宅ローンを完済している場合は管理・修繕費の負担のみとなり、家賃よりは支出が抑えられます。
上記のように、それぞれの課題はありますが、購入して住み替えた場合と賃貸に住み替えた場合のシミュレーションを行い、どちらが自分に合っているか確認してください。
老後の住み替え事情
老後の住み替え事情について、住み替え先の選択肢や住み替える人が多い年齢層、現在の住居に住み続ける場合などそれぞれ解説していきます。
老後住み替えの選択肢
老後の住み替えの代表的な選択肢は、以下の2つです。
- ダウンサイジング
- シニア向け住宅
それぞれ解説します。
ダウンサイジング
ダウンサイジングとは、子供が独立し住居のスペースが余っているなどの理由で、コンパクトな戸建やマンションへ住み替えることをいいます。
不動産流通経営協会(FRK)の調査によると、住み替える際に7割の人は、住み替え先をダウンサイジングする意向があります。子供が巣立ったら、居室1〜2つでも十分ゆとりをもって生活できます。
ダウンサイジングの一番大きなメリットは価格面です。比較的コンパクトな部屋であれば価格が安くなりやすいです。そのため、希望に合った場所で希望する生活ができる可能性が高まります。
ダウンサイジングでは、戸建てよりもマンションへの買い替えが人気です。
狭い戸建てよりもマンションに引っ越したほうがメリットが多いと言えます。駅近であったり買い物環境が徒歩圏内にあるなど、便利な立地条件が多いです。
年齢が上がるほど行動範囲が狭くなりがちなため、近隣にさまざまなお店が集まっている方が生活しやすいでしょう。
住み替え先をダウンサイジングする場合は老後の生活を意識し、利便性の高さや住居空間の有効活用、セキュリティ面などを優先しましょう。
シニア向け住宅
シニア向け住宅は、賃貸も分譲の両方存在しており、元気なうちから入居し、必要になったタイミングで介護サービスを受けられます。
少子高齢化に伴い、高齢者の賃貸需要は高まっており65歳を超えて賃貸の部屋探しの経験がある高齢者は約3人に1人以上です。
しかし需要があるにも関わらず、賃貸の部屋探しをしている高齢者は年齢を理由に4人に1人は賃貸を断られています。
シニア向け住宅であれば、高齢者でも入居しやすいため選択肢の1つになるでしょう。
シニア向け住宅によって、介護や食事などのサービス内容が異なるため、事前に確認してください。
住み替えで一番多いのは60代
令和4年度の住宅市場動向調査報告書によると、住み替える年齢で一番多いのは60代です。
特にマンションを選ぶ割合が多く、家屋の老朽化や子育てが落ち着いたことを理由に、ダウンサイジングして住み替えていると予想できます。
住み替え先に注文住宅を選ぶ割合も多く、年齢が上がるに連れて希望や好みが明確になってくることは多いです。
中古の戸建住宅への住み替えは50代も多い
60代で住み替える人が一番多いですが、中古の戸建住宅への住み替えは50代が一番多いです。中古マンションを選ぶ割合も多くなります。
50代は支出が多い年代です。子どもの学費負担が重く貯蓄が少ないケースもあり、住み替え資金が不足しがちです。家のローンが残っている場合も多く、住み替えによる二重ローンで、返済負担が重くなる可能性があります。
30代や40代と比べると長期ローンが組みにくくなることも、中古住宅への住み替えが50代に人気な理由と言えるでしょう。
中古戸建に住み替えるメリット・デメリット
中古戸建に住み替えるメリットは、新築に比べ費用が抑えられることや新築よりも住む場所の選択肢が広がることなどがあります。
また周辺環境を事前に確認しやすく、住んだ後のこともイメージしやすいでしょう。
デメリットは、設備が数年から数十年前のものの可能性があることや修繕費が必要になるリスクがあることです。
また間取りも古く、生活スタイルと合わない可能性もあります。その場合は自分でリフォームする必要があるでしょう。
住み続ける場合の選択肢
老後に住み替えをせず、現在の住居に住み続ける選択肢もあります。
ただ住居の築年数が経っているため、リフォームなどが必要になる可能性が高いです。
リフォーム・建て替え
現在の住居に住み続ける場合はリフォーム・建て替えが人気です。
シニアの「住まい」に関する調査によると、リフォーム経験者は45.3%でリフォームの検討者は28.2%でした。
リフォームの内容は、「トイレのリフォーム」「縦型洗濯機の導入」「外壁の修理」「屋根の修繕」「給湯器」が多く、これからリフォームしたいと考えている人も同様の内容を検討している傾向が強いです。
老後も住み続けたい人は多い
シニアの「住まい」に関する調査では、 66%の人が今の住まいに満足しており、「死ぬまでずっと今の住まいに住み続けたい」という人は半数を超え53.0%でした。
特に男性の年代が高くなるほど「死ぬまでずっと今の住まいに住み続けたい」意向が多い結果となりました。
ただ、住むうえで不安や不便さを感じることはあるようで、建物や設備の老朽化や階段の上り下りが疲れるという回答が多いです。
老後の住み替えを成功させるポイント
老後の住み替えを成功させるためには、以下のポイントが重要です。
- 資金計画をしっかり立てる
- 新築と中古で比較検討する
- 住み替えのスケジュールを意識する
- 今の家を高く売る
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
それぞれ解説します。
資金計画をしっかり立てる
住み替えを検討したら、資金計画を行いましょう。
現在の住居がいくらで売却できるのか、今後の収入を念頭に置きながらどのくらいの価格の物件を探すのかなど、事前に考慮しておいてください。
上記以外にも引越し費用や退職後の生活費、病気や通院などのリスクにも対応できるくらいの計画を立てることが重要です。
新築と中古で比較検討する
住み替え先の候補として、新築か中古で比較検討をしてください。
中古物件のほうが、新築物件よりも安価であることが多いですが、リフォームが必要であったり修繕費がかかったりする場合、金額によっては新築物件を検討してもいいかもしれません。
金銭面だけでなく、設備やバリアフリーなどの住み替えた後の生活についても比較しておきましょう。
住み替えのスケジュールを意識する
住み替えのときに難しいのはスケジュール調整です。
現在の住居の売却と新居の購入のタイミングが合わないことも考慮しながら、住み替えを進めていく必要があります。
住み替えのスケジュールを考慮するときには、売却を優先するのか購入を優先するのかを決めておきましょう。
売却を優先すると、新居が見つかるまでに売れると住む場所がなくなるリスクがあります。
購入を優先すると、現住居が売却できず2つの家の費用を支払うリスクがあります。
住宅ローンや現在の資金状況を考慮しながら、スケジュールを意識しましょう、
売却と購入どちらを優先した方がいいかは状況によって異なるため、不動産会社への相談がおすすめです。
今の家を高く売る
60歳以降は収入の減少が想定できるため、今の家を高く売ることが重要です。売却金額を新居の購入資金に充てられると、老後資金の負担が少なくて済みます。
人気エリアの物件でもない限り、家を売るのは簡単ではありません。想定よりも大幅に低い価格で売却することになる可能性もあります。
不動産会社には得意不得意があるため、高く売却する力量のある不動産会社に依頼しましょう。
信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産会社選びが住み替えが成功するかの分かれ道、といっても過言ではありません。
住み替えの対応実績が豊富なだけでなく、自分に合った住み替え計画を提案してくれるかが、不動産会社選びのポイントです。
住替え時や引っ越し先では想定以上の費用が発生する可能性があり、最悪のケースでは引っ越し破産につながります。売る時と買う時の両方で顧客のことを真剣に考えてくれる会社を選びましょう。
売却の査定は最低でも3社に依頼して比較したほうがいいです。不動産の仲介を行う会社は、売却依頼を受けるために査定価格を高めに出しがちです。査定価格で売れる可能性は低く、値下げすることになるケースもあります。
査定は複数社に依頼し、会社を選ぶ際も「担当者が周辺の物件の動向を説明してくれるか」など信頼性を確認しましょう。
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高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。