今回は、共有不動産を所有されている方向けの記事になります。
売却したいけど、共有者が行方不明といった場合の売却方法を解説します。
目次
共有不動産とは
共有不動産とは、複数人が共同で所有している不動産のことを指します。
不動産が共有となること理由は様々ですが、
・相続の際に、複数人で一つの不動産を相続した場合
・夫婦がダブルローンを組んで住宅を購入した場合
などのケースが多くあります。
共有不動産を売却する場合
共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要です。
不動産の売却時には、基本的に全ての共有者が売主となります。ただし、自分の持分だけを売却する場合は、他の共有者の同意を得る必要はなく、自由に第三者に売却することができます。
共有者が所在不明な場合の売却方法
前述の通り、不動産の共有持分を売却する場合、共有者の同意は不要であり、所在不明の共有者がいても売却は可能です。ただし、実際には共有持分を購入してくれるのは、共有不動産の買取を専門とする業者などに限られ、そのため売却によって得られる金額は非常に低くなることが多いです。
令和3年の民法改正により、裁判所に申し立てを行った共有者に対して、所在不明の共有者の不動産持分を譲渡する権限を付与する制度が新たに設けられました(民法262条の3)。この制度は、共有不動産において、共有者が他の共有者の所在が不明である場合や、共有者が誰であるか分からない場合に、裁判所に申し立てをすることで、所在不明の共有者の持分を第三者に譲渡する権限を共有者に与えるものです。申し立てには、以下の要件が必要です。
【要件】
1.共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない。
「共有者を知ることができない、その所在を知ることができない」とは、必要な調査を行ったにもかかわらず、共有者の氏名や所在がわからない場合を指します。
2.不明共有者以外の所有者(共有者)が、特定の第三者に共有不動産の全部を譲渡(売却)すること。
所在等不明共有者の不動産持分を譲渡する権限は、不明共有者以外の所有者が、共有不動産の全部を特定の第三者に譲渡(売却)することを停止条件としています。
停止条件とは、条件が成就した時点ではじめて効力が発生することを指します。
【例】
A、B、Cの三人が不動産を共有しているが、Aの所在が不明である。
Bは不動産をDに売却したいと考えているが、Aの所在が不明なため、裁判所に「所在等不明共有者の不動産持分の譲渡」の申し立てを行い、裁判所からその権限を付与された。
しかし、CはDへの不動産売却に反対した。
「所在等不明共有者の不動産持分の譲渡」は、特定の第三者(D)への譲渡(売却)を停止条件としているため、その条件が成就しない限り、不動産の売却は実行できないことになります。
民法262条の3(e-Govより引用)
不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
申し立ての流れ
①管轄裁判所への申し立て
不動産の所在地を管轄する裁判所に申し立てを行います。
②異議申し立て期間
裁判所は、共有者から「所在等不明共有者の不動産持分の譲渡」の申し立てがあったことを公告します。公告期間は、最低でも3ヶ月以上で設定されます。
③供託
裁判所は、申し立てを行った共有者に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める金額を供託することを命じます。申し立てを行った共有者が納付期限内に供託金を納めなかった場合、申し立ては却下されます。
④所在等不明共有者の不動産持分を譲渡する権限の付与
裁判者は、共有者が所在等不明であると認定し、申し立てを行った共有者が供託金を納めると、所在等不明共有者の不動産持分を譲渡する権限を付与する裁判を行います。
この裁判は、2週間の即時抗告期間を経て確定し、これにより申し立てを行った共有者は「所在等不明共有者の不動産持分を譲渡する権限」を得ることになります。
権限の効力
所在等不明共有者の不動産持分を譲渡する権限は、権限が付与されてから2ヶ月以内に、特定の第三者に共有不動産全部を譲渡しなかった場合、効力を失います。
所在等不明共有者の保護
所在等不明共有者は、上記権限に基づき自分の持分が第三者に譲渡された場合、その譲渡を行った共有者に対して、不動産の時価相当額を譲渡された持分の応じて按分して得た額の支払い請求権を得ます。
まとめ
共有不動産を売却したいけど、「共有者がわからない」、「共有者の所在が不明である」場合でも、不動産全体を売却する制度が設けられました。
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