近年、首都圏では中古マンションの価格が上昇傾向にあり、実際に購入時よりも高く売却できる例も増えています。一方で、将来の資産価値の下落や税負担を懸念する声もあります。
タワーマンションの売却益を増やすための考え方と、税金を抑えるポイントを解説します。
目次
タワーマンションは今後も売却益を得やすい状況が続く
ここ数年、都心部を中心にタワーマンションの価格は高止まりが続いている状況です。新築・中古ともに需要が大きく、「購入時より高く売れた」という場合もあります。
背景には、都心回帰や共働き世帯の増加、利便性を重視したライフスタイルへの変化などがあります。最新データをもとに今後の動向を見ていきましょう。
不動産価格指数からは、価格の暴落は読み取れない

国土交通省が公表する「不動産価格指数」によると、マンション価格は2013年以降、上昇傾向が続いています。2020年以降も大きな下落は見られず、都心部ではむしろ上昇を維持しています。再開発の進展や低金利環境、都心立地への需要の高さが要因です。
利便性とブランド力を兼ね備えたタワーマンションは、当面の間は売却益を見込みやすい状況と言えるでしょう。
中古マンションの成約件数と単価は上昇している
首都圏の中古マンション市場を見ると、成約価格が着実に上昇しています。最新のREINSデータによれば、2024年7〜9月期の成約平均価格が 4,875万円、それに対して2025年7〜9月期には 5,314万円 にまで上がっています。
この背景には、交通利便性の高い都心立地への需要の強さや、新築マンションの価格高騰による中古物件へのシフトなどが挙げられます。また、タワーマンションという希少性・優位性のある物件種別では、こうした傾向をより強く反映している可能性があります。
こうした動向から、「築浅で立地が良いタワーマンション」であれば、購入時よりも高値で売却できる可能性が十分にあると言えます。現在は、売却益を得やすい市場環境下にあると捉えられるでしょう。
タワマンの資産価値は下がる可能性がある!?
タワーマンションは今も高値で取引されていますが、すべての物件が将来も資産価値を維持できるわけではありません。
特に築年数が経過した物件や立地条件が劣るエリアでは、売却価格が下がる可能性があります。
資産価値が下がりやすいタワーマンションの特徴として、以下のような点が挙げられます。
- 駅から遠く、再開発エリアから外れている
- 管理費・修繕積立金が高騰している
- 戸数が多く、将来的に空室が目立ちやすい
- 築20年以上で設備更新が追いついていない
特に築15〜20年を超えると、配管や共用設備の老朽化による修繕費の上昇が目立ち始めます。特に築年数が浅いうちに売却すれば、資産価値を維持したまま利益を得やすいタイミングとなるでしょう。
将来空き部屋だらけになる!?その前に売ったほうがいい
人口減少と住宅供給の増加により、空き家の増加が懸念されています。国土交通省の調査では全国の空き家率が上昇しています。
タワーマンションも例外ではなく、築年数の経過による修繕費や管理費の増加が課題となるでしょう。所有コストが増すと住み替えをためらう人が増え、結果として売却市場の供給が過剰になるおそれもあります。需要が高いうちに動くことで、価格が下がる前に有利な条件で売却しやすくなります。
タワーマンションの売却益を増やす方法
タワーマンションの売却で利益を残すには、単に高く売るだけでなく、費用や税金を上手に抑えることも大切です。売却益は「売却価格から取得費や諸費用を引いた金額」であり、税金がかかるため、計画的に進める必要があります。ここでは、手取り額を多く残すための具体的な方法を紹介します。
譲渡所得税などの費用を減らす
タワーマンションを売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。この税金は、所有期間が5年以下の短期譲渡と、5年を超える長期譲渡で税率が大きく異なります。
短期譲渡では約39%、長期譲渡では約20%と、5年を境におよそ半分に軽減されます。そのため、売却を急がない場合は、購入から5年を過ぎてから売却するほうが有利です。
また、自宅として住んでいたマンションの場合、条件を満たせば「3,000万円の特別控除」を利用でき、課税対象額を大幅に減らすことが可能です。売却益を最大化するためには、こうした費用の扱いを正しく把握し、節税につながるタイミングで売却を検討することが重要です。
不動産価格の上昇時期に売却する
売却益を増やすには、市場全体の価格が上昇している時期を見極めることが大切です。不動産価格は経済状況や金利、人口動向などで変動します。特に2020年以降は低金利と都心再開発の影響で、マンション価格は上昇基調が続いています。
最新の不動産価格指数でも、東京都を中心とした首都圏では上昇傾向が続いています。このような時期は、築浅で立地条件の良いタワーマンションほど高値で売却しやすく、成約スピードも速い傾向があります。
相場が下がる前に動くことで、結果的に手取り額を多く残せます。定期的に市場動向を確認し、価格が高いタイミングで売却を進めることが利益を最大化するポイントです。
タワーマンションの売却実績が多い不動産会社を複数社比較する
タワーマンションを高く売るには、複数の不動産会社に査定を依頼して比較することが重要です。
会社によって得意とするエリアや物件タイプが異なり、タワーマンションの売却実績が豊富な会社ほど、価格設定や販売戦略に強みを持っています。実績のある会社は購入希望者層を把握しており、広告の出し方や内覧対応まで最適化されています。
一方で、査定価格だけで判断すると、相場より高すぎる金額を提示され、結果的に売却が長期化することもあります。査定額だけでなく、担当者の説明や対応の丁寧さ、販売計画の提案内容などを比較し、信頼できる会社を選ぶことが成功のポイントです。
タワーマンションの売却益が出ると譲渡所得税がかかる
タワーマンションを売却して利益(売却益)が出た場合には、譲渡所得税がかかります。この税金は、土地や建物などの不動産を売ったときに得た所得に対して課されるもので、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて支払う仕組みです。
また、売却時には登録免許税や印紙税などの費用も発生します。正しく計算し、どのくらいの税負担になるかを把握しておくことが、手取り額を減らさないための第一歩です。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、次のような式で計算されます。
- 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 課税譲渡所得 = 譲渡所得 − 特別控除額
ここでいう「取得費」には、購入時の価格や仲介手数料、登記費用などが含まれます。「譲渡費用」は、売却時にかかった仲介手数料や測量費などを指します。
税率は所有期間によって異なり、5年以下の短期譲渡所得は約39%、5年を超える長期譲渡所得は約20%です。
自宅として使っていた場合は「3,000万円の特別控除」が適用され、課税対象額を大きく減らすことも可能です。この仕組みを理解しておくことで、売却後の手取り額を正確に見積もることができます。
消費税がかかるケースもある
不動産の売却では、すべての取引に消費税がかかるわけではありません。個人が居住用として所有していたタワーマンションを売却する場合は、原則として非課税となります。
一方で、事業用として保有していた物件や賃貸経営に使用していたマンションを売却する場合は、事業者としての取引とみなされ、消費税の課税対象になります。
消費税は建物部分のみにかかり、土地には課税されません。たとえば、建物の売却価格が3,000万円であれば、そのうちの建物分に対して10%の消費税が加算されます。このため、事業用物件を売却する場合は、課税対象の範囲を明確にしておくことが大切です。
税負担を軽減するためには、税理士など専門家への相談を検討すると安心です。特に事業用と居住用を兼ねたケースでは、課税の扱いが複雑になるため注意が必要です。
売却にかかる税金のシミュレーション
実際にどのくらいの税金がかかるのかをイメージするために、簡単なシミュレーションを見てみましょう。たとえば、タワーマンションを6,000万円で売却し、購入時の価格が4,000万円、売却にかかった諸費用が200万円だった場合、譲渡所得は以下のように計算されます。
- 6,000万円 −(4,000万円+200万円)=1,800万円
ここから「3,000万円の特別控除」を適用できると、課税対象は0円になり、譲渡所得税はかかりません。一方で、特別控除の対象外であれば、所有期間に応じて20%前後の税率が適用され、約360万円の税金が発生します。
このように、控除の有無や所有期間によって税額は大きく変わります。事前におおまかな金額を把握しておくことで、売却後の資金計画を立てやすくなるでしょう。
相続したマンションを売却する場合の税金と特例
相続で引き継いだタワーマンションを売却する場合も譲渡所得税の対象になります。計算に用いる取得費は、被相続人が購入した際の価格や費用を引き継ぐ形です。たとえば4,000万円で購入したマンションを6,000万円で売却すれば、譲渡所得は約2,000万円となります。
ただし、条件を満たせば「取得費加算の特例」などが利用できるため、課税額を大幅に減らすことが可能です。相続した物件の売却では、早めに不動産会社や税理士へ相談し、特例の適用条件を確認しておくことが重要です。
