- 都心6区と湾岸エリアの購入者像・価格動向・物件選びの傾向の違いが明確になる
- 資産価値を左右する要素と、エリアごとの将来展望が比較できる
- 今後の再開発・交通インフラ整備などによる“伸びしろ”や課題も把握できる
本記事は、 私、一心エステート代表・高田と、湾岸エリアに特化した株式会社FJリアリティ 代表・藤田祥吾氏による対談をもとに、湾岸と都心6区それぞれの不動産市場の違いや今後の展望をわかりやすくまとめたものです。
都心の資産性か、湾岸の成長性か。初めて不動産売買を検討する方に向けて、エリアの特徴・購入者の傾向・価格動向・将来予測まで、プロ2人の視点から丁寧に読み解きます。
※本記事は、2024年11月30日時点の情報に基づき、YouTube対談の内容を再構成したものです。
目次
第1章:都心6区と湾岸エリア、何が違う!?
都心6区vs湾岸、それぞれの“買い手像”とは?
高田(以下、高田):
今回のテーマは「都心6区と湾岸エリアの違い」。ゲストには、湾岸エリア専門の不動産プロ・FJリアリティ株式会社 代表の藤田祥吾さんをお迎えしています。湾岸ひとすじ10年、今やメディアでも引っ張りだこ。藤田さん、まずは自己紹介をお願いします。
藤田(以下、藤田):
ありがとうございます。FJリアリティの藤田です。私は湾岸エリアで10年以上、不動産売買のサポートと情報発信を続けてきました。最近はありがたいことに、日経新聞などのメディアからも毎週のように取材を受けています。
高田さんとは「東京不動産マニア」でも一緒に活動していて、リアルな市況感をお届けしています。
高田:
まさに湾岸エリアのスペシャリストですね。では早速ですが、最近の湾岸エリアのお客様の属性(勤務先やご年収・一次取得か二次取得か等々)について教えてください。
藤田:
湾岸エリアは地方、郊外、都心とあらゆるエリアにお住まいの方が新居を探しにくるエリアですね。一次取得層は30代のパワーカップルが中心。結婚を機に、将来の子育てを見据えて購入するケースが多いです。 一方で、すでに湾岸に住んでいる方の住み替えも多くて、湾岸内での買い替えや、同じマンション内での引っ越しなんてことも珍しくありません。
高田:
“出ていかないエリア”ってわけですね。
藤田:
はい。一度住むと離れたくなくなる魅力があるようです。世帯年収でいうと、1500万〜2000万円あたりの共働き世帯が多く、予算はだいたい1億2000〜3000万円。
高田:
なるほど。都心6区とは少し違いますね。都心のお客様は医師や士業、国家公務員、外資系・商社・IT系など、いわゆる“高属性”の方が中心。世帯年収2000万円を超えているケースも多く、予算も1億〜1億5,000万円がボリュームゾーンです。
中には現金で購入される方もいらっしゃって、キャッシュ比率が1〜2割というのも特徴的ですね。
藤田:
都心ならでは、ですね。
高田:
お客様のご予算に合わせて、築20〜30年の広めの2LDKを中心にご提案しています。築年数や駅からの距離、共用部の充実度、マンションブランドなど、さまざまな軸で比較しながら、最終的にはお客様それぞれの“こだわり”に沿って物件を絞り込んでいく傾向があります。中でも、とくに築年数に強いこだわりを持つ方が多い印象です。

価格はどう動いた?この1年のエリアトレンド
高田:
さて、ここからは直近1年の市況についてお聞きします。湾岸の動きはいかがですか?
藤田:
2024年はまさに“大逆進”でした。物件価格・成約価格ともに、前年比で約25%の上昇。特に築浅のブランドマンション──たとえば「ドゥトゥール」「シティタワーズ東京ベイ」「スカイズタワー&ガーデン」「パークタワー東雲」などは30%以上上がった印象です。
高田:
30%超えですか!驚きの上がり方ですね。
藤田:
ただ一方で、金利の影響などもあり、在庫は増えました。でもこれって、湾岸特有の“新築マンションの発売待ち”による一時的な現象なんです。晴海フラッグやザ・豊海タワーなど、大型新築の抽選待ちが重なり、売れ行きが一時的に鈍っただけ。実需はしっかりあります。
高田:
確かに、2021年から見ても湾岸の価格は1.7倍。平均坪単価600万円という数字は、もはや都心6区と肩を並べてますよね。
藤田:
それは「超一流マンション」のデータだからとも言えますが、それでも湾岸エリアの成長は間違いないです。ただ、お客様の気持ちが価格に追いついていない場面も出てきました。
高田:
わかります。都心6区も物件の紹介が難しくなってきていて、成約単価は上がっているのに、そもそも“買える物件”が少ない。だからこそ、「いま住めるジャストサイズで調整しましょう」というご提案も増えています。
藤田:
湾岸も一緒です。在庫は増えていても、実際に紹介できるような物件が少ない。さらに最近は「売らなくても困らない」という方も増えました。金利上昇を見越して、チャレンジ価格で売り出している方が多く、現実的な価格帯で出ている物件が少ないという現象も起きています。
高田:
湾岸も都心も、“買いたい人は多い、でも買える物件がない”という悩みは共通していますね。
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第2章:都心6区vs湾岸エリア、資産価値で選ぶなら!?
「築浅タワマン」か「都心のブランド物件」か?
藤田:
よくある質問なんですが…たとえば予算1億5000万円で、湾岸エリアの築浅ピカピカのタワーマンションと、恵比寿の築25年、30戸程度の小規模ブランドマンションが選択肢としてあった場合、どちらを選ぶべきか。高田さんなら、資産価値の面でどう答えますか?
高田:
これは一言では答えづらいですね。タイミングによると思います。
もし2030年までに売却する予定であれば、湾岸のタワマンのほうが資産価値の伸びが期待できる。いま湾岸では大規模再開発が続いていて、街全体が“発展フェーズ”にある。今後数年は、その恩恵をダイレクトに受けられるでしょう。
藤田:
確かに、湾岸の将来性はわかりやすいですよね。
高田:
一方で、10年、20年と長く保有するなら、やはり都心のブランド物件のほうが安定性が高い。2030年以降、東京全体では人口が減少に転じると言われていますが、それでも“都心だけは人が集まる”状態になる。だからこそ、将来的な価値を見据えるなら、都心(6区)への回帰は避けられないと思っています。
資産価値のカギは「立地・築年・耐震」
藤田:
築年数を気にされる方も多いですよね。ただ、20年経った物件は、いずれ30年・40年になります。そのとき“地域力”で劣っていると、どうしても評価は下がりやすい。
高田:
まさにそう。特に“新耐震基準”をクリアしているかどうかは、中古マンションの資産価値に与える影響が大きい。さらに、駅からの距離、周辺環境、ブランド力など、複雑な要素が絡んでくるので、資産価値を予測するのは簡単ではありません。
藤田:
湾岸の場合、築浅物件が多いので、マンションごとの差が見えにくいというのはありますね。高田:
確かに、湾岸タワマンは“どれも新しいし、きれい”という印象があります。そのなかで、違いはどう見せているんですか?
湾岸エリアで“差”をつけるには?
藤田:
湾岸では、比較軸として「内装のグレード」「共用施設の充実度」「眺望」「階数」「方角」などの細かい条件が大きな差になります。あとは、販売中の“出物”を横断的に見て、お客様の希望に合うものを提案しています。
湾岸のお客様って、意外と条件を絞りすぎない方が多いんです。
高田:
なるほど、出たもの勝負という感じなんですね。
藤田:
そうなんです。「勝どきザ・タワー」「ザ・東京タワーズ」「ドゥ・トゥール」など、人気マンションで“いい部屋が出たら教えてください”というリクエストが多いですね。物件ありきで探すというより、“チャンスを待つ”スタンスに近いです。
高田:
確かに湾岸は供給も多い分、選択肢が動的に変わってくる。都心6区の場合は、出物そのものが少ないですから、選べるうちに決断する必要があるケースが多いですね。

第3章:高田が聞いてみたい、湾岸エリアのあれこれ!
湾岸エリアの開発はまだ続く?
高田:
湾岸エリアはここ数年で一気に街が変わった印象がありますが、今後も再開発は続いていくんでしょうか?
藤田:
はい、むしろ“これからが本番”という感じですね。築地の跡地開発が進みますし、「ザ豊海タワー」も1期販売が終わって、すでに20%の値上げ。月島にも新築物件がまだ出ていますし、「グランドシティタワー月島」は現在もゆっくり販売中です。
月島南地区や晴海エリアには空き地がまだたくさんありますし、豊洲では東京ガスの大規模な土地開発、有明ではテレ朝やコナミの施設建設など、プロジェクトが絶えません。
高田:
そんなにまだ開発余地があるんですね。
藤田:
はい、そして何より臨海新線の開通構想があります。これが実現すれば、湾岸エリア全体の利便性が一気に跳ね上がる。まさに“化けるポテンシャル”を秘めた街だと思います。
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勝どき駅は“混雑”が課題
高田:
勝どきって、タワーマンションも多く人気エリアですよね。だけど駅の混雑が気になる…。実際どうなんですか?
藤田:
正直に言って、勝どき駅は課題です(笑)。駅の構造的な限界があるんですよね。
BRT(バス高速輸送システム)も本数を増やしてるものの、朝は3本見送ってやっと乗れるかつ常にパンパンな状態です。
高田:
湾岸エリアってリテラシーが高い人が多く住んでいる印象があります。インフラが整えば、ものすごく強い街になる気がするんですけど。
藤田:
まさにその通りで、臨海新線が実現すればすべて解決すると思います。東京都も前向きではあるので、期待はしています。
湾岸エリアの“弱点”は賃料の伸び悩み?
高田:
ところで、湾岸エリアは売買価格がすごく伸びている印象ですが、賃料はどうなんですか?
藤田:
実は賃料はあまり伸びていないんです。物件価格が上がっているのに、賃料はついてこない。これがオーナーさんの悩みの種ですね。
高田:
原因は何でしょう?
藤田:
一番大きいのは晴海フラッグの影響ですね。新築で80平米で家賃27万円と、相場より安い物件が大量に出ていて、一時は400〜500件もの賃貸募集が出ていた。この影響で、周辺エリアの賃料が押し下げられた格好です。
高田:
売買と賃貸で、こうも温度差があるんですね。「囲い込み問題」も深刻なほど、売買は売り手市場なのに、賃貸は苦戦気味ってことですかね。
藤田:
ただ湾岸エリアでマンションを購入する方の多くは、利回りを気にしない投資家や富裕層なんです。「貸すため」ではなく、値上がり目的やセカンドハウス、資産保全のために買う。だから、「賃貸に出したらどのくらいで回るか?」なんて質問、ほとんど受けたことがないんですよ。
高田:
なるほど…湾岸は“自分のために買う街”、というスタンスが多いということですね。
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第4章:それぞれのエリアの今後は?
都心6区の未来はどうなる?
藤田:
高田さん、都心6区の2025年はどうなると予測されますか?
高田:
結論から言うと、強気です!(笑)
日本の不動産価格は、実は日経平均株価に連動していることが多いんです。そして日経平均は、アメリカの株価に連動する傾向があります。
アメリカ大統領選では、”あの不動産王”のトランプ氏が再選する可能性が高いと言われていますよね。彼が再び大統領になれば、不動産市況を悪化させるような政策はとらないと見ています。
藤田:
なるほど、国際経済の流れが、じつは日本の住宅市況にも響いてくるんですね。
高田:
そうなんです。それに加えて、日本国内でもインフレが進んでいる。物価が上がれば、当然建築費や土地の価格にも波及するわけで、不動産価格に影響しないわけがない。
ただ、大事なのは「値上がりしそうだから買う」ではなく、 「自分の幸せのために買う」という考え方。その上で資産性も大切にするというバランスが重要です。
藤田:
高田さんらしいですね!ちなみに、注目しているエリアってありますか?
高田:
「大井町」です。品川区の中でも、今まさに開発が進んでいるホットスポット。 品川エリアの大規模マンション開発に近く、その影響は大井町にも波及するはず。
あと、大井町は交通の利便性が抜群。京浜東北線で品川・東京へ、りんかい線で恵比寿・渋谷方面にもアクセスできます。
湾岸エリアはどう動く?
高田:
藤田さんは、湾岸エリアの2025年はどう見ていますか?
藤田:
引き続き、価格は上昇すると見ています。5~10%は上がる可能性があると思いますよ。
実際、現場では「囲い込み」がめちゃくちゃ増えているんです。
これは「売り手市場」の何よりの証拠。買いたい人が多いから、売主側も強気なんですね。
高田:
「囲い込み」って、不動産取引の“透明性”が問われるポイントでもありますよね。
藤田:
そうですね。オリンピックの2年前、つまり2020年頃は相場も少し落ち着いていたので、囲い込みもほとんどありませんでした。でも今は買いたい人が行列状態。その分、現場の取引はやりづらくなってきています。
高田:
都心6区でも囲い込みによる紹介拒否や、対応の悪さは問題になっています。
たまに本当にイヤな担当者に当たることもあって(笑)、売主さんが可哀想だなと思うこともあります。
エリアを超えたプロ同士の協力で、より良い提案を
高田:
藤田さんは湾岸のスペシャリスト。私は都心6区を軸に動いていますが、こうして一緒に情報を交換しながら、それぞれの視点を持ち寄ることで、より良いご提案ができると改めて感じました。
藤田:
本当にそうですね。湾岸と都心、違いはあっても、「お客様の幸せな暮らし」を考える視点は同じですから。
高田:
今後も引き続き、コラボをしながら、皆さんにリアルな市況を届けていきましょう!
※本記事は、2025年3月20日時点の情報に基づき、YouTube対談の内容を再構成したものです。実際の対談動画は、こちらからご覧いただけます。
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対談者プロフィール

藤田 祥吾(ふじた しょうご)
株式会社FJリアルティ
代表取締役
筑波大学卒業後、ケン・コーポレーションに入社。湾岸マンション価格ナビ時代にスムログブロガー「ふじふじ太」として活躍し、2023年に独立し株式会社FJリアルティを設立。東京湾岸エリアに魅せられて9年、1児の父。

高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社
代表取締役 不動産コンサルタント
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。
その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産売買仲介営業・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師などを務める。
豊富な不動産知識に加え、20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。
2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」(みらいパブリッシング)を出版。