近年、空き家問題は地方に限らず、都市部でも注目を集めるようになってきました。特に東京は人口密度が高いにもかかわらず、多くの空き家が存在しており、深刻な課題といえます。この記事では、東京都心における空き家の現状や課題をひも解き、その活用や売却の方法について具体的に紹介します。
目次
地方だけじゃない。深刻な都心の空き家問題
空き家問題というと地方の過疎化に関連して語られることが多いのですが、実は東京のような都市部でも同様の問題が存在しています。都心における空き家問題は、地域全体に影響を及ぼす深刻な問題となりつつあります。東京など都市部の空き家事情と、その背景について詳しく見ていきましょう。
東京も深刻、空き家問題
空き家問題と聞くと、過疎化が進む地方特有の課題と思われがちですが、実際には東京でも深刻な状態に陥っています。
総務省が2023年に実施した「住宅・土地統計調査」によれば、東京23区内の空き家数は64万6800戸にのぼり、これは1958年以降で最多となっています。総住宅数に占める割合は10.9%で、2018年(10.4%)から0.5ポイントも上昇しており、全国的に見ても驚くべき増加傾向といえるでしょう。今後もさらに数が増え続けると予想されます。
その背景として、相続したものの活用方法がわからず放置されている物件や、高齢化による居住者の減少などが挙げられます。実際、東京23区内には築40年以上の戸建て住宅が数多く存在し、適切な管理が行われていないケースも報告されているのです。こうした空き家は、地域の景観を損なうだけでなく、防犯上のリスクを高める原因ともなりかねません。
東京で空き家が増えている理由
東京で空き家が増加している理由にはいくつかの要因があります。まず、人口動態の変化です。東京都心では新築マンションの供給が進む一方で、古い戸建て住宅やアパートが取り残され、住む人がいなくなるケースが目立っています。
また、相続問題も空き家増加の一因です。相続した住宅を手放すべきか、リフォームして活用すべきかの判断がつかないまま放置される物件が多いのです。東京ならではの事情として、再建築不可物件や法的な制約が問題を複雑化させています。
空き家の増加で起こること
都心で空き家が増加すると、さまざまな社会的・経済的な問題が引き起こされます。まず、挙げられるのが、防犯面でのリスクが高まることです。空き家が長期間放置されることで、不法侵入や犯罪の温床となるおそれがあります。
さらに、空き家が老朽化すると、建物の一部が崩壊する危険性が高まります。都心部は隣家との距離が近いため、空き家の管理が不十分な場合、隣接する住宅や歩行者に影響を及ぼすかもしれないのです。
経済的な側面では、空き家が地域の不動産価値を押し下げる要因になります。空き家が多いエリアは「衰退している地域」と見なされ、購入希望者や投資家の関心が低くなるため、エリアの不動産市場に悪影響を及ぼすおそれがあるのです。
都心の空き家を活用する方法
空き家をただ放置しているだけでは、資産を活かせません。 しかし、適切な方法で利活用することで、空き家が新たな収益源や地域活性化の一助となる可能性があります。都心ならではの、空き家活用を見ていきましょう。
賃貸住宅として貸し出す
都心の空き家を活用する方法として、賃貸住宅にする手段も考えられます。東京都内は住宅需要が高いため、適切なリフォームやリノベーションを行えば、安定した収益が期待できるでしょう。
たとえば、築30年以上経過した戸建てをシェアハウスとして改装し、若年層をターゲットとする手もあります。こうした活用策によって、空き家が有効に生まれ変わるだけでなく、地域コミュニティの活性化にもつながるのです。
店舗などにして活用する
空き家を飲食店や小規模な店舗として活用するのも有効な方法です。特に都心では観光客や働く人が多いため、立地条件次第では高い集客力を発揮します。空き家を古民家カフェやギャラリーとしてリフォームした事例は、東京に限らず全国各地にあります。
このような活用方法は地域経済の活性化や、新たな雇用の創出にも寄与するのもメリットです。
更地にして土地活用を行う
老朽化が進んでいる空き家の場合、建物を解体して更地にする選択肢もあります。更地にすることで駐車場やコインランドリーなどの土地活用が可能となり、収益性の高い事業を展開できる可能性があります。
ただし、更地にすると固定資産税が高くなるデメリットもあるため、事前に活用計画をしっかりと立てることが重要です。
都心の空き家を売却するときに注意すること
都心の空き家を売却するときは、さまざまな課題に直面することが予想されます。 特に都市部ならではの法的制約や相続問題など、対処すべきポイントは少なくありません。空き家を売却するときに注意すべきポイントを見ていきましょう。
再建築不可物件のおそれがある
都心には現行の建築基準法では再建築が認められない、「再建築不可物件」が少なくありません。再建築不可物件を売却する場合、購入希望者が少ないため、価格が大幅に下がるおそれがあります。
再建築不可物件を売却するときは、不動産会社に相談して買い手に物件の条件を正確に伝えることが重要です。また、売却する前に法的な制約を解消する方法がないか、念のため調べておきましょう。
共有者が多くて売却の同意が得られない
都心の空き家には、相続の結果として共有者が増え、所有関係が複雑になっているケースが珍しくありません。共有不動産の場合、すべての共有者が同意しなければ売却できないため、手続きが滞ることも考えられます。
このような問題を解決するには、相続時に弁護士などの専門家を交え、権利関係を整理しておくことが重要です。すでに共有者が存在している不動産であれば、なるべく早い段階で話し合いの場を設けておく必要があります。相続が重なるたびに共有者が増えると、状況はさらに複雑になりかねません。また、解決が難しい場合には、自分の持分だけを売却することも可能です。
そのほかの注意点
老朽化が進みすぎた空き家だと、修繕費用がかかりすぎてしまうため、売却できないこともあります。空き家の老朽化が進みすぎたケースだと建物の評価額がゼロで、解体費用がかかるのでそれだけ売却価格を下げざるを得ないこともあるので注意が必要です。
ほかにも築年数を経た空き家だと、ライフラインが整備されていないこともあります。そういった場合も、売却価格が安くなると考えておきましょう。ただし、売却価格が安くなってしまったとしても、空き家を所有し続けることにはリスクがあるため、不動産会社などの専門家と相談して売却を前向きに検討することをおすすめします。
空き家の売却を成功させるポイント
都心の空き家を売却するときは注意点を把握し、次のポイントに注意することで成功率を高められます。
適切な不動産会社の選定
都心部の空き家の売却に強い不動産会社を選ぶことが重要です。物件の特性に合った買い手を見つけられる会社であれば、スムーズな売却が期待できます。
物件の適切な査定
市場価格を正確に把握するために、複数の不動産会社から査定を受けましょう。売り出し価格が高すぎると、買い手が見つからないこともあるため、適正価格を見極めることが重要です。
空き家の見た目を整える
購入希望者によい印象を与えるため、最低限の清掃や修繕を行いましょう。外観や内装が整っているだけで、購入希望者の興味を引きやすくなります。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。