「マンションの高層階」と聞いて、眺望の良さや静かな環境を考える方も多いのではないでしょうか。実際に住むためにどんな生活が待っているのか、そしてどのように高層階を選ぶべきか、気になるポイントを解説します。
目次
マンションの高層階は何階から?
高層階とは何階以上からを指すのか、明確な定義はありません。個人的な感覚で表現されることもありますが、一般的な感覚としては建物の半分、もしくは2/3以上の高さのフロアからを高層階と表現されるケースが多いです。
消防法では「高さ31mを超える建築物」が「高層建築物」とされています。31m以上はマンションでいうと10階建て相当です。
タワーマンションなどでは、10階以上を高層階と表現しても間違いではありません。しかし、感覚的なところで「30階建てのマンション内で10階以上を高層フロアとするか」考えたとき、一般的には20階以上が高層階と表現されることが多いでしょう。
マンションの高層階に住むメリット
マンションの高層階に住むメリットを紹介します。
プライバシーを確保しやすい
人の目線の高さよりはるかに高い位置に窓が来るため、覗かれる心配がなくプライバシーを保ちやすいのは大きなメリットでしょう。
ただし周りにも高層マンションが建ちならぶエリアでは、基本的に向かい合った窓の設置は少ないものの、ゼロとはいえませんので内見時に確認してください。
眺望がよく開放感がある
高い位置からの眺望になるため、視界を遮るものが少なく、開放的な景色を日常的に楽しめます。
ただしこちらも上記同様、周りに高層マンションが多いエリアではそうとも限らないため、立地を確認しておくことが重要です。
日当たりが抜群
一般的に日当たりが良い南向きに対して、北向きは日当たりが悪いとされます。しかし、高層階であれば北向きでも日当たりが望めます。
とはいえ、立地に左右されるケースがありますから、事前の確認は必須です。
防犯性が高い
低層階は外からの侵入がしやすいものです。低層マンションであれば、屋上から上層階への侵入もしやすいですが、高層マンションの高層階では侵入しづらくなるため防犯性が高まります。
併せて高層マンションでは入口のセキュリティ対策が万全な建築物も多いため、より安心感が得られるでしょう。実際に
警視庁の「住まいる防犯110番」によると、マンションの高層階は3階以下に比べ、侵入犯罪に遭遇するケースが少ない傾向にあります。
ただし、マンションの高層階ほど「侵入手口」として玄関などの鍵付きの部屋からの侵入割合が増えています。
高層マンションにお住まいの方に多い、「セキュリティが万全だから、少しの時間なら大丈夫だろう」の意識で、戸締りせずにゴミ捨てや郵便物回収など、近くまで出かけた少しの時間に侵入されるケースが少なくないのだそうです。
高層マンションだから防犯面は安心、と慢心することなく、以下のような対策をすることが重要です。
戸締りや窓の施錠
むやみにインターフォンを開けない
自分以外を一緒にマンションに入らせないようにする
売却時にも高値になりやすい
高層階は賃貸でも分譲でも人気があります。投資用物件としてももちろん、将来的に引っ越しとなった際、売却時も価値が落ちにくいのもメリットです。人気があるため、「なかなか売却できず資金繰りに困る」といったリスクも避けやすいでしょう。
売却も視野に入っている場合には、築年数も重要です。早めの売却では価値の下落を防ぎやすいでしょう。また、マンションの構造や立地、エリアの人気度によっても査定価格は大きく異なります。
マンションの高層階に住むデメリット
マンションの高層階に住むデメリットについても見ておきましょう。
非常時の階段利用が大変
地震などで停電した場合、エレベーターが止まると非常階段で避難しなくてはなりません。当然ですが、高いほど階段を上り下りするのが大変になるため、デメリットとなりえます。
ただし水害被害に対しては、高層階は停電などのリスクはあるものの、床上浸水することはないでしょう。
地震時には高層階ほど揺れる
筆者も実際に東日本大震災時に、30階付近の高層階で経験しましたが、高いほど揺れます。周りも同様の高層オフィスビルがありましたが、「ゼリーで作ったタワー」のように揺れている光景を覚えています。
高層階ほど、地震時の家具の転倒対策は重要です。また、揺れが大きいため、とっさの避難を日常的にシミュレーションしておかないと、立ち回ることも難しいでしょう。
場合によっては、立っていることも困難な揺れに見舞われることも想定されますから、日ごろから避難経路や安全確保を意識した部屋作りをしておくのもおすすめです。
エレベーターの待ち時間が長い
特に朝の出勤時間帯はエレベーターが込み合い、なかなか到着せず10分近く待つ……という噂は嘘ではありません。
高層フロア専用のエレベーターのあるマンションであれば緩和されますが、高層階ほど待ち時間が長くなりがちですから、出かけるのが億劫になってしまうケースもあります。
高層階に住むのであれば、高層階専用エレベーターの有無も検討材料としておくことをおすすめします。
購入費用がかさむ
値下がり率が少なく、値下がりにくいものの、人気があるゆえに購入価格も高くなってしまうのがデメリットにもなります。
価格の相場として、1階の違いで0.5~2.5%差が出るため、1階と10階では5%以上差がつく計算です。そもそもの金額が大きいので、インパクトとしてはかなり大きく感じられるでしょう。
管理費用が高い場合が多い
「コンシェルジュがいる」「管理人・警備員が常駐している」「共有設備のメンテナンスや利用料が含まれている」といった理由から、管理費が高い物件が多いのが高層マンションです。
ローン金額や賃貸料金だけでなく、管理費負担も大きくなることを計算にいれて資金計画を立てましょう。一般的にタワーマンションの管理費は、一般的な相場の1.5倍からとされています。
マンションの高層階を選ぶときのポイント
マンションの高層階を選ぶなら、価格の高騰も踏まえると「自身が希望するライフスタイルが実現できる物件か」を検討基準としておくとよいでしょう。
なかでもしっかりチェックしていただきたいポイントを以下にまとめましたので、ご覧ください。
窓からの眺望や視線の気になる建物がないか
せっかく解放感を期待して高層階を購入しても、「向かいのビルからの目線が気になって、落ち着かない」などでは意味がありません。
特に居住用の高層物件が近くにある場合や、向かい合った窓のあるオフィスビルがあるなどの立地は避けておくとよいでしょう。避けられない場合でも、日中や夜間と時間を分けて内見し、それぞれの時間帯でどの程度気になるか入念にチェックするようにしてください。
高層階専用エレベーターがあるか
高層階ほどエレベーターの必要性が高いものです。日常的に利用する場合には不満なく利用できる設備かの確認は必須です。
できれば、高層階専用もしくは居住エリアごとにエレベーターが設置された、マンションの高層階の購入をおすすめします。
信頼できる不動産会社に相談する
高層階を購入する場合、やみくもに選ぶよりも構造や設備などしっかりと情報を持っている不動産会社に相談することをおすすめします。
信頼できるか否かを判断する場合は、以下の7つのポイントを基準としていただくとスムーズに判断できます。
- 担当者の対応が丁寧
- オフィス内・従業員に清潔感がある
- 急かすことなく判断させてくれる
- 希望を丁寧にヒアリングしてくれる
- 販売実績が豊富
- 見積内容が明瞭
- おとり物件がない
上記を参考にしていただければ、安心して取引できる不動産会社を見つけていただけるはずです。
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高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。