タワーマンションが空き家だらけといわれる理由は?空き住戸がもたらす問題点も解説

首都圏を中心に人気のあるタワーマンションは、将来空き家だらけになるといわれています。特に2000年代に入り、超高層マンション(20階以上のマンション)の新規竣工棟数が大幅に増加したため、時間の経過とともに空室・空き住戸が発生するリスクが指摘されています。

空き家だらけになったタワーマンションには、どのような問題があるのでしょうか。タワーマンションの空室化が進む理由や、空き住戸により発生する問題点を紹介します。

2023年の空き家数は過去最多の900万2,000戸に

総務省が行った「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万2,000戸と過去最多を記録しました。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.8%となり、過去最高となっています。

空き家を建て方別にみると、空き家総数に占める割合が比較的多いのが、マンションやアパートなどの共同住宅です。空き家のうち、戸建住宅が352万3,000戸(39.1%)であるのに対し、共同住宅は502万9,000戸(55.9%)に上ります。

マンションで空室・空き住戸が発生する要因には、以下のようなものが挙げられます。

区分空き住戸発生の要因
新築マンション売れ残り転売目的(未入居)
既存マンション転勤などによる長期不在売却・賃貸の困難化転居後や相続後の放置高齢者施設などへの入居(所有者の管理能力不足)所有者の所在不明相続人の不存在相続人の未確定

近年では、首都圏などに多い20階以上の超高層マンションにおいても、空き住戸が増えるリスクが懸念されています。

超高層マンションの「賃貸化」も進んでいる

平成30年度マンション総合調査によると、超高層マンションのうち、賃貸戸数の割合が10%を超えるマンションは約6割です。マンション全体の比率(36.9%)と比べると高い傾向にあります)。

また平成20年度の調査と比較すると、築10年以下・築10年超~20年以下の区分において、超高層マンションの賃貸戸数の割合が上昇しています。

築年数超高層マンションの賃貸戸数の割合
平成20年度調査平成30年度調査
築10年以下8.9%21.5%
築10年超~20年以下5.2%17.2%

この点から、過去10年間でタワーマンションの空室化や、賃貸化(区分所有者が住まず、賃貸物件として貸し出されること)が進んでいることが分かります。

タワーマンションが将来空き家だらけになるといわれる3つの理由

タワーマンションは今後、空室・空き住戸の割合がさらに増加するとみられています。タワーマンションが将来空き家だらけになるといわれる理由は3つあります。

  • 居住者が高齢化し、住み替えが行われるため
  • 2000年代に建設されたマンションが多く、大規模修繕工事が始まるため
  • 修繕積立金の不足により、生活環境の悪化が懸念されるため

居住者が高齢化し、住み替えが行われるため

1つ目の理由は、居住者の高齢化により、住み替えが行われるためです。

タワーマンションの居住者の多くは、中高年層だといわれています。たとえば、新宿区タワーマンション実態調査(令和元年度)によると、タワーマンションの居住者でもっとも多い世帯主の年齢層は、40歳以上~60歳未満(78.3%)です。

タワーマンションの居住者が高齢化すると、老後の生活を送りやすい戸建住宅や低層マンションへの住み替えが進むため、空室の増加につながります。

2000年代に建設されたマンションが多く、大規模修繕工事が始まるため

2つ目の理由は、2003年から2010年にかけて建設されたタワーマンションが多く、これから順次、大規模修繕工事の時期を迎えるからです。

国土交通省のガイドラインによると、マンションの長期修繕計画は、大規模修繕工事2回を含む30年以上の期間にわたって立てることが望ましいとされています。たとえば、2010年に竣工したタワーマンションの場合、2025年頃に第1回の大規模修繕工事がスタートするでしょう。

大規模修繕工事に必要な費用は、長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定し、居住者から毎月徴収しています。しかし、大規模修繕工事の費用が不足した場合、一時金の追加徴収が行われることも珍しくありません。

大規模修繕工事にともなう出費を避けるため、マンションの売却や住み替えを検討する人が増えることも考えられます。

修繕積立金の不足により、生活環境の悪化が懸念されるため

3つ目の理由は、修繕積立金の不足により、生活環境の悪化が懸念されるためです。

平成30年度マンション総合調査によると、修繕積立金の額が長期修繕計画と比べて不足しているマンションの割合は、全体の34.8%に上ります。

修繕積立金の積立状況割合
計画に対して20%の不足15.5%
計画に対して10%超~20%の不足2.5%
計画に対して5%超~10%の不足2.1%
計画に対して5%以下の不足14.7%
合計34.8%

毎月徴収される修繕積立金は、大規模修繕工事だけでなく、外壁や給排水管などの共用部分を補修するうえでも欠かせません。修繕積立金が不足し、共用部分の経年劣化が進むと、居住者の満足度が下がり空室が増える可能性があります。

空室だらけになったタワーマンションの3つの問題点

空室だらけになったタワーマンションには、大きく分けて3つの問題点があります。

  • 管理費の滞納が増加し、共有部分の清掃やメンテナンスが困難になる
  • 専有部分の管理不全により、隣接住戸に影響が及ぶ可能性がある
  • 長期修繕計画に影響が生じ、マンションの資産価値が低下する

管理費の滞納が増加し、共有部分の清掃やメンテナンスが困難になる

タワーマンションが空室だらけになり、居住者から管理費や修繕積立金を回収できなくなると、共有部分の管理がますます困難になります。

実際に築40年以上の高経年マンションでは、外壁の剥落や給排水管の老朽化など、共用部分の修繕不足が深刻な課題となっています。

高経年マンションにおける修繕不足の懸念割合
外壁などの剥落18%
鉄筋の露出・腐食14%
漏水や雨漏り40%
水道水から赤水発生4%
洗面台や台所、流しの排水のつまり12%
浴室やトイレの排水のつまり11%
給排水管の老朽化による漏水35%

※参考:国土交通省.「マンションを取り巻く現状について」

専有部分の管理不全により、隣接住戸に影響がおよぶ可能性がある

また空室が増えると、専有部分の管理が適切になされなくなり、隣接住戸にも影響がおよぶ可能性があります。たとえば、以下のようなケースです。

  • 排水トラップの封水が蒸発し、害虫や悪臭が発生する
  • 排水管のつまりや腐食、劣化が進み、水もれが発生する
  • 換気不足により室内に湿気がこもり、カビや害虫が発生する

またマンションの共用部分には、玄関ポーチや集合郵便ポストなど、居住者が専用使用権を持つ場所もあります。こうした専用使用部分の管理不全により、ほかの居住者が被害を受ける可能性もあるでしょう。

長期修繕計画に影響が生じ、マンションの資産価値が低下する

空室の増加により修繕積立金が不足すると、長期修繕計画にも影響が生じます。大規模修繕工事を適切に実施できない場合、建物や設備の老朽化が目立ち、マンション全体の資産価値が低下するリスクもあります。

もちろん、すべてのタワーマンションが管理不全により、空き家だらけになるわけではありません。空き住戸が発生しないようにするため、適切な予防策を講じている管理組合も存在します。

それでも将来に不安を感じる場合は、タワーマンションの資産価値が低下する前に売却を検討するとよいでしょう。