タワマン購入で節税になる理由を解説。税制改正で節税終了する?

タワーマンション購入による節税のメリットは少なくなったと言われています。その一方で、依然としてタワマンは人気で、購入するメリットは多いようです。

タワマンを買うと節税になる理由や税制改正の影響を解説します。

タワマン購入で節税になるカラクリとは?税制改正の影響も

立地や眺めの良さなどから人気が高いタワーマンション(タワマン)ですが、相続税を節税できるといわれています。節税できるカラクリとして、タワマンの物件価格と相続税評価額が関係します。タワマン節税について、税制改正の影響にもふれながら詳しくみていきましょう。

タワマン節税とは?

タワマン節税とはタワーマンションの特徴を利用し、物件の市場価格と相続税評価額(相続税の対象となる財産の評価額)の差額で節税することを指します。

相続税は相続財産が多いほど税率が高くなるため、相続税評価額を低くすることが、節税のポイントなのです。

現金を相続した場合そのまま相続税評価額になるのに対し、不動産を相続した場合は時価(実際の売買価格)の7〜8割で計算されます。

特にタワーマンションの場合は、通常のマンションより節税効果を生みやすいです。

節税効果を生みやすい大きな理由として、高層建築で縦長の構造であるタワーマンションは1つの土地に多くの部屋があります。土地の評価額を計算するには「所有面積」を用いますが、1つの土地で戸数が多い物件ほど1戸あたりの持分が小さくなるため、1戸あたりの土地の評価額が下がります。

市場価格と相続税の評価額の差額が大きくなるため、不動産投資としてタワマンを購入することで節税効果が得られるでしょう。

税制改正の影響

これまでタワマンは節税効果が高いため、富裕層を中心に需要がありました。しかし、税の公平性に欠けるとして、タワーマンションを含む居住用区分所有財産の評価について見直されることになりました。

2024年1月からは相続、遺贈または贈与により取得した「居住用の 区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の価額は、新たに定められた個別通達により評価されることになりました。

新たに区分所有補正率が導入され、市場価格と相続税評価額の差額は小さくなり、節税効果も縮小されます。

きっかけは、2022年4月の最高裁判決で財産評価基本通達6項を適用した課税処分が適法とされたことです。財産評価基本通達6項は、「通達にある評価方法では著しく不当と認められた場合に、国税庁長官の指示を受けて評価する」とされ、通常では適用されない規定でした。

ただし、最高裁の判決で適法とされたため、財産評価基本通達6項はお墨付きになったといえるでしょう。

タワマン節税は終了か

税制改正によりタワマンの相続税評価額が市場価格との差額が補正されることで、以前よりも節税効果が縮小することがわかりました。

では、今回の税制改正によってタワマン節税はもう終わりなのでしょうか。税制改正後のタワマン節税の現状について詳しくみていきましょう。

2024年1月以降は全マンションが相続・遺贈が新ルールの対象に

2024年1月1日以降に発生する相続・遺贈により取得したマンションについては、区分所有補正率が評価の計算で導入されます。区分所有補正率は評価乖離率、評価水準、区分所有補正率の順に算定されます。

計算方法
評価乖離率評価乖離率=A + B + C + D + 3.220・A:一棟の区分所有権物の築年数 × △0.033・B:一棟の区分所有建物の総階数指数 × 0.239・C:一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階 × 0.018・D:一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195
評価水準評価水準(評価乖離率の逆数)=1 ÷ 評価乖離率
区分所有補正率・評価水準<0.6:評価乖離率 × 0.6・0.6≦評価水準≦1:補正なし・1<評価水準:評価乖離率

市場価格からみて相続税評価額がどのくらいの水準であるかを示す評価水準が0.6未満である場合は大きく差額が発生していると評価され、区分所有補正率により相続税評価額が引き上げられます。

特にプレミアム価格の不動産は税金が増える可能性がある

今回の税制改正により市場価格が高いタワマンは、区分所有補正率によって相続税価格も大幅に上昇するケースがあり、税金が増える可能性があります。

新築マンションやデザイナーズマンションは希少性などから通常のマンション価格よりも上乗せされたプレミアム価格で販売されるケースが多くみられます。

すると従来の計算で算出された相続税評価額ではプレミアム価格との差額が高額になるため、大幅に乖離していると評価され相続税評価額が補正される可能性が高いです。新築マンションやデザイナーズマンションを購入する場合は、節税効果はあまり期待しないほうが良いでしょう。

4割程度の節税は継続して行える

今回の税制改正では、評価水準が0.6未満であれば区分所有補正率により相続税評価額の引き上げが行われます。ただし、0.6以上から1であれば補正が行われないため、最大で4割程度の節税効果は得られる可能性があります。

今回の税制改正が行われた背景は行き過ぎたマンション節税により税の公平性が欠ける点にあり、マンション節税そのものは認められています。よって、市場価格と相続税評価額の差額が4割未満に抑えられると節税を継続して行えると考えて良いでしょう。

居住用の不動産の評価を減らす特例は有効

タワマンは小規模宅地等の特例が適用しやすく、居住用の不動産の評価を減らせる効果があります。小規模宅地等の特例とは、相続や遺贈によって取得した不動産で、相続開始の直前までに被相続人等の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の面積までの部分を減額するものです。

居住用として使用していた場合は330㎡以内であれば80%減額されます。首都圏マンションの専有面積の平均は2022年で66.12㎡であることから、タワマンは小規模宅地等の特例が適用しやすいといえます。ただし、区分所有建物である旨の登記がされている建物であるなど一定の条件があるため、特例を適用する場合は条件に該当するかを確認しましょう。

タワマンの資産価値への影響はほとんどないと予想される

タワマンの購入理由として利便性や眺望といった居住目的が主要になっているため、税制改正によってタワマンの資産価値への影響はほとんどないと予想されます。

また、効果が減少したとはいえ現金での相続と比較してまだまだ節税が可能です。

ただし、周辺環境の変化などでマンション価格は下落する可能性も考えられます。節税効果が出ても、市場価格が下落するとメリットが相殺される恐れもあるため、注意が必要です。

タワマン節税は、不動産市場の動向やマンション価値の変動の熟慮も重要ですから、 不動産会社からの最新情報とアドバイスが不可欠といえるでしょう。

それでも人気?タワマンを購入するメリット・デメリット

ここまで2024年からスタートした居住用の区分所有財産の評価の変更点を中心にみてきましたが、税制改正してもタワマンは人気がある物件です。タワマンを購入するメリット・デメリットについて詳しくみていきましょう。

タワマン購入のメリット

タワマン購入のメリットとして、主に下記のような点があります。

  • 眺望が良い
  • 耐震性に優れている
  • マンション周辺の環境が良い
  • 居住者限定のサービスが充実している
  • 資産価値が高い

タワマンは高層階になるほど、眺望が良く居住しながら景色が見渡せることが大きなメリットといえるでしょう。

耐震構造もしっかりしているので、地震によって建物が倒壊するリスクが抑えられています。

他にもマンション周辺の利便性が高い点や、資産価値が高い傾向にある点などもメリットに挙げられるでしょう。

タワマン購入のデメリット

タワマン購入のデメリットもいくつかありますが、主なものとして下記のような点があります。

  • エレベーターが混みやすい
  • 災害時に支障が出る可能性がある
  • 節税目的で購入すると否認される可能性がある

タワマンは通勤時間にエレベーターが混みやすいです。高階層に住むほど低階層の人が同じエレベーターにたくさん乗ります。地震などで停電になり、エレベーターが停止すると生活に支障が生じるでしょう。

デメリットで特に気をつけたいのが、節税目的で購入すると追税課税されより多くの税金がかかる可能性がある点です。

国税庁がより厳しくチェックするようになったため、大きな節税を狙ってタワマンを購入すると否認されるケースもあります。

節税だけでタワマン購入するのではなく、住みやすさや利便性なども考慮して購入することをおすすめします。

タワマン購入の相続税以外の節税メリット

タワマン購入にあたって、相続税以外にも節税につながるメリットがいくつかあります。タワマン節税で活用できる制度や特例について詳しくみていきましょう。

貸家建付地の評価が適用される

貸家建付地は「人に貸している不動産は、所有者の自由にできない」点を理由として、評価額の減額をしてもらう制度です。

タワーマンションを賃貸にして「貸家建付地」にしても、相続税評価を下げられるのです。

固定資産評価額を小さくできる

マンションの土地の固定資産評価額は一軒家に比べ、小さくなりやすいです。なぜなら、マンションの土地面積に対して所有している割合がどのくらいかによって評価されるからです。

高層であるタワマンは戸数が多いため、低層のマンションと比較すると持分となる土地や建物の面積が小さくなる傾向にあります。

小規模宅地の特例が適用される

マンションは小規模宅地等の特例が適用されます。小規模宅地等の特例は一定の面積までの評価額を減額できるもので、居住用の宅地で330㎡以内であれば80%減額されます。

専有面積が一軒家と比較すると小さいマンションは小規模宅地等の蓄冷が適用されやすいです。

タワマン購入は税金・法律に詳しい不動産会社に相談

タワマンを購入する際はゆくゆく発生しうる税金について考慮することをおすすめします。タワマン節税はタワマンの今後の市場価格を把握する必要があり、かつ今回紹介した特例を適用するためには、専門的な知識も必要です。

そのため、タワマンを購入する際は税金や法律に詳しい不動産会社を選択して相談すると良いでしょう。税理士や弁護士に相談するのも方法の1つではありますが、不動産の専門的知識や最新の情報を保有している不動産会社に任せると安心です。口コミなどで不動産会社を探す場合は、保有している資格についても確認しておきましょう。