東京で深刻な空き家問題|放置するリスクや空き家の活用方法を解説

全国的に空き家は年々増加しており、東京でも空き家問題は深刻化しています。

空き家を放置していると建物の倒壊、周囲の衛生環境や景観の悪化を招くだけでなく、罰則や罰金の対象になる可能性もあります。

そのため、所有している方は適切な対応方法や活用方法を検討する必要があるでしょう。

この記事では、東京の空き家問題に焦点を充てて放置するリスクや国の法令、空き家の活用方法についても具体的に解説します。

全国的に年々増加している空き家数

統計局が2023年8月25日に公表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」によれば、国内には約900万戸の空き家があります。

その数は過去最高とのことで、総住宅数に対して空き家の割合は13.8%と高めです。

空き家の数、総住宅数に対する空き家の割合は、1978年からともに増加傾向にあり、全国的な問題となっています。

東京で急増している空き家の実態

空き家は日本全国で増加傾向にありますが、特に顕著なのが東京です。

東京都の公式発表によれば、2018年時点での東京の空き家数は約81万あり、2003年に一度減少しましたが、数自体は年々増え続けています。

東京は世界有数の大都市で、2024年時点での人口は約1400万人ですが、空き家問題は地方都市同様に深刻です。

東京都は人口が多いですが持ち家率は低く、両親が亡くなって実家を相続したり、一軒家からマンションに引っ越したりして、空き家になってしまうことが多々あります。

一方、住宅価格は高いため、空き家があっても金銭的に手を出すのが難しいのも一因です。

東京都内で空き家を放置するリスク

空き家を放置することでさまざまなリスクが発生します。

場合によっては自身が損害を被るだけでなく、近隣住民に迷惑をかけてしまい、損害賠償に発展するケースもあります。

そのため、空き家を放置するとどのようなリスクがあるのか事前に把握しておきましょう。

地域の治安悪化を招く

空き家を長期間放置すると、地域の治安悪化を招くおそれがあります。

特に所有者が適切に管理しておらず、いつも人の気配がない空き家は、不審者が住み着くかもしれません。

また空き家には火災リスクがあります。人気がないので放火されるかもしれませんし、電気設備の劣化やガス漏れなどが原因で発火することも考えられます。

空き家は放置されたゴミなど燃えるものも多く、加えて火事に気が付く人もいないため、被害が大きくなりがちです。

特に東京都は住宅が密集しているため、周囲に害が及ぶ可能性は高いでしょう。

空き家で火事が起き、近隣住宅に被害が及んだ場合、故意または過失による失火なら損害賠償を負う必要はありませんが、重大な過失がある場合はその限りではありません。

環境衛生が悪化する

空き家は人が住んでいる家と違い、住民による管理、掃除が行われないため、周辺の衛生環境に悪影響を与えやすいです。

特に注意が必要なのが害獣や害虫の発生です。最近は東京都内でも害獣問題が深刻化しています。

たとえば、ネズミやゴキブリは繁殖力が強く容易に増える上、さまざまな病気を媒介します。

さらに、シロアリは住宅の基礎や柱を食い荒らし、建物の構造に深刻な被害を与える可能性もあるため注意が必要です。

空き家にスズメバチ、アライグマなどが住み着き、近隣住民に被害を与えるかもしれません。

また、空き家が不法投棄のターゲットになることも考えられるため、悪臭、害獣や害虫の発生の原因とならないように適切な管理が必要です。

建物や塀などの倒壊による危険性

家は人が住まなくなると一気に劣化が進むといわれています。

不動産には法定耐用年数(法律で定められた使用できる期間)が定められており、木造の家の場合は22年、レンガ造は38年、・鉄筋コンクリート造は47年となっています。

法定耐用年数が過ぎたからといって建物がすぐに倒壊したり、老朽化して住めなくなったりするわけではありません。

しかし、適切に管理をしないと強風によって外壁が落下、ブロック塀が倒壊などの危険性があり、地域住民や偶然通りがかった人が被害に遭うことも考えられます。

資産価値が下がる

空き家は資産価値が下がりやすいことも問題の一つです。

人が住んでいる住宅の場合、雨漏りや外壁の剥がれなどをすぐに発見できますし、定期的な換気や清掃も行われます。

一方、空き家にはそうした人の手が入らないため、短期間放置しただけでもさまざまな問題が起き、資産価値は急激に下がっていきます。

空き家でも定期的に訪れて清掃や換気を行えば、ある程度は資産価値の下落を遅らせることはできますが、やはり時間がたつにつれて価値が下がっていくことは間違いありません。

空き家を放置すると罰則や罰金の対象になる場合がある

状態の悪い空き家を放置し続けた場合、市区町村から「特定空家」の認定を受けることがあります。

特定空家に認められた場合、市区町村から助言や指導が行われ、それでも改善が見られない場合は勧告、命令、行政代執行が行われます。

命令に従わなかった場合、50万円以下の過料に処されるかもしれません。

また、2024年4月1日に相続登記が義務化されました。

2024年4月1日より前に相続が開始した場合も義務化の対象であり、その場合は2027年3月31日までに登記を行う必要があります。

所有権の取得を知った日もしくは遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の罰金の適用対象となるため注意が必要です。

特定空家とは

特定空家とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」と表記)」によって定められた、周囲に危害を加えるおそれのある空き家です。

具体的には、以下のような条件を満たすものが特定空家です。

  • 放置すると倒壊のリスクがある
  • 衛生上、非常に有害となるおそれがある
  • 著しく景観を損なっている
  • 周辺環境の保全のために放置することが不適切である

特定空家に認定された場合、前述した通り過料や行政代執行のリスクがあるほか、固定資産税や都市計画税の特例が受けられなくなります。

そのため一般的な住宅の場合、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍に増加するかもしれません。

2023年に厳格化した改正空家法

空家法は特定空家になる前の住宅には指導や勧告ができないため、対応に限界があるとして2023年改正されました。

この改正では、管理不全空家という空き家の定義が新設されました。

管理不全空家とは、放置することで特定空家になるおそれのある空き家のことです。

法改正により、市区町村は管理不全空家を認定し、所有者に対して管理指針に即した指導を行えるようになりました。

指導による改善が見られない場合、市区町村は勧告を行います。

勧告を受けた管理不全空家は、特定空家と同様に固定資産税の特例を受けられなくなります。

空き家の活用方法

前述した通り、空き家を放置すると近隣住民に対して不利益を与えるだけでなく、最悪の場合過料や損害賠償を求められます。

空き家問題を他人事として捉えず、深刻化する前に対処することが大切です。

地方公共団体(自治体)の活用サービスを利用する

所有している空き家を誰かに使ってもらいたい場合は、地方公共団体(自治体)が行っている活用サービスを利用するとよいかもしれません。

地方公共団体によって取り組み方は異なりますが、たとえば東京都世田谷区では空き家の所有者や関係者が専門家に相談できる「せたがや空き家活用ナビ」を運営しています。

せたがや空き家活用ナビは、世田谷区と協定を締結した空き家活用株式会社によって運営されており、無料で相談が可能です。

地方公共団体によって提供されているサービスはさまざまですので、まずはお住まいの市区町村の役所に問い合わせてみましょう。

修繕して売却・賃貸に出す

空き家がまだ十分に使える場合は、修繕をした上で売却したり、賃貸に出したりすると、収益が得られるかもしれません。

売却するメリットは、まとまった資金を得つつ、空き家を手放せることです。

また、売ってしまえば解体費用もかかりませんし、管理費用や固定資産税・都市計画税の支払いからも解放されます。

面倒事をなくしたい方は、空き家を売却したほうがいいでしょう。

一方、賃貸のメリットは、継続的な家賃収入が得られることです。

売却ほどまとまったお金は入ってきませんが、入居者がいれば毎月安定した収入が期待でき、金銭的にはもちろん精神的にも余裕が生まれます。

一方で、賃貸経営に手間や労力がかかるという問題点もあります。場合によっては、管理会社に委託したほうがいいかもしれません。

空き家の管理サービスを利用する

売却や賃貸が難しく、解体費用もすぐに捻出できない場合は、空き家管理会社による「管理委託サービス」を利用するといいでしょう。

空き家管理会社は定期的な空き家の巡回、清掃、外部チェック、通風や換気などのサービスを提供しています。

費用はサービスの内容、空き家の大きさなどによって違います。

また、空き家管理会社ごとに得意としているサービスや対応地域にも差があるため、利用する際には複数の会社を比較検討し、信頼できるところを選ぶようにしましょう。