家の住み替えは高く売ろうとして判断を誤ったり、資金計画が不十分だと失敗する可能性があります。
家の住み替えにおける失敗例と、失敗を回避するための方法をお伝えします。
目次
家の住み替えにおける失敗事例と対策
家の住み替えでは、高すぎる売却価格の設定や曖昧な決断、不十分な資金計画が失敗の主な原因です。
専門家のアドバイスを受けながら、十分な準備と情報収集を行うことで、理想的な住み替えが実現できます。
下記に失敗事例と対策について、解説していきます。
少しでも高く売ろうとして裏目に出る
少しでも家を高く売ろうとして裏目に出ることがあります。
相場より高い価格設定や値段交渉に応じない姿勢は、売却期間の長期化や最終的な値下げになる可能性が高いです。
相場以上の売却価格で売り続ける
相場以上の価格で売り続けると物件が長期間市場に残り、売れ残りの印象を与えます。結果的に大幅値下げを強いられるのです。
適正価格での売り出しが、スムーズな売却と住み替えの成功につながるでしょう。
買い手との値段交渉に応じない
買い手との値段交渉に柔軟性を欠くと、良い購入者を逃す可能性があります。
たとえば、50万円の値引き要求を拒否し、結果的に3カ月後に100万円以上値下げしないと売れないケースもあります。
適度な交渉の余地を持つことで、スムーズな売却につながります。金額以外の条件で折り合いをつけることも検討しましょう。
リフォームした分高く売れるわけではない
リフォームが必ずしも売却価格に反映されるとは限りません。
たとえば、200万円かけてキッチンを改装したが、買主の好みと合わず50万円しか上乗せできなかったケースがあります。
過度なリフォームは避け、クリーニングや軽微な修繕にとどめるのが賢明です。
大規模な改装を検討する場合は、必ず不動産業者に相談しましょう。
売却や購入を急ぎすぎる
売却や購入を急ぎすぎると、不利な条件での取引や後悔につながる可能性が高いです。
たとえば、転勤が決まり2カ月で売却を急いだ結果、相場より15%安く売却したケースがあります。
また新居選びを1週間で決めて、周辺環境の確認を怠り、騒音問題に悩まされるという例もあります。
十分な時間をかけ、慎重に判断することが重要です。
急いでないのに買取を依頼する
急ぐ必要がないのに買取を依頼すると、市場価格よりも大幅に安く売却してしまう可能性があります。
通常売却なら3,000万円で売れる物件を、買取で2,400万円で売却したケースがあります。
買取は迅速な現金化が可能ですが、通常20%〜30%程度安くなることが多いです。
時間に余裕がある場合は、仲介売却を選択し、最適な価格での取引を目指しましょう。
新居の立地状況がイメージと違っていた
新居の立地状況を十分確認せずに購入すると、期待と現実のギャップを感じるかもしれません。
たとえば、1度の内覧だけで決めた新居が、実は交通量の多い道路に面していて騒音に悩まされたケースがあります。
また、最寄り駅まで「徒歩10分」と聞いていたが、実際は急な坂道で体力的に厳しかったという事例もあります。
複数回の現地確認と、様々な時間帯での周辺環境のチェックが重要です。
資金計画など見通しが甘い
資金計画の見通しが甘いと、住み替え後の生活に大きな支障をきたす可能性があります。
ローンの返済額を楽観視し、予想外の諸経費や税金で家計が圧迫されたケースがあります。また、売却益を過大に見積もり、新居購入後に資金不足に陥ることもあるようです。
綿密な資金計画を立て、専門家のアドバイスを受けながら、余裕を持った予算設定をすることが重要です。
必要な費用や税金、控除を確認せずに進める
必要な費用や税金、控除を事前に確認せずに住み替えを進めると、予想外の出費に苦しむ可能性が高いです。売却時の譲渡所得税や購入時の不動産取得税を考慮せず、手元資金が大幅に目減りしたケースがあります。
一方、住宅ローン控除を知らずに損をしたという例もあります。
事前に税理士や不動産の専門家に相談し、すべての費用と節税策を把握することが重要です。
関連記事:家の住み替え時にかかる税金とは?利用できる特例・控除制度も併せて解説
新居の購入後に売却が決まらずダブルローン
新居購入後にも、もともとの家の売却が決まらずダブルローンに陥るケースがあります。
ダブルローンとは、新居のローンももともとの家のローンも組んでいる状況を指します。
ダブルローンを避けるには売却を優先するか、「売却が決まらない場合はキャンセル可能」な条件をつけるなどの対策が有効です。
また内覧の多い土日祝は必ず家を空けないように対策し、売却チャンスを逃さないことが重要です。
関連記事:住み替えで住宅ローンが二重になっても大丈夫?銀行は融資してくれるのか
新居が決まらず仮住まい
新居が決まらず仮住まいを余儀なくされると、予想外の出費や手間が発生します。
たとえば、3カ月の予定が半年に延び、家賃や引っ越し費用が倍になったケースもあります。
また仮住まいの間、荷物を保管する倉庫代も必要になるかもしれません。
予想外の出費や手間を避けるには、新居探しに十分な時間を確保し、売却と購入のタイミングを慎重に調整することが重要です。必要に応じて、売却時の引き渡し日を柔軟に設定するなどの交渉も検討しましょう。
家の住み替え成功例から学ぶ、失敗を防ぐ方法
家の住み替え成功例から学び、失敗を防ぐ方法を解説します。
住み替えを成功させるには、慎重な計画と適切な判断が不可欠です。成功例から学べる重要なポイントとして、以下が挙げられます。
事前に綿密な資金計画を立てる
専門家のアドバイスを積極的に求める
柔軟な対応と決断力を持つ
売却と購入のタイミングを慎重に検討する
将来のライフスタイルを考慮する
長期的な視点を持つ
信頼できる不動産会社を選ぶ
これらのポイントを押さえることで、住み替えの失敗リスクを軽減し、スムーズな住み替えを実現できる可能性が高まります。個々の状況に応じて、専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法を選択することがおすすめです。
以下に、重要なポイントの詳細を解説していきます。
事前に売り先行か買い先行か話し合って決める
住み替え成功の鍵は、売り先行か買い先行かの慎重な選択です。
まず家を売って資金を確保する「売り先行」は資金計画が立てやすいですが、仮住まいが必要になる可能性があります。
家を売却する前に新居を購入する「買い先行」は理想の物件を逃さず購入できますが、資金面のリスクが高くなります。
選択は個々の状況により、資金に余裕があれば買い先行、資金計画を重視するなら売り先行が適しているでしょう。
家族や専門家と相談し、最適な方法を選んでください。
買取保証をつけておくと安心?
買取保証サービスを行っている不動産会社もあります。買取保証とは一定期間内に売れない場合、不動産会社が買い取るサービスです。
確実な売却見込みで資金計画が立てやすくなりますが、価格は市場より低めです。まずは市場での売却を目指し、買取保証は最終手段と考えましょう。
条件などを確認し、信頼できる不動産会社と相談して検討することで、柔軟でスムーズな住み替えが可能になります。
ローン残債を返済できない場合は住み替えローンが便利
住み替え時に現在の住宅ローン残債が売却したお金で返済できない場合、住み替えローンが便利です。
これは残債と新居購入資金を合わせて借り入れできるローンです。
たとえば、残債2,000万円、売却金1,800万円、新居3,000万円の場合、3,200万円を借りて残債返済と新居購入を同時に実現できます。
ただし、借り入れ額が増えるため返済計画は慎重に立て、複数の金融機関の条件を比較検討しましょう。
信頼できる不動産会社に依頼する
住み替え成功の鍵は、信頼できる不動産会社選びです。
顧客のことを真剣に考え、売却と購入の両面でサポートしてくれる会社を選びましょう。一社で両方を相談すると、同時並行で進めやすくなります。
信頼の見極めには、宅地建物取引業者免許番号の確認や、全日本不動産協会などへの加入状況をチェックするのが有効です。
適切な会社選びで、安心して住み替えを進め、理想の新生活を実現できるでしょう。
家の住み替えの選択肢
住み替えを考える際には、さまざまな選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自分に最適な選択をすることが重要です。ここでは、主な選択肢のメリット・デメリットと、デメリットの解消方法を簡潔に紹介します。
戸建てとマンション
ハウスメーカーと工務店
新築と中古
持ち家と賃貸
これらの選択肢について、それぞれメリット・デメリットと解消方法を含めて説明していきます。個々の状況や優先事項に応じて、最適な選択肢を検討することが大切です。
住み替えとは?
住み替えとは、現在の住居から新しい住居へ移ることで、多くの場合、現住居の売却や新居の購入、賃借を含みます。
生活環境の改善や家族構成の変化への対応といったメリットがある一方、高額な費用がかかることや手続きが複雑なことなどデメリットもあります。
これらの課題を解決するには、綿密な資金計画を考えることや信頼できる不動産会社への相談、新居周辺の十分な下見が効果的です。
住み替えは大きな決断ですが、適切な準備により、より快適な住環境を実現できる機会となります。
戸建とマンションどちらがいい?
戸建とマンションの選択は、生活スタイルと優先順位によって異なります。
戸建は、プライバシーの保たれやすさと自由度の高い暮らしが魅力です。ただし、維持管理に費用だけでなく手間がかかります。マンションと違い、戸建ての管理は自分で行う必要があります。
維持管理にかかる手間と費用は、定期的なメンテナンス計画で負担を軽減できます。
マンションはセキュリティが充実し、管理が比較的楽です。立地の良い物件も多いですが、隣人との距離が近く、大規模改装が難しい面があります。自身での防音対策や収納の工夫で快適さを高められます。
どちらがいいかは、家族構成や将来設計、予算などを考慮し、自分に合った選択をすることが大切です。
家を建てるならハウスメーカー?工務店?
ハウスメーカーは豊富な実績と安定した品質、充実したアフターサービスが魅力ですが、カスタマイズの自由度が低く、コストが高めです。
一方、工務店はオーダーメイドの家が建てられ、地域に適した設計が可能ですが、アフターサービスが不安定な場合があります。
ハウスメーカーでは細かい要望を伝え、オプションを活用して自由度を高められます。
工務店では実績や評判を調査し、アフターサービスを事前確認しましょう。
予算や希望する間取り、デザイン、アフターサービスの重要度などを考慮し、複数の会社に相談して比較検討することをおすすめします。
住み替えるなら新築?中古?
新築は最新設備と自由なカスタマイズが魅力ですが、価格が高く立地選択が限られます。
中古は比較的安価で好立地の物件が見つかりやすいものの、設備の古さやリフォームの必要性がデメリットです。
新築では、コストパフォーマンスの高い建築会社選びが重要です。中古は、専門家による建物診断とリフォーム費用の検討が賢明です。
予算や希望の立地、こだわりの設備を総合的に考え、自分に合った選択をしましょう。
新築・中古にはそれぞれ長所短所があるため、個々の優先事項に基づいて判断することが大切です。
持ち家と賃貸どちらがいい?
持ち家は資産形成にもなり自由なリフォームが可能ですが、初期投資が高額です。
賃貸は初期費用が少なく生活変化に柔軟対応できますが、家賃は資産にならず改装の自由度も低いです。
持ち家では長期的な資金計画が重要で、賃貸ではオーナーとの交渉で一部改装可能な場合もあります。
将来の収入や家族計画、仕事の安定性を考慮し、ライフスタイルに合った選択をしましょう。持ち家と賃貸には一長一短があるため、個人の状況と優先事項に基づいて判断することが大切です。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。