マンションを貸すときは、適切な家賃設定が欠かせません。
また、経営にかかる費用や税金についても正しく理解しておく必要があります。
本記事では、家賃相場の調べ方、経営に必要な費用や税金など必要な情報をわかりやすく解説しています。
目次
マンションの家賃相場の調べ方
マンションを賃貸に出す際、最初に直面する課題が適切な賃料設定です。
賃料が高すぎれば入居者が見つからず、安すぎれば毎月の収益が低下してしまいます。
そのため、周辺にあるマンションの賃料相場を十分に調査し、適切な価格に設定することが大切です。
家賃相場の確認方法
マンションの家賃相場を調べる方法としては、主に「オンラインでの調査」と「専門家への相談」という2つのアプローチがあります。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
不動産サイトでの相場確認
SUUMOやLIFULL HOME’S、アットホームなどの大手不動産ポータルサイトでは、地域ごとの賃貸物件を簡単に確認することができます。
類似物件の相場を知ることができるので、物件の適正賃料を判断するのに便利です。
具体的な確認方法としては、まず自分の物件と同じエリアにあり、築年数や間取りが近い物件の情報を複数集めます。
そして、ピックアップした物件の賃料の平均値を算出するのがおすすめです。
ただし、掲載されている賃料は希望価格であることが多いため、実際の成約賃料はこれより若干低くなる可能性があります。
不動産会社への査定依頼
より正確な相場を知るためには、地域の不動産会社に査定を依頼するのが確実です。
不動産会社は実際の成約事例や市場動向についての詳しい情報を持っているため、より現実的なアドバイスを受けられるでしょう。
また、複数の不動産会社に査定を依頼することで、より客観的な相場を把握できます。
査定は通常無料で行われますが、その後の管理委託を前提としている場合もあるため、事前に条件を確認しておくことが重要です。
家賃相場に影響する要素
マンションの家賃相場はさまざまな要因によって決定されます。
要因を理解することでより適切な賃料設定ができるようになるでしょう。
立地条件
立地条件は家賃相場を左右する重要な要素の一つです。
最寄り駅からの距離は特に重要で、一般的に徒歩10分以内であることが望ましいとされています。
そのほか、立地条件で確認すべき内容をまとめてみました。
- 徒歩圏内にスーパーやコンビニがあるか
- 教育施設や病院へのアクセスが良いか
- 公園や緑地は近くにあるか
- 地域の治安が良いかなど
これらの条件が充実している物件ほど、高い賃料設定が可能となります。
また、都心部へのアクセスの良さは、多くの入居希望者が重視しているポイントです。
築年数
築年数による賃料への影響は段階的に現れます。
新築から3年程度は最も高い賃料設定が可能で、その後徐々に低下していく傾向にあります。
入居者は、できるだけ新しい物件に入居したいと考える傾向にあるためです。
ただし、適切なリノベーションを行うことで、築古のマンションでも相場より高めの賃料設定が可能です。
特に、キッチンやバスルームなど水回りの設備を最新のものに変更することで、築年数のデメリットを軽減することができます。
参考:株式会社三井住友トラスト基礎研究所 | 経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由
間取り・専有面積
間取りや専有面積は、入居者のライフスタイルや家族構成に直接関わる要素です。
一般的に1R/1Kは単身者向けで回転率が高く、1LDK/2DKは若いカップル向け、2LDK/3DK以上は家族向けとなっています。
間取りが広くなるほど賃料は上がりますが、同時にターゲット層が限定されるでしょう。
そのため、マンションの立地とターゲット層の相性を考慮する必要があります。
マンションを貸す際の費用と収支
マンション経営を始める場合、さまざまな費用が発生します。
賃貸経営で失敗しないためには費用を正確に把握し、収支計画を立てることが大切です。
初期費用
賃貸マンション経営を始める場合、必ず初期投資がかかります。
適切に初期投資をかけることで物件の価値を高め、長期的な収益性の向上につながるのです。
ここでは、主な初期費用の内訳と費用相場をご紹介します。
リフォーム費用
リフォームの範囲や内容は物件の状態によって異なりますが、一般的な費用の目安は以下の通りです。
- クロス張り替え:3~5万円/㎡
- フローリング張り替え:10~15万円/㎡
- キッチン交換:30~100万円
- ユニットバス交換:50~80万円
- トイレ交換:15~30万円
これらの投資は、物件の魅力を高め、良質な入居者の確保や賃料の維持向上につながる重要な要素となります。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼する際の手数料は、一般的に賃料1カ月分程度が相場です。
国により家賃1カ月分×1.1倍以内の金額と定められています。
仲介手数料は初期投資の一部として、計画に組み込んでおくとよいでしょう。
また、複数の不動産会社に依頼する場合は、それぞれの手数料を比較検討することで、より効率的な投資が可能になります。
参考:国土交通省 | 建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ
運営費用
賃貸マンション経営では、継続的に発生する運営費用についても理解しなくてはいけません。
毎月の運営費用を適切に管理することは、純収益を計算する上でも重要です。
管理手数料
管理会社に委託する場合の手数料は以下の通りです。
- 基本管理費:賃料の3~5%
- 契約更新時の手続き費用:1~2万円程度
- 退去時の立会い費用:1~2万円程度
管理会社によって費用とサービス内容が異なるため、複数の会社を比較検討することが大切です。
修繕費用
修繕費用はマンションの維持管理において不可欠な支出です。
小規模な修繕から大規模な修繕まで、計画的な準備が必要となります。
修繕内容は、経年劣化による設備の交換や外装・外壁の補修、共用部の修繕などさまざまです。
月々の収入から一定額を修繕積立金として確保しておくことで、突発的な支出にも対応できる体制を整えることができます。
火災保険料
火災保険は賃貸マンション経営において必須の保険です。
保険料は物件の規模や補償内容によって異なりますが、年間5〜15万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
保険の選択にあたっては、補償内容と保険料のバランスを考慮し、物件の特性に合った保険プランを選択してください。
マンションを貸す手順と流れ
マンションを賃貸に出す際は、手順をきちんと理解しておくことが大切です。
ここでは、スムーズな運営開始ができるようになるためのポイントを解説していきます。
賃貸管理会社の選び方
賃貸管理会社の選択は経営する上で非常に重要です。
信頼できる管理会社と協力関係を築くことで、安定した経営が可能となります。
管理委託のメリット・デメリット
管理会社への委託はメリットとデメリットがあります。
入居者募集から契約管理、トラブル対応まで一括で任せられる便利さがある一方で、管理手数料という継続的なコストが発生します。
また、オーナーの意向が反映されにくい会社もあるようなので、管理会社との密にコミュニケーションを取るようにしましょう。
管理会社の選定ポイント
管理会社を選ぶ際の重要なポイントとして、以下の項目が挙げられます。
- 管理実績と創業年数
- 提供サービスの範囲と質
- 管理手数料の水準
- 緊急時の対応体制
特に、対応している地域での評判や知名度、財務状況の健全性なども判断材料となります。
賃貸契約の種類と特徴
賃貸契約の選択はマンションの経営に大きく影響します。
それぞれの特徴を理解し、物件の特性や経営目標に合わせて適切な契約形態を選択しましょう。
普通借家契約
一般的な契約形態である普通借家契約は、入居者の権利保護が強く、安定した賃貸経営が可能です。
契約期間は通常2年に設定されており、借主が希望すれば更新することができます。
一方で、契約期間満了後も正当な理由がなければ貸主は更新を拒否できず、賃料改定にも入居者の同意が必要です。
長期的な経営を前提とした場合、この契約形態が適しているといえます。
定期借家契約
定期借家契約は、期間満了時に必ず契約を終了できるのが特徴です。
あらかじめ契約期間の終了と退去について書面で知らせているので、期間が終了すると借主は物件から退去しなくてはいけません。
契約期間中の解約には特約が必要であり、更新がないため賃料の見直しがしやすいといわれています。
出張など一定の期間中だけマンションを貸したい方に適した方法です。
サブリース契約
サブリース契約は、貸主の物件を管理会社が一括で借り上げ、その物件を借主に貸す(転貸)仕組みです。
家賃保証により安定した収入が得られる一方で、相場よりも低い80〜90%程度の賃料設定となることが一般的です。
また、契約期間が10年以上と長期になることが多く、中途解約は違約金が発生することがあるため、慎重な対応が必要です。
マンションを貸す際の税金と確定申告
適切な税務管理は、賃貸マンション経営において非常に重要です。
ここでは、確定申告の手続きや経費計上、節税対策について詳しく解説していきます。
必要な確定申告の手続き
賃貸収入で利益が出たときは、不動産所得として確定申告が必要です。
確定申告で不動産所得の項目を正しく記載するには、収支報告書の作成、帳簿の記帳、領収書の保管などを行わなくてはいけません。
これらの手続きは税理士に依頼することで、正確かつ効率的に行うことができます。
計上できる経費の種類
賃貸経営では多くの費用を経費として計上することができます。
主な経費としては以下の通りです。
- 減価償却費
- 管理費・修繕費
- 保険料
- 固定資産税・都市計画税
- 借入金の利息
- 仲介手数料
- 税理士報酬
- 消耗品費など
賃貸経営でかかった経費を適切に計上することで、節税効果が期待できます。
ただし、経費として認められるのは不動産投資に直接関連する支出のみですので、プライベートの経費は計上できません。
節税のポイント
賃貸経営における節税対策は、法令に則って適切に行ってください。
減価償却や青色申告の活用、各種保険の活用など、方法はさまざまです。
不適切な処理は税務調査の対象となる可能性があるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
マンションを貸す際のトラブル防止と対策
賃貸マンション経営では、多様なトラブルが発生する可能性があります。
しかし、事前の対策と適切な対応により、多くのトラブルを未然に防ぐことが可能です。
ここでは、一般的なトラブルとその対策について詳しく解説していきます。
入居者とのトラブル対策
入居者とのトラブルは、賃貸経営において最も頻繁に発生する課題の一つです。
特に多いのが、家賃の滞納、騒音問題、共用部分の利用方法です。
これらのトラブルを防ぐためには、入居者の選定段階から慎重な対応を行いましょう。
入居者の審査では収入証明書や勤務先の確認のほか、必要に応じて連帯保証人の設定や家賃保証会社を利用するのも一つの方法です。
また、入居時には使用細則などの規約をしっかりと説明し、理解を得ることも重要です。
特に家賃滞納については、発生直後から適切なフォローを行うことで、長期化を防ぐことができます。
また、騒音などの近隣トラブルについては、双方の言い分をよく聞いた上で、公平な立場で調整をしてください。
空室対策
空室の発生は、賃貸経営における収益性を直接的に低下させる要因となります。
効果的な空室対策には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 市場動向を把握し、適切な賃料設定を行う
- 入居者のニーズを把握する
- 定期的な設備点検とメンテナンス対応
- 必要に応じて修理や交換を行う
近年ではインターネット環境の整備や防犯カメラの設置など、時代に応じた設備が求められています。
また、入居者との良好な関係を維持することで、長期入居を促進し、空室リスクを低減することができるでしょう。
空室が発生したときの対処法
空室が発生した場合は、以下のポイントに注意して対策すると効果的です。
- 物件写真の充実
- 魅力的な物件紹介文の作成
- 徹底した室内の清掃
- 新しい設備に交換
特に重要なのは、入居者が退去を申し出た時点で、すぐに次の入居者募集を開始することです。
早期に募集を開始することで、退去から次の入居までの期間を最小限に抑えることができます。
また、必要に応じて軽微なリフォームを実施することで、物件の価値を向上させ、新規入居者を確保しやすくなります。
募集期間が長期化しているときは、不動産会社と相談しながら、募集条件の見直しを検討することも有効です。
例えば、ペット可への変更や、敷金・礼金の減額など、入居のハードルを下げる施策を実施することで、より幅広い層からの問い合わせが期待できるでしょう。
ただし、入居者の条件変更は、物件の価値や将来的な収益性に影響を与える可能性があります。
原状回復に関する注意点
原状回復は、退去時にトラブルの原因となりやすい項目です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、適切な対応を行ってください。
入居時には、以下の対応を行うことでトラブルを防ぐことができます。
- 室内の写真撮影と記録保管
- 設備や壁紙の状態の詳細な記録
- 入居者との現状確認書の作成
- 原状回復の費用負担区分の明確な説明
退去時の原状回復では、経年劣化による自然な損耗と、入居者の故意・過失による損傷を適切に区別することが重要です。
経年劣化については貸主の負担、入居者の故意・過失による損傷については入居者負担という原則に従い、公平な費用負担を求めることが大切です。
原状回復で確認すべきポイント
原状回復では、以下の点について特に慎重な判断が必要です。
- 壁紙の張り替え
- 床材の補修または交換
- 設備機器の修理または交換
- クリーニング費用の負担
経年劣化を適切に判断するためには、入居時の状態を示す証拠資料と、退去時の立会い確認が重要となります。
また、原状回復を行う工事の見積もりは複数の業者から取得し、適正な価格で実施するように心がけましょう。
賃貸マンション経営において、トラブルの完全な予防は難しいかもしれませんが、その影響を最小限に抑えることは可能です。
特に重要なのは、入居者とのコミュニケーションを大切にし、問題が小さいうちにきちんと対処することです。
また、専門家や管理会社との連携を密にすることで、より効果的なトラブル対策が可能となります。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。