転勤が決まると、所有しているマンションをどうするべきか悩む方は多いのではないでしょうか。売却するのか、賃貸に出すのか、それとも空き家として維持するのか、それぞれにメリットやデメリットがあります。
転勤時のマンションの活用方法を比較し、賃貸を進める具体的な手順や注意点、さらに税金や管理に関する重要なポイントをわかりやすく解説します。
目次
転勤時のマンション活用方法を比較
転勤が決まったとき、マンションの活用方法として主に「賃貸」「売却」「空き家」の3つがあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
賃貸にする場合のメリット・デメリット
マンションを転勤中に賃貸として活用する場合、経済的なメリットが期待できる一方で、管理やトラブル対応といった課題もあります。以下に、賃貸に出したときの主なメリットとデメリットをまとめました。
メリット
- 継続的な収入を得られる
- 住宅ローン返済の負担軽減
- 資産価値の維持
デメリット
- 入居者とのトラブルの可能性
- 維持管理の手間
- 維持費や管理費の発生
賃貸は転勤中の資産を有効活用できる優れた選択肢ですが、物件管理の手間やリスクを伴う点は無視できません。特に入居者トラブルや維持費が発生する可能性を考慮し、信頼できる管理会社を選びましょう。
売却する場合のメリット・デメリット
転勤を機にマンションを売却する場合、大きな資金を得られる一方で、将来の計画に影響を与える可能性があります。以下に、売却の主なメリットとデメリットをまとめました。
メリット
- 一括で資金を得られる
- 管理の手間が不要になる
デメリット
- 購入時より安く売る可能性がある
- 住宅ローンがまた組めるとは限らない
マンションの売却は資金調達や、管理負担の解消という点で有効な選択肢です。ただし、不動産市況や再度購入することを考えて判断することが重要です。
空き家にする場合のメリット・デメリット
マンションを空き家にして所有し続ける場合、費用や管理面での課題が生じます。以下に、空き家にする場合の主なメリットとデメリットをまとめました。
メリット
- 帰任後にすぐに戻れる
- 家財を置いたままにできる
デメリット
- 固定資産税などの負担がある
- 収入が得られない
- 防犯やメンテナンスの不安がある
- 長期間の不在で建物が劣化しやすくなる
空き家は、帰任後の利用を想定する場合に適した選択肢です。ただし、維持費用や建物の管理にかかる手間を考慮し、防犯対策や適切なメンテナンス計画を立てることが重要です。
マンションを賃貸に出す前の確認事項
マンションを賃貸物件として貸し出すときは、事前に確認しておくべき重要なポイントがあります。これらをしっかり押さえておくことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな賃貸運営が可能になります。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合、まずは金融機関に相談することが重要です。住宅ローンは本来、自宅として使用することを前提に契約されています。そのため、賃貸化する際には契約内容の変更や、金融機関への申請が必要となる場合があります。事前に相談し、必要な手続きや条件を確認しておきましょう。
金融機関への事前相談のポイント
住宅ローンが残っている場合、賃貸化には金融機関への事前相談が不可欠です。必要な確認事項を以下にまとめました。
- 必要書類の準備
- 賃貸収入が返済に利用可能かの確認
- 賃貸化による金利条件の変更の有無
金融機関によって対応が異なるため、早めに相談を進め、条件を確認することが重要です。
住宅ローン控除への影響
住宅ローン控除は、自宅として使用する場合に適用される税制優遇措置です。しかし、マンションを賃貸に出すと、基本的に住宅ローン控除が適用されなくなります。これは、控除の対象が「自ら居住する住宅」に限定されているためです。
ただし、以下のような条件を満たす場合は、一定期間、住宅ローン控除を継続して受けられる可能性があります。
- 転勤による一時的な賃貸である
- 再居住する意思を明確にしている
また、控除継続の適用条件や手続きは複雑な場合が多いため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。住宅ローン控除は年間の節税額が大きいため、その影響を十分に考慮することが重要です。
マンション管理規約の確認
マンションを賃貸化する際は、事前に管理規約を確認することが必要です。管理規約には、賃貸に関するルールや手続きが明記されており、これを守らないとトラブルが発生する可能性があります。特に以下の点を重点的に確認しましょう。
- 賃貸が許可されているかどうか
- 賃貸化の際に必要な届出や手続き
- 共用施設や防音工事、宅配ボックスの利用規定
マンションの規約内容は物件ごとに異なるため、必ず管理組合や管理会社に確認し、不明点があれば早めに相談してください。これにより、入居者や近隣住民とのトラブルを防ぎ、円滑に賃貸運営を進められます。
転勤中の契約形態を決める
マンションを貸し出す際の契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があります。定期借家契約では、あらかじめ決めた契約期間が終わると契約が終了します。一方、普通借家契約では、入居者が希望すれば契約を更新できる仕組みになっています。
転勤中の一時的な貸し出しには、定期借家契約が適しています。この契約を選ぶことで、転勤が終わった後に確実に物件を返してもらえます。一方、普通借家契約を利用すると、契約終了時に入居者が住み続けたいと希望した場合、大家側が退去を求めるのが難しくなるため注意が必要です。
定期借家契約を利用する際は、入居者に「期間が満了すると契約が終了する」ことを事前に説明し、書面で交付する必要があります。不動産会社と相談し、自分の状況に合った契約形態を選びましょう。
マンションを貸し出す手順
マンションを貸し出すときは、事前の準備や手順をしっかり把握することが成功の鍵です。不動産会社の選定から物件の整備、条件設定、契約まで、各ステップを丁寧に進めることで、トラブルを防ぎ、スムーズな賃貸運営が可能になります。
信頼できる不動産会社を探す
マンションを貸し出すときは、信頼できる不動産会社を見つけることが大切です。まず、地域での実績や評判を調べてみましょう。不動産ポータルサイトや口コミサイトを活用すると、候補を絞りやすくなります。
次に、複数の会社に問い合わせ、対応の丁寧さや提案内容を比較してください。手数料や管理内容についても具体的に確認しておくと安心です。地域密着型の会社は地元の市場に詳しく、大手の会社は広いネットワークが強みです。自分のニーズに合った会社を選び、信頼関係を築くことが、スムーズな賃貸運営の第一歩です。
物件の点検と整備
賃貸に出す前に、物件の状態を点検し、必要な整備を行う必要があります。壁紙や床の汚れ、水回りの不具合など、入居者が気になりやすい部分を優先的に確認しましょう。修繕が必要な箇所は、不動産会社と相談しながら対応を進めます。
壁紙の張り替えや照明の交換をすると、物件の印象が向上します。事前に整備を済ませておくことで、入居希望者に選ばれやすくなり、スムーズに貸し出せるでしょう。
賃貸条件の設定と入居者募集
賃貸条件の設定は、入居者募集を成功させるための重要なステップです。まず、不動産会社と相談し、家賃、契約期間、敷金・礼金、更新料などを地域の相場や物件の特徴に合わせて決定します。家賃が高すぎると空室が続き、低すぎると収益が減るため、適正な価格設定が重要です。
条件が決まったら、不動産会社を通じて入居者募集を行います。物件の魅力を伝えるため、プロによる写真撮影や物件のアピールポイントを強調した広告を活用しましょう。募集開始後は、不動産会社と連携し、問い合わせや内見の対応を進めます。
契約と入居準備
入居者が決まる前に、審査をしっかり行うことが重要です。不動産会社が中心となって入居希望者の収入状況や職業、連帯保証人の有無などを確認しますが、大家としても最終的な判断に関わる場合があります。不安な点があれば、不動産会社に詳細な説明を求めましょう。
審査が完了し、入居者が確定したら、賃貸借契約の内容を確認します。契約条件や重要事項説明に不明点がないかをしっかり確認し、敷金や礼金の受領状況も確認します。その後、鍵の引き渡しや物件の使い方について、不動産会社を通じて入居者に伝えます。審査と準備を万全に行うことで、安心して賃貸運営を始められます。
管理会社に全て任せるメリット・デメリット
転勤中にマンションを賃貸に出すとき、管理会社に運営を全面的に委託することで多くの手間を省けます。特に遠方や海外での生活が中心となる場合、自分で物件を管理することは難しいため、管理会社の活用が現実的な選択肢になります。一方で費用が発生することや、自身での管理と比べたときの違いを理解しておく必要があります。以下に、管理会社に任せるメリットとデメリットをまとめました。
メリット
- 賃貸運営に必要な作業を任せられる
- 専門知識を持つスタッフが対応するため、トラブルを解決しやすい
- 遠方や海外の転勤でも物件を管理できる
デメリット
- 管理委託料として家賃の5~10%の費用がかかる
- 追加サービスを利用すると、さらに費用がかかる
- 任せきりだと物件の状況を把握しにくい
管理会社を選ぶ際は、地域での実績や評判をしっかり調べ、管理内容や手数料を十分に確認しましょう。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。