「マンション売却前にリフォームすべきか?」は、多くの売主がぶつかる悩みのひとつです。古さが目立つ室内を直せば、印象が良くなって高く売れるのでは……と考える一方で、費用をかけても価格に反映されない可能性もあります。
売却前にリフォームが本当に必要かどうかの判断基準を解説し、リフォームをする場合の費用相場や、注意すべきポイントについても詳しく紹介します。
目次
マンション売却でリフォームは不要といわれる理由
マンション売却において、リフォームは必要でない可能性があります。ここでは、その理由を解説します。
リフォーム費用の回収が難しい
マンションのリフォーム費用は、高額になることが一般的です。そのうえ、リフォームにかけた費用が、そのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。
リフォーム費用を考慮した割高な物件と認識され、結果的に買い手が見つかりにくくなるリスクもあります。また、リフォーム費用は売却する前に支払う必要があり、一時的な負担が発生してしまいます。
以下は、一般的なリフォーム費用の相場一覧です。
リフォーム箇所 | 費用相場 | 内訳・備考 |
---|---|---|
水回り | 180~500万円 | キッチン 70~200万円浴室 80~200万円トイレ 20~50万円洗面台 10~50万円 |
内装 | 50~200万円 | 壁紙 1,000~3,000円/㎡床材 2,000円~20,000円/㎡建具 5~40万円(1カ所) |
フルリフォーム | 500~1,000万円以上 | 設備交換、内装全般、間取り変更など |
上記の費用はあくまで目安であり、物件の状況や選ぶ設備、工事の規模によって大きく変動します。
買主側でリフォームする予定がある
近年、中古マンションを購入し、自分だけの理想の住まいを創り上げたいニーズが高まっています。
一般社団法人不動産流通経営協会の「不動産流通業に関する消費者動向調査(2024年度)」によると、中古住宅を購入した層のうち、約2割の購入者がリフォーム前提であるというデータも存在します。
このような購入希望者にとって、売主がすでにリフォームを施した物件は、かえって自分たちの理想とする住まいづくりを阻害する要因にもなりかねません。
せっかく売主が高額な費用をかけてリフォームをしても、そのデザインや設備が購入者の好みに合わなければ、再度リフォームを行う可能性さえ出てきます。
リフォームに関する優先順位が低い
株式会社AlbaLinkの「家の購入に関する意識調査」によると、購入希望者が家の購入で最も優先した条件は、「立地」がダントツでした。2位は価格、3位は間取り・広さとなっています。
一方で、内装に関する項目は5位「設備」、7位「デザイン」と、比較的優先順位が低い傾向にあります。設備や内装は、入居後に自分たちの好みや予算に合わせて変更できる部分と捉える方も多いのでしょう。
最新のシステムキッチンや、デザイン性の高い洗面台が購入の決め手になることは、まれといえます。むしろ、設備が新しくても立地が悪かったり、価格が高すぎたりすれば、購入は見送られる可能性が高いでしょう。
必ずしもリフォームで価値が上がるわけではない
リフォームを行うことで、物件の見栄えが良くなり、購入希望者の目に留まりやすくなる可能性はあります。しかし、それが物件の価格そのものを大きく引き上げるわけではありません。
不動産の価格は築年数、立地、広さ、構造、周辺環境、市場の需給バランスなど、複数の要因によって総合的に決定されます。
たとえ室内を最新の設備で美しくリフォームしたとしても、立地条件が悪ければ利便性の低さは解消されません。
また、周辺の類似物件の売買事例と比較して、大幅に高い価格を設定することは難しく、結果的に売却期間が長期化するリスクもあります。
リフォームを行ったほうがよい物件の特徴
マンション売却においてリフォームは必須ではありませんが、以下の特徴を持つ物件はリフォームを検討することで、よりスムーズな売却や希望価格での売却につながる可能性があります。
設備の一部が破損・故障している
キッチン、浴室、トイレなどの水回り設備や、給湯器、エアコンなどの住宅設備が正常に機能しない場合は、リフォームを検討する価値があります。
これらの設備は日常生活を送るうえで不可欠なものであり、故障している状態では購入希望者に大きなマイナスイメージを与えてしまいます。
購入希望者は故障している設備を修理したり、交換するための費用と手間を考慮したりするため、売却価格の大幅な減額を要求してくる可能性が高くなります。また、設備の不具合は、物件全体の管理状況に対する不信感にもつながりかねません。
ほとんどの設備が使えない状況であれば、リフォームをする必要はありませんが、一部が故障しており、比較的少額な修理代や交換代で住むのであれば、売却前にこれらの設備を修理・交換しておきましょう。
室内の汚れがひどい
壁や床の目立つ汚れ、カビ、臭い、傷などは、物件の印象を著しく悪くし、購入意欲を大きく低下させる要因となります。このような場合は、ハウスクリーニングなどを検討することで、物件の清潔感の向上につながります。
特に、水回りはカビや水が目立ちやすい場所です。重点的に、プロによるハウスクリーニングを行うと効果的です。長年の使用による汚れは、ハウスクリーニングだけでは完全に落とせない場合もありますが、見違えるほどきれいにできる場合が多いです。
清潔感のある住まいは、購入希望者に「大切に使われてきた物件である」という印象を与え、安心感と好感度を高めます。
相場よりも市場価格が著しく低い
周辺の類似物件と比較して、自身のマンションの市場価格が著しく低い場合、リフォームによって物件の魅力を向上させることにつながります。
例えば、築年数は同程度であるにもかかわらず、内装が古く、設備も旧式のままの物件は、リフォーム済みの物件と比べて価格競争力で劣ることがあります。このような場合に、ターゲットとする購入者層のニーズに合わせたリフォームを行うことで、リフォーム済み物件として売り出すことができ、より高い価格での売却を目指せる可能性があります。
ただし、費用対効果は慎重に検討する必要があります。リフォーム費用が、売却価格の上昇分を大きく上回ってしまうようでは本末転倒です。
不動産会社と相談しながら、周辺の売買事例や市場動向を分析し、どのようなリフォームが効果的であるかを慎重に見極めましょう。
マンションをリフォームすべきか迷ったときの判断方法
売却前にリフォームをすべきかの判断は簡単ではありません。リフォームをすべきかどうか迷った場合は、以下の方法を参考に判断してみましょう。
築年数が古いときは物件の買取価格も確認する
築年数が古いマンションの場合、リフォーム費用が高額になる傾向があります。また、古い物件はリフォームしても構造的な問題や設備の老朽化が完全に解消されない可能性もあります。
このような場合は、不動産買取を行っている不動産会社に査定を依頼し、買取価格を確認することをおすすめします。買取業者は、リフォームを前提として物件を評価するため、リフォーム費用を考慮したうえで、現状の物件価格を提示してくれます。
買取価格と、自身でリフォームして売却する場合の売却予想価格を比較・検討することで、どちらが経済的に有利であるかを判断できます。
もし、買取価格とリフォーム後の売却予想価格に大きな差がない場合は、手間や時間をかけずに売却できる買取を選択肢に入れることも有効です。
近隣の売り物件がリフォーム済みで売られているか調べる
所有するマンションと類似した条件(築年数、広さ、間取りなど)の物件が、近隣でリフォーム済みの状態で売りに出されているかどうかを調べてみましょう。
多くの競合物件がリフォーム済みで高めの価格で売れているようであれば、自身の物件もリフォームを検討する必要があるかもしれません。
不動産情報サイトや不動産会社のWebサイトなどを活用して、近隣の売買事例を調査し、リフォームの有無と売却価格の相関関係を確認してみましょう。
ただし、リフォームの内容や程度によって売却価格は大きく異なるため、単に「リフォーム済み」というだけでなく、どのようなリフォームが施されているのかも詳しく確認することが重要です。
近隣の売買事例が少なく、リフォームの必要性が判断しにくい場合は不動産会社に相談し、市場動向や購入希望者のニーズについて客観的な意見を聞いてみることをおすすめします。
リフォームも行っている不動産会社に相談する
マンションの売却を検討する際には、売却専門の不動産会社だけでなく、リフォームも手掛けている不動産会社にも相談してみましょう。
売却専門の不動産会社は市場価格や売却戦略に詳しいですが、リフォームに関する専門的な知識やノウハウは限られている場合があります。
一方、リフォームも行っている不動産会社であれば、物件の状態からどのようなリフォームが売却に効果的であるか、費用対効果が高いリフォームは何かといった具体的なアドバイスをもらえます。
また、リフォームの見積もりから施工、そして売却活動までをワンストップで依頼できる場合は、手間を省きながら効率的に売却を進めやすくなるでしょう。