近年、都市部を中心に人気を集めているタワーマンション。
眺望の良さや充実した共用施設、資産価値の高さなど、魅力的な要素が数多くありますが、実際に購入して生活を始めてみると、予想外の事態に直面することも少なくありません。
この記事では、タワーマンション購入者が後悔したポイントと、それらを未然に防ぐための対策について具体的に解説していきます。
目次
タワーマンションの購入で後悔した理由とその対処法
タワーマンションの購入は、多くの人にとって人生における重要な決断の一つでしょう。
住むメリットにばかり目を奪われがちですが、実際にタワーマンションで暮らしてみて購入したことを後悔した方もいます。
後悔した理由を事前に知っておくことで、事前に対処可能なことも多くあります。
以下は、タワーマンションの居住者の声をもとに、後悔したポイントとその対処法を紹介していきます。
経済的な後悔ポイント
経済的な問題は、タワーマンション購入後の後悔の要因として、最も多く挙げられる項目の一つです。
購入時には気付かなかったさまざまな費用負担が、実際に生活を始めてから明らかになってくることがあります。
具体的な経済的負担とその対処法について詳しく見ていきましょう。
高額な管理費・修繕積立金の負担
タワーマンションの管理費や修繕積立金は、一般的なマンションと比較して高額になりがちです。
高額になる理由としては、24時間体制の管理人常駐や高度な防災・セキュリティシステムの維持費、エレベーターなどの共用設備の保守費用が必要だからだといわれています。
また、高層建築特有の設備メンテナンス費用も一般的なマンションにない費用といえます。
対処法としては、購入前に将来的な費用増加も含めた家計シミュレーションを行うことが重要です。
そして、管理組合の収支状況や修繕積立金の使用計画をしっかりと確認し、余裕を持った予算設定を心がけることで、将来的な負担増にも対応できる体制を整えられます。
予想以上の光熱費
タワーマンションの光熱費は、共用部分の電気代負担に加え、24時間稼働の換気システムや電気・水道の圧送ポンプの使用など、さまざまな要因により高額になることがあります。
この問題に対しては、省エネ家電の導入や断熱カーテンの使用など、できる限りの節電対策を行うことが重要です。
また、不在時はこまめに電源を切る、水を出しっぱなしにしないなど細かな取り組みを積み重ねることで、毎月の光熱費を抑えることが可能となります。
資産価値の下落リスク
タワーマンションの資産価値は、建物の老朽化や新規物件の供給、立地環境の変化、災害リスクの再評価などにより、予想以上に下落することがあります。
特に築年数が古い物件や立地条件が劣る物件において見られる傾向です。この問題に対しては、購入時点での慎重な物件選びが最も重要といえるでしょう。
立地や築年数を重視し、将来的な環境変化も考慮に入れた選択を行うことで、資産価値の下落リスクを最小限に抑えることができます。
生活面での不便さ
タワーマンションでの生活には、一般的なアパートやマンションとは異なる、特有の不便さが存在します。
これらは日常生活に大きな影響を与える可能性があり、事前に理解しておくことが重要です。
ここでは、タワーマンションにおける生活面での課題とその対処法について詳しく解説していきます。
エレベーター待ちのストレス
タワーマンションにおけるエレベーター待ちの問題は、多くの居住者が指摘する後悔した理由の一つです。
特に朝夕のラッシュ時には、かなりの待ち時間を強いられることがあります。
この問題への対処としては自分の生活リズムを工夫し、ピーク時を避けた行動計画を立てることが有効です。
また、エレベーターの台数が多いタワーマンションを購入することで、ストレスを軽減することができます。
荷物の受け取りとゴミ出しの手間
タワーマンションでは、荷物の受け取りやゴミ出しに独特の煩わしさがあります。
宅配便の受け取りは、自宅階まで配達員を呼び入れる必要があり、不在時の再配達が増えるかもしれません。
さらに、ゴミ出しについてはゴミ置き場まで移動する必要があり、面倒に感じる方もいます。
これらの課題に対して、まず荷物の受け取りは宅配ボックスの積極的な活用が有効です。
また、ゴミ出しについては各階にゴミ捨て場を設けていたり、ダストシュートでゴミが捨てられたりするタワーマンションを購入することで、負担を軽減できます。
洗濯物をベランダに干せない
多くのタワーマンションは景観維持や安全性の観点から、ベランダでの洗濯物の干出しが禁止されています。
これは、洗濯する機会が多い子育て世帯にとっては後悔する理由となるでしょう。
高層階では特に強風の影響も懸念され、室内干しが一般的となっています。
対策としては、除湿機や衣類乾燥除湿機の活用、換気システムの効果的な利用により、室内干しによる湿気の問題も軽減できます。
また、タワーマンションの低層階であればベランダで干せるところもあるようです。
インターネット回線の速度低下
高層建築特有の問題として、インターネット回線の速度低下があります。
高層階は配線距離が長くなるため通信速度の低下が発生するだけでなく、多くの居住者が同時にインターネットを利用することで回線が混雑することも要因の一つです。
この問題に対しては、光回線の導入や高速無線LANの設置など、通信環境の整備を行うとよいでしょう。
また、時間帯による速度変動を把握し、重要な作業は比較的空いている時間帯に行うなどの工夫も効果的です。
安全面の不安
タワーマンションの安全面における不安から購入して後悔した方もいます。
ここでは高層建築特有のリスクや、災害時の対応など、事前に十分な理解と準備について解説していきます。
地震時の揺れと避難の問題
タワーマンションは、その高さゆえに地震の揺れが増幅されやすいのが特徴です。
特に上層階では、下層階の数倍の揺れを体感することもあるといわれています。
また、地震時にエレベーターが停止すると、避難に時間がかかることも大きな懸念事項です。
これらの不安に対しては、タワーマンションの耐震性能や制震装置の有無を確認することが重要です。
さらに、非常時の避難経路を家族で確認し、防災用品の備蓄や避難訓練への参加も欠かせません。階段での避難を想定した体力作りも、日頃から心がける必要があります。
強風による影響
高層階では、強風の影響が予想以上に大きくなります。窓や建具の揺れ、風切り音による不快感、ベランダに置いた物の飛散リスクなど、様々な問題が発生する可能性があります。
対策法としては、防音・防風効果の高い窓の選択や、適切な室内レイアウトの工夫が有効です。
さらに、ベランダの使用については管理規約を確認し、安全な利用方法を徹底しましょう。
気象情報をこまめに確認するようにし、強風が予想されるときは事前に対策を行うことが推奨されます。
子どもの転落リスク
タワーマンションでの子育てにおいて、最も懸念されるのが転落事故のリスクです。
特に小さな子どもがいる家庭の場合、ベランダや窓からの転落防止対策が極めて重要になります。
安全対策としては、チャイルドロックの設置や窓の開閉制限、ベランダに柵を設置するなど、物理的な予防措置が不可欠です。
また、危険な場所への立ち入りを制限するルールを作り、分かりやすく子どもに伝えることも大切です。
人間関係の悩み
タワーマンションでの生活では、多くの住民が同じ建物で暮らすことによる独特の人間関係の課題が生じることがあります。
これらの問題は、快適な住環境を維持する上で重要な要素といえるでしょう。
階層による住民間のヒエラルキー
タワーマンションでは、階層によって住戸価格に大きな差があることから、時として住民間に微妙な階層意識が生まれることがあります。
特に、管理組合の運営や共用施設の利用などを巡って、意見の対立が生じることもあるようです。
このようなトラブルを避けるためにも、タワーマンション内のコミュニティ活動に参加することで、自然な形で住民同士の関係を築いていくことができるでしょう。
入居者の騒音トラブル
タワーマンションでも上下階や隣接住戸との騒音問題が深刻化しやすい傾向にあります。
子どもの足音や生活音が思わぬトラブルの原因となることが考えられます。
これらの問題を防ぐためには、防音マットの使用や生活時間への配慮など、基本的なマナーを守ることが大切です。
また、騒音が気になる場合は早めに管理組合や管理会社に相談し、適切な対応を検討するとよいでしょう。
タワーマンションでの後悔を防ぐポイント
タワーマンションを購入して後悔した原因や理由について解説してきましたが、事前の準備と適切な対策により軽減することが可能です。
ここでは、タワーマンション購入時に後悔しないためのポイントについて詳しく解説します。
購入前にすべきこと
タワーマンションの購入後の後悔は、購入前の準備にかかっていると言っても過言ではありません。
綿密な調査と慎重な検討が将来の後悔を防ぐ鍵となりますので、詳しく見ていきましょう。
内覧で確認すべきポイント
内覧時には、通常の確認事項に加えて、タワーマンション特有の要素にも注意を払う必要があります。
内覧時に確認すべきポイントは以下の通りです。
- エレベーターの待ち時間
- 共用施設の利用状況
- 購入予定の階での眺望の確認
- 駐車場からの動線
- ゴミ出しにかかる時間
- 宅配物の受け取り方法
できるだけ異なる時間帯で内覧をすることで、入居者の生活音も確認できるかもしれません。
管理規約の確認
タワーマンションの管理規約は、一般のマンションと比べてより詳細な規定が設けられていることがあります。
ペットの飼育制限、ベランダの使用規制、騒音に関する取り決めなど、生活に直接影響する事項を事前に確認することが重要です。
特に、室内のリフォームや設備の変更に関する制限事項は将来的なライフスタイルの変化にも関わってくるため、慎重に確認する必要があります。
階層選びのコツ
タワーマンションでは階層の選択が極めて重要な要素になります。
それぞれの階層には独自の特徴があり、自身のライフスタイルに合った選択するとよいでしょう。
低層階・中層階・高層階それぞれの特徴
低層階は、エレベーター待ちの負担が少なく、災害時の避難もしやすいというメリットがあります。
一方で、眺望や日当たりは限定的となる可能性があります。
中層階は、低層階と高層階のバランスが取れた選択肢となります。強風の影響も比較的少なく、眺望も程よく確保できます。
高層階は眺望の良さと開放感が魅力ですが、強風や地震による揺れの影響を受けやすく、また災害時の避難に時間がかかるというデメリットがあります。
自分のライフスタイルに合った階を選ぶ
階層選びは、単に眺望や価格だけでなく、自身の生活スタイルに合わせて検討する必要があります。
例えば、小さな子どもがいる家庭であれば、外へ移動する便利さから低層階や中層階が適しているかもしれません。
また、在宅勤務が多い場合は通信環境の安定性も考慮に入れる必要があります。
高齢者がいる家庭の場合は、エレベーターの利用頻度なども重要な検討要素となるでしょう。
タワーマンを売却する場合の注意点
将来的な売却を視野に入れている場合、いくつかの重要な注意点があります。
売却のベストタイミング
タワーマンションの売却タイミングは、築年数や市場動向、物件の状態など、様々な要因を考慮して判断する必要があります。
一般的に、大規模修繕が行われる前後が一つの判断ポイントとなります。
また、周辺の再開発計画や新規物件の供給状況なども、売却タイミングを検討する上で重要な要素です。
売却時の価格設定のコツ
売却価格の設定には、取引事例や周辺の相場の調査が欠かせません。
階層による価格差や眺望、設備の状態など、タワーマンション特有の価値要素を適切に評価することが重要です。
また、管理費や修繕積立金の設定状況、大規模修繕の実施状況なども、売却価格に影響を与える要素として考慮する必要があります。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。