分譲マンションはローンが残っていたり、管理規約で貸与を禁じられたりしていると、賃貸に出せないので注意が必要です。
使わない分譲マンションの扱いに困っている方向けに、賃貸に出せないケースや賃貸に出せるケース、賃貸と売却に迷ったときのチェックポイントについて解説します。
分譲マンションを第三者に貸し出したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
分譲マンションを賃貸に出せないケース
分譲マンションを賃貸に出している人は多いですが、以下のケースに該当する場合は、賃貸に出せない可能性があります。
住宅ローンが残っている
分譲マンションを住宅ローンで購入しており、かつローン残債がある場合は、賃貸に出せないケースがほとんどです。
なぜなら、住宅ローンは居住用住宅を購入するための資金として融資されたものだからです。
その物件に自ら居住せず、無断で賃貸に出してしまった場合、住宅ローン契約では違反と見なされます。
契約違反に該当すると、事前に定めた返済方法にかかわらず、直ちに残債の全額返済を要求されるので注意が必要です。
マンションの規約に反している
レアなケースではありますが、分譲マンションの中には管理規約で物件を賃貸に出すことを禁じているところもあります。
管理規約で第三者に貸し出すことを禁じられているにもかかわらず、所有物件を賃貸に出した場合、その行為を直ちに停止するように求められるでしょう。
すでにマンションに第三者が居住していた場合は、貸借人にも迷惑がかかります。
また、要求に従わなかった場合は、区分所有権(住居部分の所有権)を競売にかけられるなどのリスクもあります。
住宅ローンが残っている分譲マンションを賃貸に出す方法
住宅ローンが残っている分譲マンションは原則として賃貸に出せないと説明しましたが、工夫次第では賃貸に出すことも可能です。
ローン残債のある分譲マンションを賃貸に出す方法を3つご紹介します。
1. ローンを一括返済する
住宅ローンの残債を一括で返済すれば、ローン契約に縛られる心配がなくなり、物件を賃貸に出せます。
残債が少なく、家計に大きな負担をかけるリスクがないのであれば、一括返済を検討してみるのもひとつの方法です。
ローンを一括返済すれば、残り期間分に支払う予定だった利息の節約にもなるので一石二鳥でしょう。
ただし、住宅ローンの一括返済には所定の手数料がかかる場合があります。
手数料は一般的に残債の1%とされていますが、金融機関によってルールが異なります。
一括返済を検討する際は、あらかじめローンを組んでいる金融機関に問い合わせてください。
2. 金融機関の許可を受ける
金融機関では、ローンが残っている居住用住宅の貸出は原則として認めていません。
しかし、やむを得ない事情がある場合は例外で認めるケースもあります。
たとえば、「転勤で県外に行かなければならなくなった」「親の介護をするために実家で同居することになった」などの理由が挙げられます。
住宅ローンを組んだときには想定できなかった事情が発生した場合は、金融機関に相談することで賃貸転用が認められることもあるようです。
もちろん最終的な判断は金融機関に委ねられますが、やむを得ない事情があって賃貸に出すことを検討している場合は、一度相談してみましょう。
3. 不動産投資ローンに切り替える
不動産投資ローンとは、投資用の物件を購入する際に利用できるローンのことです。
投資用不動産は、物件を賃貸に出して家賃収入を得たり、売りに出して売却益を得たりすることを前提としています。
そのため、不動産投資ローンに切り替えれば、ローン残債があっても分譲マンションを賃貸に出すことが可能です。
民間金融機関の場合、一般的な住宅ローンとともに不動産投資ローンを取り扱っているところも多いので、切り替えの相談をしてみるとよいでしょう。
なお、フラット35などを取り扱う住宅金融支援機構では、不動産投資ローンの取り扱いがありません。
住宅金融支援機構を利用している方が不動産投資ローンに切り替えるには、金融機関への借り換えが必須です。
分譲マンションを賃貸に出すときの注意点
分譲マンションを賃貸に出す際は、以下の点に注意しましょう。
借り換えによる金利・費用負担に注意
不動産投資ローンは、一般的に居住向けの住宅ローンよりも金利が高めに設定されています。
そのため、一般的な住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えた場合、月々の返済額や総支払額が増えることを考慮しなくてはいけません。
また、借り換え時は別途手数料が発生することもあります。
不動産投資ローンに乗り換える際は、返済シミュレーションや具体的な手数料について金融機関と話し合っておきましょう。
住宅ローン減税の対象外になる
マイホームを新築・取得した際、一定の条件を満たすと住宅ローン減税の対象となり、所得税の税額控除を受けられます。
ただし、住宅ローン控除は自らが居住するための住宅を対象にしたものです。
分譲マンションを賃貸に出した場合、住宅ローン減税の対象外となり、税額控除を受けることができなくなります。
控除がなくなると、所得税と住民税がそれぞれ高くなってしまうため注意が必要です。
貸借人に規約を遵守してもらう必要がある
国土交通省がひな型として公開しており、多くのマンションで採用されているのが「マンション標準管理規約」です。
マンション標準管理規約の第19条では、専有部分を貸与する場合、区分所有者が貸与する第三者に規約および使用細則に定める事項を遵守させることを義務づけています。
参考:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
もし貸借人が第19条に違反した場合、当人に責任が問われるのはもちろん、貸し出した区分所有者にも、何らかの形で責任を取らされる可能性があります。
そのため、分譲マンションを賃貸に出す際は、規約や使用細則を遵守する旨を契約条項として定めるなどの措置を講じなければなりません。
なお、標準管理規約では規約・使用細則を遵守する旨を貸借人が記載した誓約書を管理組合に提出することも、ルールとして盛り込まれています。
分譲マンションを貸すか売るか迷ったときのチェックポイント
住まなくなった分譲マンションを有効活用する方法には、第三者に貸すだけでなく、売却するという方法もあります。
賃貸と売却にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、貸すか売るかで迷ったときは、以下のポイントをチェックしてみましょう。
物件を維持管理する余裕があるか
第三者に分譲マンションを貸している間も、物件の修繕やメンテナンスなどの管理は区分所有者が行います。
家賃収入で採算が取れている間は問題ありませんが、入居者がなかなか見つからず空室が長く続いた場合は、維持管理費により赤字になってしまうリスクもゼロではありません。
また費用面だけでなく、貸借人からの苦情や要望に対応したり、家賃収入について毎年確定申告を行ったりする必要もあります。
維持管理費を十分に確保できない場合や、管理に手間をかけられない場合は、売却を検討したほうがよいかもしれません。
将来自分が住む予定があるか
分譲マンションを売却して完全に他人の手に渡ってしまうと、同じ物件を買い戻すのは困難です。
将来的に同じマンションに住む予定がある方は、売却はせずに第三者へ貸し出して家賃収入を得る方法を選んだほうがよいでしょう。
なお、この場合は貸借人に対して将来住む予定があること、その際は退去してもらわなければならないことをあらかじめ伝えておく必要があります。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。
【保有資格】
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士