マンションを貸し出す流れやポイントを徹底解説。必要な費用や収支計画も解説

マンションを貸し出す際には、さまざまな準備や確認事項があり、適切な手順を踏むことが重要です。マンション貸し出しの具体的な流れから、必要な費用、収支計画、さらには起こりうるトラブルとその対策まで、解説していきます。

マンションを貸し出す際の流れ(5ステップ)

マンションの賃貸経営を始めるにあたって、まずは全体の流れを把握しましょう。適切な準備と手順を踏むことで、スムーズな賃貸運営が可能になります。以下では、5つの重要なステップについて詳しく説明していきます。

1. 事前準備と確認事項

賃貸経営を始める前に、いくつかの重要な確認事項があります。これらを事前にチェックすることで、将来的なトラブルを防げます。

住宅ローンの確認

現在、住宅ローンを組んでいる場合は、金融機関に賃貸利用が可能かどうかを確認する必要があります。一般的に、居住用のローンで購入した物件を賃貸に出す場合は、金融機関の承認が必要となります。

管理組合への確認

マンションの管理規約で賃貸が禁止されていないかを確認しましょう。また、賃貸可能な場合でも、ペットの飼育や事務所利用などに制限がある可能性があります。

収支シミュレーション

予想される家賃収入から諸経費を差し引いて、実際の収支を試算します。固定費には管理費、修繕積立金、固定資産税などが含まれます。また、将来的な修繕費用も考慮に入れる必要があります。

2. 不動産会社選び

良好な賃貸経営を行うには、信頼できる不動産会社との協力関係が重要です。以下のポイントを考慮して、適切な不動産会社を選択しましょう。

選定のポイント

地域での実績、管理物件数、スタッフの対応力などを総合的に評価します。また、トラブル発生時の対応体制や、24時間対応の有無なども重要な選定基準となります。

管理委託の種類

管理委託には賃貸募集のみを依頼する方法から、物件管理全般を任せる方法まで、さまざまな形態があります。オーナーの希望する関与度合いに応じて、適切な委託形態を選択しましょう。

3. 賃貸条件の設定

適切な賃貸条件を設定することは、安定した賃貸経営を行ううえで非常に重要です。市場の状況を踏まえながら、以下の項目について慎重に検討する必要があります。

家賃相場の確認

周辺地域の類似物件の家賃相場を調査し、競争力のある適切な家賃設定を行います。立地、築年数、設備などの要素を考慮しながら、最適な家賃を決定しましょう。

契約形態の選択

普通借家契約と定期借家契約のどちらを採用するか検討します。それぞれの特徴を理解し、物件の特性や運営方針に合わせて選択することが重要です。

入居条件の設定

入居者の条件(単身・法人・ファミリーなど)、ペット可否、楽器演奏、事務所利用などの可否を明確にします。これらの条件は管理規約に準拠する必要があります。

4. 物件の準備

入居者募集を開始する前に、物件を賃貸に適した状態に整備する必要があります。以下の項目について、しっかりと準備を進めましょう。

  • リフォームの検討
  • 設備の点検

リフォームの検討

築年数や物件の状態に応じて、必要なリフォーム工事を検討します。特に水回りや内装の状態は、入居者の決定に大きく影響します。投資効果を考慮しながら、適切なリフォーム計画を立てましょう。

設備の点検

給湯器、エアコン、換気扇などの設備が正常に作動するか確認します。故障している設備は修理または交換し、入居者が快適に生活できる環境を整えます。

火災保険の見直し

賃貸利用に適した火災保険への加入や、既存の保険の見直しを行います。賃貸特有のリスクをカバーできる保険を選択することが重要です。

5. 入居者募集から契約まで

物件の準備が整ったら、いよいよ入居者募集を開始します。効果的な募集活動と適切な契約手続きを行うことで、良好な賃貸経営のスタートを切れます。

募集開始の準備

物件写真の撮影や、募集図面の作製を行います。インターネットや不動産情報誌などの媒体を活用し、効果的な募集活動を展開します。

内覧対応のポイント

内覧希望者には丁寧な物件説明を心がけ、質問にも誠実に対応します。物件の特徴や周辺環境についても、正確な情報を提供することが重要です。

契約手続きの流れ

入居申込みから契約締結までの流れを確認し、必要書類の準備を進めます。重要事項説明や契約書の作成は、不動産会社と連携して慎重に進めましょう。

必要な費用と収支計画

賃貸経営を始めるにあたっては、様々な費用が発生します。適切な収支計画を立てることで、安定した経営を実現できます。

初期費用

賃貸経営を開始する際に必要となる初期費用について、主な項目とその目安を解説します。

リフォーム費用の目安

物件の状態や築年数によって、必要なリフォーム費用は大きく異なります。具体的な費用の目安は以下の通りです。

  • クロス張替え:15~20万円(1DK~1LDK)
  • フローリング張替え:30~40万円(1DK~1LDK)
  • ユニットバス交換:60~80万円
  • システムキッチン交換:40~60万円
  • 洗面台交換:15~25万円
  • トイレ交換:15~25万円
  • 給湯器交換:20~35万円

一般的な内装リフォームで100万円前後、水回りの改修を含む大規模リフォームでは300万~500万円程度かかることが一般的です。投資額の回収を考慮し、物件の立地や築年数に応じて適切な予算設定を行うことが重要です。

仲介手数料の相場

不動産会社に支払う仲介手数料は、宅建業法で上限が定められています。一般的な手数料体系は以下の通りです。

賃料1カ月分の1.1倍(税込)

また、入居がなかなか付かない場合は、成約時に広告料として別途賃料の1~2カ月分を支払う場合もあります。

火災保険料の見直し

賃貸用の火災保険料は、補償内容によって年間1〜3万円程度が一般的です。特約などを付帯させる場合は、それに応じて保険料が上がります。

運営費用

賃貸経営を継続していくうえで必要となる運営費用について説明します。これらの費用を適切に把握し、管理することが重要です。

管理費・修繕積立金

マンションの管理費と修繕積立金は、物件の規模や築年数によって異なります。一般的な金額の目安は以下の通りです。これらの費用は入居者に負担してもらうケースもあります。

■管理費(月額)

  • 30㎡未満:5,000円~8,000円
  • 30~50㎡:8,000円~1万2,000円
  • 50~70㎡:1万2,000円~1万8,000円
  • 70㎡以上:1万5,000円~2万5,000円

■修繕積立金(月額)

  • 築10年未満:8,000円~1万5,000円
  • 築10~20年:1万2,000円~2万円
  • 築20年以上:1万5,000円~3万円

これらの費用は、地域や物件の管理状況によって大きく異なる場合がありますが、一般的な50㎡のマンションで、管理費と修繕積立金の合計が月額2~4万円程度となります。これらは全額を経費として計上できます。

メンテナンス費用の内訳

定期的な設備点検や清掃、突発的な修繕などのメンテナンス費用を見込んでおく必要があります。年間の総額として、家賃収入の10〜15%程度を目安にすると良いでしょう。

税金関連費用

固定資産税、都市計画税などの税金は、物件の評価額に応じて算出されます。これらの税金は必ず発生する費用として、事前に計算しておく必要があります。

税金と節税対策

賃貸経営では様々な税金が発生しますが、適切な節税対策を行うことで、税負担を軽減できます。以下では、主な税金と節税のポイントについて解説します。

発生する税金

賃貸経営に関連して発生する主な税金について、その計算方法や注意点を説明します。

所得税・住民税の計算方法

賃貸収入から必要経費を差し引いた金額が課税対象となります。所得税率は所得金額に応じて段階的に上がっていき、以下のような税率が適用されます:

■所得税率(2024年度)

課税所得所得税率
195万円以下5%
195万円超~330万円以下10%
330万円超~695万円以下20%
695万円超~900万円以下23%
900万円超~1,800万円以下33%
1,800万円超~4,000万円以下40%
4,000万円超45%

これに加えて、住民税(一般的に所得割10%)が課税されます。

【計算例】

年間賃貸収入:300万円

必要経費:180万円

不動産所得(課税所得300万円-180万円):120万円の場合

所得税:120万円×5%=6万円

住民税:120万円×10%=12万円

合計税額:18万円

なお、上記の税率は不動産所得以外の所得と合算した総所得に対して適用されます。

固定資産税について

固定資産税は、土地・建物の評価額に対して課税されます。税額の計算方法は以下の通りです。

■固定資産税の計算

固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%

■都市計画税(市街化区域の場合)

都市計画税額 = 課税標準額 × 0.3%

【具体例】

マンション(土地・建物)の評価額が3,000万円の場合・固定資産税:3,000万円 × 1.4% = 42万円

・都市計画税:3,000万円 × 0.3% = 9万円

年間納税額:51万円

なお、土地については、小規模住宅用地の特例により、課税標準額が評価額の1/6に軽減される場合があります。この場合、上記の例では大幅に税額が減少します。

また、マンションの場合、専有部分の床面積割合に応じて課税されるため、実際の税額は物件の広さや立地によって大きく異なります。一般的な50㎡のマンションでは、年間10~20万円程度の固定資産税・都市計画税が課税されることが多いです。

不動産取得税の注意点

新たに物件を購入した場合、不動産取得税が課税されます。課税標準額に対して一定の税率が適用されますが、様々な軽減措置が設けられています。

活用できる節税対策

賃貸経営における効果的な節税対策について解説します。適切な対策を講じることで、税負担を適正化できます。

経費計上のポイント

賃貸経営に関連する費用は、可能な限り経費として計上します。修繕費、管理費、保険料、減価償却費など、計上できる項目を把握しておくことが重要です。

減価償却の活用方法

建物の減価償却費は重要な経費項目です。マンションの減価償却における主なポイントは以下の通りです。

■耐用年数

・鉄筋コンクリート造(RC造):47年

・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):47年

・鉄骨造(S造):34年

■償却方法

1. 定額法:毎年同じ金額を償却

取得価額 ÷ 耐用年数 = 年間償却額

2. 定率法:初期により多く償却

取得価額 × 定率 = 年間償却額

(定率は耐用年数に応じて定められています)

【計算例】

RC造マンションを3,000万円で購入した場合(建物部分2,000万円):

定額法の場合:

年間償却額 = 2,000万円 ÷ 47年 ≒ 425,532円

この場合、毎年約42.5万円を経費として計上できます。

定率法の場合(定率0.021):

1年目:2,000万円 × 0.021 = 420,000円

2年目:1,580万円 × 0.021 = 331,800円

(以降、残存価額に応じて計算)

また、エアコンや給湯器などの設備も個別に減価償却できます:

・エアコン:耐用年数6年

・給湯器:耐用年数8年

・システムキッチン:耐用年数10年

これらの設備投資も適切に減価償却することで、税負担を軽減できます。

確定申告の注意点

確定申告の際は収入と経費を正確に記録し、必要な証憑書類を保管しておくことが重要です。不明な点がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

賃貸方式の選択

賃貸経営には様々な方式があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。物件の特性や経営方針に合わせて、適切な方式の選択が重要です。

一般賃貸

最も一般的な賃貸方式について、その特徴と注意点を解説します。

普通賃貸借契約のメリット

契約期間の定めがなく、安定した賃貸経営が可能です。また、借地借家法による保護があり、賃借人の権利が守られます。ただし、契約解除が難しい面もあります。

定期借家契約の特徴

契約期間が明確で、期間満了時に確実に契約を終了できます。ただし、契約更新がないため、新たな入居者を探す必要があります。

サブリース

不動産会社が一括して借り上げるサブリース方式について説明します。

サブリースのメリット・デメリット

家賃収入が保証され、管理の手間が省けるメリットがあります。一方で、市場家賃より低い設定になることや、契約条件の変更リスクがあることなどのデメリットもあります。

契約上の注意点

サブリース契約を結ぶ際は、家賃保証の条件や契約期間、解約条件などを十分に確認することが重要です。また、不動産会社の財務状況なども考慮に入れる必要があります。