タワマン(タワーマンション)は眺望が良く、立地もよい物件が多く交通の利便性に優れることなどから、高い人気を誇っています。
一般的に高層階ほど人気のため、「売れない」と懸念されているタワマンの低層階ですが、高層階にはないさまざまなメリットがあります。
たとえば、高層階と比べ災害時に避難しやすく、エレベーターの待ち時間も短いなどが、低層階ならではのアピールポイントです。
タワマンの低層階がなぜ売れないと考えられているのかや、高値で売却するためのポイントを詳しく紹介します。
目次
タワマンの低層階が売れないといわれる理由
一般的にタワマンは高層階のほうが人気が高く、売却価格も低層階より高額に設定されています。
そのため、不動産投資をしている方の中には、タワマンの低層階は売れにくいと考える方もいるようです。
タワマンの低層階が売れないといわれる理由は3つあります。
- 高層階と比べて眺望の良さが劣るから
- 防犯やプライバシーの面で不安があるから
- 外部からの騒音の影響を受けやすいから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
高層階と比べて眺望の良さが劣るから
1つ目の理由は、高層階と比べて低層階は眺望の良さが劣るからです。
タワマンに住む魅力の一つとして、高層階から一望できる都心の風景や街並みが挙げられます。
新宿区が行った「新宿区タワーマンション実態調査報告書」によると、タワマンを購入した動機として、47.5%の人が「眺望が良い」と回答しています。
しかし、タワマンの低層階は、一般的なアパートやマンションとほとんど変わらない眺望です。
高層階のような眺望の良さが期待できないため、タワマンの低層階は売れないといわれています。
防犯やプライバシーの面で不安があるから
2つ目の理由は、セキュリティやプライバシー保護の観点から懸念があるためです。
「新宿区タワーマンション実態調査報告書」によると、タワマンを購入した動機として、57.4%の人が「防犯面で安心」と答えています。
また、「プライバシー性」を理由に挙げる方も多く、全体の26.3%です。
外部から侵入される可能性がほぼない高層階の居住者の中には、昼間でもカーテンを開けっ放しで暮らしている方も珍しくありません。
しかし、タワマンの低層階の場合は、高層階と比べると防犯やプライバシーの面で不安があるといえるでしょう。
たとえば、1階~5階などの低階層であれば外部から侵入しやすく、空き巣などの犯罪被害に遭うリスクが高まります。
さらに、外からの視線も遮りにくいため、日中は窓のカーテンを閉める機会が増えるかもしれません。
このような防犯やプライバシーに対する不安が反映され、タワマンの低層階は売れにくくなっているようです。
外部からの騒音の影響を受けやすいから
3つ目の理由は、外部からの騒音の影響を受けやすいからです。
タワマンは通常、駅前や幹線道路沿い、周囲に商業施設があるなどの好立地に建設されます。
そのため、周辺の交通量が多いケースもあり、低層階では車の音や通行人の話し声が聞こえやすく、騒音被害に悩む方も少なくありません。
さらに低層階の場合は、上階の住人による生活騒音も発生する可能性があります。
上記の理由から、静かな生活環境を求める方にとってタワマンの低層階は敬遠されやすく、売れにくい傾向にあります。
タワマンの低層階にしかないアピールポイント
タワマンの低層階は、高層階にはない強みがいくつかあります。
タワマンの売却を検討している方は、次のようなメリットを購入希望者にアピールするとよいでしょう。
- 災害時に避難しやすい
- エレベーターの利用時間が少ない
- 高層階よりも物件価格が低い
ひとつずつ詳しく解説していきます。
災害時に避難しやすい
地震や水害などの自然災害や、大規模な火災が発生した際に、タワマンの低層階なら高階層よりもスムーズに避難することが可能です。
停電によりエレベーターが止まっても、無理なく階段で下りられます。
東京都によると、都内の超高層建築物は2010年から2020年で約4割増加しており、災害時にエレベーターが停止した際の「陸の孤島化」が懸念されています)。
水や食料、簡易トイレなどの備蓄が十分になければ、長期にわたり在宅避難を行うこともできません。
「新宿区タワーマンション実態調査報告書」でも、特に65歳以上の高齢者がいる世帯では、タワマンに関する心配事として「災害時の避難」が59.0%となっています。
近年は自然災害が頻発化・激甚化しているといわれており、緊急時に避難しやすいという強みから、低層階のニーズが高まっています。
エレベーターの利用時間が少ない
タワマンの低層階は、エレベーターの利用時間や待ち時間が少ないため、外出する際の時間のロスがほとんどありません。
タワマンの広告では、立地の良さをアピールするため、「最寄り駅から徒歩5分」といった宣伝文句がよく使われています。
しかし高層階に住む方の場合、エントランスに入ってエレベーターを待ち、居住階にたどり着くまでの時間も考慮しなければなりません。
エレベーターの待ち時間を計算するにはさまざまな要素を考慮しなければならないのですが、単純計算でエレベーターの速度が120m/分、高さ40階(約120m)に到達するまでの時間は約1分です。
エレベーターの待ち時間も考慮すると、さらに時間のロスが生じます。
低層階ならエレベーターでの移動に時間がかからないため、タワマンの立地の良さを最大限に活かせるでしょう。
日々の通勤や通学から、ちょっとした買い物まで、外出に関しては低層階のほうが便利です。
高層階よりも物件価格が安い
タワマンの物件価格は、階数が上がるにつれて上昇するといわれています。
特に高層階は眺望が良く、ハイグレードな設備が用意されることが多いため、物件価格が突出しています。
一方、タワマンの低層階は、高層階よりも物件価格が低く設定されており、相対的にリーズナブルな物件です。
立地の良さという点では低層階と高層階に差はありません。
一般的なマンションと比べ、将来の値上がりも期待できることから、タワマンの低層階を好む投資家もいます。
タワマンの低層階をできるだけ高値で売るコツ
タワマンの低層階をできるだけ高く売るコツは3つあります。
- 新生活の時期に合わせて売りに出す
- 周辺のタワマンとの競合を避ける
- タワマン売却に強い不動産会社に相談する
低層階の売却を考えている方は参考にしてみてください。
新生活の時期に合わせて売りに出す
不動産取引は、季節によって活発な時期とそうでない時期に分かれます。
不動産が売れやすいとされているのは、新生活を控えた2月から3月にかけての時期です。
一方、売れにくいと時期は年末年始の12月~1月、お盆がある8月といわれています。
タワマンの低層階を売却するなら、2月から3月の間に売りに出すことで、好条件で買い取ってくれる買主がつく可能性があります。
周辺のタワマンが売却する時期は避ける
前述したように売却しやすい時期は2月から3月にかけてですので、近隣のアパートやマンションでも売却の動きが活発化するかもしれません。
周辺のタワマンや同じタワマン内の部屋が売りに出されている場合、競合を避けるため時期をずらすことをおすすめします。
低層階の部屋は競争力が低いため、売却価格を下げざるを得なくなる可能性があるからです。
同時期に周辺のタワマンが売りに出されていないか、地域の不動産会社に相談してみましょう。
タワマン売却に強い不動産会社に相談する
タワマン売却に強い不動産会社なら、低層階の部屋であっても高く売れるチャンスがあります。
不動産会社によって得意な分野が異なるため、どの会社をパートナーに選ぶのかが重要です。
特に低層階の部屋を売りに出す場合は、ホームページなどを確認し、タワマンの取扱件数が多い事業者を選びましょう。
さらに、中古マンションの売却に力を入れている会社であれば、希望に合った買主を見つけられる可能性が高くなります。
「タワマンの低層階は売れない」と感じている方は、タワマン売却に強い不動産会社に相談しましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。