「マンションを売るなら、できるだけ高く売りたい」そう考えるのは当然のことです。しかし、売却価格を左右する要素は多く、ただ待っているだけでは理想の価格で売ることは難しいかもしれません。
マンションを高く売るには、「適切な準備」と「効果的な売却戦略」が重要です。そこで、売却のプロも実践する10の方法を紹介し、どのポイントを優先すべきかも解説します。
目次
マンションを高く売る10の方法
マンションは現物資産であるため、個別性の高い財産です。また、買主ありきの売却になることから、同条件のマンションでも契約ごとに売却価格が大きく変わる点も特徴です。
マンションを高く売却するには、自身が所有するマンションの特徴を知り、適切な売却戦略を練る必要があります。
マンションを高く売却する10の方法を以下に紹介します。
条件に合わせて適切な仲介契約を結ぶ
不動産会社との契約には、以下3つの方法があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの特徴は以下のとおりです。
仲介契約の種類とその概要
仲介契約の種類 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数社との契約 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
指定流通機構(レインズ)への登録 | 不要 | 要(7日以内に登録) | 要(5日以内に登録) |
業務状況の報告義務 | 不要 | 要(2週間に1回以上) | 要(1週間に1回以上) |
所有しているマンションが好立地、築浅など高い需要が望める場合は一般媒介が有利です。複数の不動産会社と契約できるため、より良い条件で売却できる可能性が高まるためです。
一方、築古や郊外の物件など条件が良くないマンションは、専任媒介、もしくは専属専任媒介が向いています。1社としか契約できない点はデメリットですが、その分売却活動に力を入れてもらえる可能性があるためです。
特に専属専任媒介契約は自身で売却活動を行えない反面、不動産会社の報告義務やレインズ登録などのルールが厳しくなっており、売却活動を不動産会社に一任できます。多忙や知識不足により売却活動が難しい場合は、専属専任媒介契約を選ぶのもひとつの選択肢です。
このように、3種の仲介契約にはそれぞれメリットがあります。不動産会社の提案に従うのではなく、自身の状況やマンションの状態によって最適な契約法を選びましょう。
不動産会社の「囲い込み」を防ぐ
不動産会社に売却活動を依頼する際、注意したいのが「囲い込み」です。囲い込みとは、不動産会社が売却を依頼された物件について、あえて表に向けた売却活動を行わず、売買を自社内で完結させることです。
具体的には、他社に物件情報を開示しなかったり、問い合わせを拒んだりする行為が該当します。
不動産会社が囲い込みをするのは、売主・買主双方から仲介手数料を受け取るためです。しかし、囲い込みをされるとマンションの売主は他社に買主を紹介してもらえる機会を失います。そのため、売却活動の長期化や売却価格の低下につながるおそれがあります。
2025年1月より宅建業法施行規則の改正が施行され、囲い込みは制限されるようになりました。具体的には、レインズの登録状況が実際の販売状況と異なっていた場合、虚偽の申告をしていると見なされ処分の対象になります。
しかし、囲い込みの手口は巧妙化しており、法律だけで完全に防止できません。たとえば、他社から電話があった際に、「担当者が不在で対応できない」と答えさえすれば、囲い込みができてしまいます。
囲い込みを防ぐには、モラルが高く信頼できる会社を選ぶことが重要です。
マンションが売れやすい時期を意識する
マンションには売れやすい時期、売れにくい時期があります。最も売れやすい時期は、引っ越しシーズンの2~3月です。
このベストシーズンを狙ってマンションを売り出すことで、スピーディーかつ高額での売却が期待できます。
とはいえ、2~3月に売却活動を始めるのでは遅すぎます。マンションの売却には不動産会社の選定や媒介契約の締結、売却活動などさまざまな準備が必要です。さらに、買主が見つかっても、融資審査や契約の締結に時間がかかります。
売却活動がスムーズに進んだ場合でも、売却までに3~6カ月程度かかると考えておきましょう。2~3月のベストシーズンに売却するには、前年の夏頃から売却の準備を始める必要があります。
マンションの魅力をアピールする
マンションの魅力を説明することも、高額売却に重要な対策です。
購入希望者は、さまざまな要素を考慮したうえでマンション購入を決断します。できるだけ多く、かつ効果的なアピールポイントを伝え、購入希望者の興味を引きましょう。
以下のような点は特にアピールポイントになりえます。
マンションのアピールポイントの一例
立地に関するアピール | 駅からの距離が近い周辺施設が充実している緑が多く閑静近隣住民が親切 |
物件に関するアピール | 日当たりが良い眺めが良い部屋が広い、もしくはちょうど良い広さ必要な設備がそろっているリフォーム済で新築同様である |
また、内覧時に購入希望者の家族構成や購入目的に合わせたアピールをすることも重要です。以下に例を紹介します。
購入希望者 | アピールポイント(例) |
---|---|
小さな子供のいる家族 | 評判の良い保育所が近くにあります公園がたくさんあり、遊ぶ場所に困りませんリビングが広くて良い遊び場になります。お子さんが大きくなったらセパレートにして兄弟別の部屋にもできますよ |
独居世帯 | 24時間ごみ捨て可です駅から近くて、通勤はもちろん週末はレジャーにも行きやすいですよ高速インターネット完備でテレワークにも向いています |
不動産投資家 | 主要駅まで乗換えなしで行けるので需要が高いです5年間所有していますが、空室になったことはありません築年数は古いですがその分お安くします。リフォームに費用を割けるので、周辺物件と差別化できますよ |
マンションの欠点を隠さない
マンションの魅力だけではなく、欠点も包み隠さず購入希望者に説明することで、マンション売却の手残りを多く確保できる可能性が高まります。
その理由は以下の3点です。
契約不適合責任を回避できる
契約不適合責任とは、売却したマンションに契約に適合しない瑕疵などが見つかった場合、買主が売主に対して責任を追及できる制度です。具体的には契約解除や損害賠償、代金減額請求などが挙げられます。
事前にマンションの瑕疵を説明し、契約内容に盛り込むことで、瑕疵担保責任による損失を回避できます。
購入希望者の信頼を得られる
事前にマンションの弱みを丁寧に説明することで、購入希望者の信頼を得られ、成約率が高まる可能性があります
値下げ交渉に適切に対応できる
中古マンションの売却時には、状態の悪さを理由に値下げ交渉をされる場合があります。
あらかじめマンションの弱みを説明しておけば、弱みを考慮した価格設定にしていると主張でき、極端な値下げ要求を断りやすくなります。
売り出し価格は査定価格より、少し高めに設定する
マンションの売り出し価格は売主が自由に設定できます。高く売却したい場合は、1~2割程度高めに設定しましょう。
なぜなら、購入希望者に値下げ交渉をされる場合があるためです。あらかじめ値引き分の価格を上乗せしておけば、値下げ交渉に応じることができ、成約に結びつきやすくなります。
ただし、上乗せした金額以上の値引きを持ちかけられたときは注意が必要です。手残りを多く確保するためにも、安易に値下げを受け入れないようにしましょう。
しかし、長期間に渡り購入希望者が現れていない場合は、交渉に応じるのもひとつの選択肢です。値下げ交渉は自身の売却目的や売却希望額を考慮して、慎重に検討することが重要です。
リフォームを実施する
マンションの買主が見つからない、もしくは査定額が低い場合はリフォームでマンションの価値を上げることも検討しましょう。
マンションの見た目や機能が改善されることで、査定や内見の印象が良くなり、高額で売却できる可能性が高まります。
しかし、リフォームには多額の費用がかかります。金額によっては、売却価格でリフォーム費用を回収できず、赤字になってしまうため注意が必要です。
汚損が目立ちやすい水回りのみ交換する、和室を洋室に変更するなど、特に効果の高いポイントに絞ることで、リフォーム費用を抑えつつ、高い効果を上げられるでしょう。
ホームステージングで部屋を魅力的に演出する
ホームステージングはマンションの室内に家具やインテリアなどを設置し、魅力的に見せることです。
ホームステージングによって室内を装飾し、魅力的な室内の写真を不動産広告に掲載することで、内見や購入の希望者数を増やせる点がメリットです。
デメリットとしてはコスト増が挙げられます。一般的にホームステージングは、専門会社からインテリアをレンタルします。レンタル料の相場は15~30万円とかなり高額です。
ホームステージングの費用を抑えるには、複数の専門会社に見積もりを依頼し、費用と内容が見合った会社を選ぶことが重要です。
また、不動産会社によってはホームステージング費用を負担してくれる場合がありますので、相談してみるのも良いでしょう。
節税対策について学んでおく
マンションの売却にはさまざまな税金がかかります。節税対策について理解することで、売却時の出費を減らし、手元資金を多く確保できます。
マンション売却時の主な節税対策は以下のとおりです。
3,000万円特別控除
3,000万円特別控除とは、居住用不動産の売却益のうち最大3,000万円まで所得税・住民税が非課税になる制度です。
3,000万円特別控除が適用されるには「居住しなくなってから3年以内の年末までに売却する」「親族間の売却ではない」「他の特例に該当しない」など、さまざまな条件を満たすことが重要です。
なお、投資用不動産には適用されませんので注意しましょう。3,000万円特別控除の適用条件や最新情報については、国税庁の「No.3302 マイホームを売ったときの特例」でご確認ください。
長期譲渡所得税適用後に売却する
不動産の売却益にかかる譲渡所得税は、物件の所有年数によって「短期譲渡所得税」「長期譲渡所得税」に分かれ、税率も変わります。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の別 | 所有期間※1 | 税率 | |||
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税※2 | 計 | ||
短期譲渡所得税 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得税 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※1 所有期間:売却した年の1月1日時点での経過年数
※2 復興特別所得税:復興のために必要な財源の確保を目的とした所得税。平成25年から令和19年まで申告・納付する。
長期譲渡所得税が適用される所有期間5年超のタイミングで売却することで、譲渡所得税を大幅に軽減できます。
マンションの売却実績が豊富な不動産会社に相談する
マンションを高く売却するには、マンションの価値を高めるとともに、マンションの特徴に合った売却戦略を考えることが重要です。
しかし、マンション売却には不動産市況やエリアのニーズ、法的規制などの専門的知識が必要です。プロの不動産投資家でない限り、自力で売却活動を進めることは難しいでしょう。
マンションを高く、早く、また安全に売却するには、優秀な不動産会社に相談することが一番です。
売却実績が豊富な不動産会社であれば、適切な査定額を算出してくれます。また、内覧のサポートや節税方法の提案、リフォーム・ホームステージングの要・不要の判断などもしてくれるため、費用を抑えつつ売却益を高められます。
まずは不動産会社に相談し、実績や対応の良さなど、さまざまな視点から信頼できる不動産会社か見極めましょう。