さまざま事情で家の住み替えを検討する人は多いです。しかし、希望を持って住み替えたにもかかわらず、失敗したと感じる人もいます。
新築物件に住み替える際の失敗例や、後悔しないためのポイントを紹介します。
目次
新築物件に住み替える際のよくある失敗例
新築物件に住み替える場合の、よくある失敗例を4つ紹介します。
住んでいた家を想定金額で売却できなかった
家の住み替えには、持ち家を先に売却する「売り先行」と、新居の購入を先に行う「買い先行」の2パターンがあります。住宅ローンの残債がある場合は売り先行で新築物件に住み替えることが多いのですが、もともと住んでいた家を希望価格で売却できないと住宅ローンが残ってしまう場合があります。
残債を一括返済するために貯蓄を切り崩したり新居の頭金を減らしたりすると、当初立てていた資金計画が大きく崩れてしまうので、失敗したと感じる人が多いです。
また買い先行で住み替えをした場合も、希望価格どおりに売却できないと余裕を持ってローン返済が行えず、生活費を捻出するのも難しくなり新生活に大きな影響を与えてしまいかねません。
仮住まい期間が長くなってしまった
持ち家の引き渡しまでに新築物件を購入できていないと、仮住まいを用意しなければなりません。仮住まいで生活するためには、以下のような費用が必要です。
- 引っ越し代
- 敷金・礼金
- 鍵交換代などの諸費用
- 家賃
- 駐車場代
仮住まいが長くなると家賃負担が大きくなり、資金計画にも悪影響を与えるでしょう。
家選びを妥協してしまった
家の住み替えは通常の引っ越しとは異なり、家の売却・購入のタイミングが重要です。売り先行で住み替えを行うと、想定よりも早く持ち家に買い手がついてしまいゆっくり新居を探す余裕がなくなってしまうことがあります。また、仮住まいにかかる費用を抑えようとするあまり、新居を妥協して選んでしまうケースもあるでしょう。
新築物件選びを焦って妥協してしまった結果、引っ越し前よりも周辺環境が悪くなってしまったり近隣関係に悩まされたりして、家の住み替えに失敗したと考える人もいるようです。
2軒分の住宅ローンや固定資産税を支払わなければならなくなった
買い先行で家の住み替えを行った結果、もともと住んでいた家になかなか買い手がつかず、旧居と新居の2軒分の住宅ローンを払わざるを得ないケースもあります。ただし、2重ローンを避けるために、旧居の売却価格を希望価格より下げてしまうと、前述のとおりローンが残るリスクや資金計画が崩れるリスクが発生しうるので、安易な値下げにも注意が必要です。
さらに家の売買のタイミングによっては、2軒分の固定資産税が発生する可能性もあります。固定資産税とは、1月1日時点で所有している土地や建物に課せられる税のことです。税金の支払いが2軒分発生すると、住宅ローンとともに家計を圧迫する要因となるため、なるべく早めに持ち家を売却する必要があります。
新築物件への住み替えで失敗しないための6つのポイント
新築物件への住み替えを検討している人は、紹介したような失敗を起こさないためにも、気をつけるべきポイントをしっかりと理解しましょう。ここでは、すぐに実行できる6つのポイントについて解説します。
1. 念入りに資金計画を立てる
持ち家を売却して新築物件に住み替える際は、念入りに資金計画を立てましょう。もともと住んでいた持ち家は、必ずしも希望価格で売却できるとは限りません。後述する家の売却相場についてしっかりと下調べをした上で、手離れのよい希望価格を設定しましょう。
なお2024年度以降は円安などの影響で、資材が値上がり傾向にあります。そのため新築物件はどんどん高額になっていくでしょう。さらに、住宅ローンの低金利は永続的なものではなく、今後上昇するという見方もあります。特に変動金利で住宅ローンを組む際は返済額が大きく変わる可能性もあるので、金利動向を常にチェックしつつ資金計画を立てましょう。
2. 住み替えの目的を明確にしておく
住み替えの失敗を防ぐためには、目的を明確にすることも大切です。「なぜ住み替えるのか」を明確にすれば新築物件選びの優先順位が明らかになり、妥協したり焦って物件を決めたりする可能性が低くなります。
また、多少のデメリットが新居にあったとしても、高い優先順位の条件を満たせていれば、失敗したと感じることも少ないでしょう。住み替えの目的を軸に行動すると、さまざまな場面で冷静な判断を下せるのでおすすめです。
3. 余裕を持ったスケジュールを立てる
持ち家を売却して新築物件に住み替えるときは、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。売り先行と買い先行はどちらもメリットとデメリットがあり、どちらが自身の状況に適しているかは異なります。
たとえば、売り先行で家の住み替えをするケースの場合、売却期間に制限を設けてしまうと満足できる新築物件選びができなくなったり、資金計画が崩れやすくなったりします。
買い先行で家の住み替えをするケースの場合は、2重ローンを避けるために売却を急ぎ過ぎてしまうと、資金計画が崩れてしまいかねません。
なお、住み替えにかかる期間は3カ月〜1年ほどです。余裕を持って住み替え先を探したい人は、半年〜1年半ほどかけると納得できる新生活を送れるでしょう。
4. 家の売却相場を調べておく
住み替えを検討しているなら、今住んでいる家の売却相場を調べておきましょう。売却価格を予想できなければ、適正な資金計画を立てるのは困難です。
特に現在住んでいる家の住宅ローンが残っている場合は、売却益で相殺できるのかは重要なポイントとなります。
もし住み替え後の住宅ローンと併せて返済する必要があるならば、新築物件の購入資金にも影響が出るでしょう。さらに、相場に基づいて売却価格を設定すると買い手が見つかりやすくなり、スムーズに住み替えできる可能性が高まります。
住所や築年数を入力するだけでおおよその査定額が分かるサービスを利用したり、訪問査定で周辺環境や家の状態を含めた詳細な金額を算出してもらったりする方法がおすすめです。
5. 「売り先行」で住み替える
持ち家から新築物件に住み替えるときは、今住んでいる家の売却手続きを進めてから新居探しをしましょう。売り先行にもデメリットはあるものの、経済的な負担を減らしやすいといえます。
たとえば、先に持ち家を売却すると明確な売却価格を把握した上で住み替え先を検討できるため、資金計画を立てやすいです。必要に応じたローンを選択でき、金銭的な負担を抑えながら住み替えできるでしょう。
とはいえ、新居の目星がないまま持ち家を先に売却すると、仮住まい期間が長くなる可能性があります。デメリットをなるべく減らせる動きやタイミングを考慮することが大切です。
6. 住み替えの対応実績が豊富な不動産会社に依頼する
住み替えを検討しているなら、対応実績が豊富な不動産会社に相談しましょう。中古物件の売却や新築物件の取り扱いの両方を一社に依頼できれば、住み替えにかかる作業をすべて任せられます。また、売却のタイミングや売り・買い先行のどちらで進めるのがよいのかなど、適切なアドバイスをもらいやすいです。住み替えの失敗例も把握しているため、状況に合った対応策を教えてくれるでしょう。
スムーズに家を住み替えるためには、実績が豊富な不動産会社を探すことから始めましょう。
高田 一洋(たかだ かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産仲介営美・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師等を務める。豊富な不動産知識に加え20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。