仮住まいの際に住所や免許証は変更すべき? 必要なケースや罰則について解説

住まいの売却や建て替えの際に必要なのが「仮住まい」です。売却手続きや工事期間が長引くと、仮住まいの期間も長期化する可能性があります。

仮住まいに引っ越すに当たって、住所や免許証の変更は必要なのか気になる人もいるでしょう。仮住まいに移るときに住民票の異動が必要なケースや、住まいの売却や建て替えを長期化させない方法を紹介します。

仮住まいの期間が長期化する場合は住所変更が必要

住まいの売却や建て替え、リフォームなどを行う場合、一時的な生活の拠点である「仮住まい」に引っ越すことが一般的です。

法律上、引っ越しにより住所を移す場合、14日以内に住民票の住所変更の届出をしなければなりません(住民基本台帳法第22条・23条)。しかし、以下のいずれかに当てはまる場合、例外的に住民票を異動しなくてもよいとされています。

  • 仮住まいで生活する期間が1年未満である場合
  • 個人の生活の本拠が引っ越し前と変わっていない場合

その理由は、国内法において、居住者とは“国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人”と定義されているからです(※)。

住所とは、個人の生活の本拠であり、その人の生活の中心がどこにあるかを表す言葉です。また居所とは、“その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所”を指します(※)。

したがって、仮住まいの期間が1年未満か、生活の本拠が以前と同じ場合は「居住者」として扱われるため、住所変更の必要もありません。海外に旅行したり、1年未満の短期留学をしたりする人が、転出届を出す必要がないのも同様の理由によるものです。

※出典:国税庁.「No.2875 居住者と非居住者の区分」.“国内法による取扱い”

正当な理由なく届出をしない場合は罰則が科される可能性も

何らかの原因によって、仮住まいの期間が1年以上に伸びた場合は、住民票の住所変更の届出が必要です。正当な理由なく、住民票の異動を行わなかった場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(※)。

※参考:総務省.「住所の異動届は正しく行われていますか?」.“住民票の住所変更について”.

その地域の行政サービスを受けられない可能性もある

また、住民票の住所変更を行わないと、お住まいの市区町村において行政サービスを受けられない可能性があります。

住民票(住民基本台帳)には、氏名、生年月日、性別、住所、世帯主との続柄などの情報が記録されており、国民健康保険、国民年金、児童手当、選挙人名簿への登録など、さまざまな行政サービスの基礎となっているからです(※)。

住まいの売却や建て替えが長期化することが分かった段階で、速やかに仮住まいの住所に変更しましょう。

※参考:総務省.「住所の異動届は正しく行われていますか?」.“住民票の住所変更について”.

住民票の住所を変更する方法

住民票の住所を変更するための届出を「異動届」といいます。異動届の出し方は、仮住まいの住所がほかの市区町村にあるのか、同一の市区町村内で転居するのかによって変わってきます。

ほかの市区町村に転出・転入する場合

ほかの市区町村にある仮住まいへ引っ越す場合は、転出届・転入届の提出が必要です。

まず、引っ越し前の市区町村に対し、転出届を提出しましょう。マイナンバーカードをお持ちの場合は、マイナポータルを通じてオンラインで提出できます。市区町村の窓口で手続きを行う場合は、転出証明書の受け取りが必要です。

次に引っ越し先の市区町村において、転入届を提出します。転入届の提出は、転入した日から14日以内に行わなければなりません(※)。

また転入届は、転出届と異なりオンラインで提出できません。マイナポータルを通じて転出届を提出した人は、市区町村の窓口でマイナンバーカードを提示の上、転入届を提出しましょう。それ以外の方は、転入届に転出証明書を添えて提出してください。

※参考:総務省.「住所の異動届は正しく行われていますか?」.“住民票の住所変更について”

同一の市区町村内で転居する場合

同一の市区町村内で転居する場合、市区町村の窓口で転居届を提出する必要があります。転居届の提出は、転居した日から14日以内に行いましょう(※)。

手続きについて分からない点がある場合は、お住まいの市区町村の窓口へお問い合わせください。

※参考:総務省.「住所の異動届は正しく行われていますか?」.“住民票の住所変更について”.

住民票を移す場合は免許証やマイナンバーカードの訂正を

仮住まいへの引っ越しに伴い、住民票を移した場合は、免許証(運転免許証)やマイナンバーカードなどの公的身分証明書の住所も併せて変更する必要があります。

ここでは、免許証・マイナンバーカードの住所を変更する手続きをそれぞれ解説します。

免許証の住所を変更する方法

免許証の記載事項(本籍や住所、氏名など)に変更があった場合、道路交通法第94条第1項の定めにより、速やかに届出を行うことが義務づけられています。もし届出を行わなかった場合は、2万円以下の罰金または科料に処せられる可能性があります(同法第121条第1項第9号)(※)。

免許証の住所を変更する場合、以下の2点を用意しましょう。

  • 変更届
  • 住民票の写し、本人宛の郵便物など、住所を確認できる書類をいずれか一つ

変更届の提出先は、お住まいの地域にある住所地公安委員会です。受付時間や必要書類、手数料などについて詳しく知りたい場合は、各都道府県警察の運転免許センターへ問い合わせるとよいでしょう。

※参考:警察庁.「日本在住で日本の運転免許証をお持ちの方」.“3.住所や氏名を変更した場合”.

マイナンバーカードの住所を変更する方法

免許証だけでなく、マイナンバーカードまたは通知カードの住所変更も必要です。マイナンバーカード本体は住民票を移しても変わりませんが、住所変更手続きを行い、新住所追記欄に最新の住所を記載しなければなりません。

マイナンバーカードの住所変更手続きは、引っ越し先の市区町村の窓口で行ってください。本人のマイナンバーカードを持参する必要があります。

マイナンバーカードの住所を変更することなく90日が経過すると、そのマイナンバーカードは失効するため、速やかに手続きを行いましょう(※)。

※参考:総務省.引っ越しの際は「マイナンバーカード・通知カードの住所変更手続」もお忘れなく!

仮住まいを長期化させないための対策は?

仮住まいの期間が長引くと、住民票の異動届の提出や、免許証・マイナンバーカードの住所変更手続きが必要になります。

こうした手続きに時間をかけたくない場合は、住まいの売却・建て替えが長期化しないように、次の対策を講じることが大切です。

  • 信頼できる不動産会社を選ぶ
  • 工期遅延を防止する対策を講じる

以下で一つずつ解説します。

信頼できる不動産会社を選ぶ

住み替えなどに伴い、住まいを売却する場合は、信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。

住まいの売却に時間がかかると、仮住まいへの住所変更が必要になってしまうだけでなく、家賃などの費用も余分にかかります。売却実績が豊富にあり、親身になって対応してくれる不動産会社なら、仮住まいの期間が長期化するリスクを抑えられます。

工期遅延を防止する対策を講じる

また、住まいの建て替えを行う場合も、建築会社(工務店)選びが重要です。特に、建て替えの場合、着工の遅れや人手不足などが原因で工期遅延が発生し、仮住まいの期間が長期化するケースが見られます。

そのため、建設会社と契約を結ぶ段階で、工期遅延のリスクを防ぐための対策を講じておくとよいでしょう。たとえば、契約書で遅延損害金を取り決めておくと、工期の遅れに対する抑止策につながります。

短い間の仮住まいであれば、住所変更手続きは必要ありません。仮住まいの期間を長期化させないため、信頼できるパートナーを探すことが大切です。