老後の住まいの選択肢として、一戸建てかマンションかで迷っている人も多いでしょう。マンションは立地がよい物件が多く、セキュリティの点で戸建住宅より優れているものの、購入資金がかかるといったデメリットもあります。
老後にマンション住まいをするデメリットや、住みやすい物件を選ぶポイント、高齢が購入資金を用意する方法について紹介します。
目次
老後にマンション住まいをするデメリットとは?
内閣府の「令和5年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によると、高齢者の住まいで最も多いのが一戸建て(76.2%)です。次いで8.3%の人が分譲マンション、5.9%の人が賃貸用のアパートやマンションに住んでいます。
一戸建てと比べて、老後のマンション住まいにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。ここでは、主に分譲マンションを購入するケースを想定し、老後のマンション住まいのデメリットを紹介します。
- まとまった購入資金が必要になる
- 地震などの災害時に不安がある
- 管理費や修繕積立金がかかる
1. まとまった購入資金が必要になる
最初のデメリットは、まとまった購入資金が必要になるという点です。
国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査」によると、分譲集合住宅(新築マンション)の購入資金の平均は4,716万円です。中古マンションなどの既存(中古)集合住宅では、平均して2,793万円とやや低い水準となるものの、多額の購入資金を用意しなければなりません。
特に新築マンションを購入する人は、退職金や預貯金などである程度の自己資金を用意しつつ、無理のない資金計画を立てる必要があります。病気やけがなどの突発的な出費が発生する可能性も想定して、しっかりと老後資金を確保しておくことが大切です。
2. 地震などの災害時に不安がある
デメリットには、災害時に不安があるという点も挙げられます。
マンションの上層階に住むと、地震や台風などの災害により、エレベーターが停電し使えなくなった場合に、階段の上り下りをしなければならないというデメリットもあります。
特に高齢者にとっては、緊急時の移動が大変になる可能性があるため、居住階は慎重に選びましょう。
3. 管理費や修繕積立金がかかる
3つ目のデメリットは、管理費や修繕積立金がかかるという点です。
分譲マンションを購入すると、家賃はかかりません。しかしマンションには専有部分だけでなく、居住者全員が利用できる共有部分(エントランスや廊下、階段など)もあります。共有部分の清掃やメンテナンスのため、管理費や修繕積立金を毎月徴収するマンションが一般的です。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」によると、駐車場使用料を除く管理費の平均は1万1,503円、修繕積立金の平均は1万3,054円です。マンションの契約駐車場を利用する人の場合、さらに管理費などが上乗せされます。
毎月の生活費や住宅ローンの返済額などの支出を考慮した上で、管理費や修繕積立金を無理なく支払える物件を選びましょう。
老後も住みやすいマンションを選ぶポイント
老後も住みやすいマンションを選ぶポイントは3つあります。
- 周辺環境がよく安心・便利に暮らせるか
- バリアフリー設計になっているか
- 子どもや孫が近くに住んでいるか
1. 周辺環境がよく安心・便利に暮らせるか
まずはマンションの立地や周辺環境を確認し、老後も安心・便利に暮らせる物件を選びましょう。
たとえば、高齢になると運転免許証を返納し、車を手放すことも考えられます。駅や停留所へのアクセスがよいマンションなら、公共機関を利用して便利に生活できるでしょう。
またスーパーやドラッグストア、銀行、郵便局、病院など、日々の暮らしに欠かせない生活利便施設が近くにあるかどうかも重要です。
内閣府による「令和5年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」でも、住まいや地域の環境に求める要素として、高齢者の61.4%が「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」、54.1%が「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」を重視していると回答しています。
2. バリアフリー設計になっているか
また老後の住まいを選ぶ場合、バリアフリー設計になっているかも必須条件のひとつです。
- 居室内に段差がなく、必要に応じてスロープが設置されているか
- 玄関やトイレ、浴室などに転倒予防の手すりがついているか
- 脱衣場はヒートショックを予防するため、二重窓や暖房などの設備があるか
- 寝室とトイレが近く、夜間に利用しやすい間取りになっているか
分譲マンションの中には、高齢者を主なターゲットとしたシニア向け分譲マンションもあります。シニア向け分譲マンションには、看護師が常駐しているケースもあり、老後も安心して暮らせるでしょう。
3. 子どもや孫の世帯との距離が近いか
子どもや孫がいる人は、近くに住めるマンションを探すとよいでしょう。内閣府の調査によると、高齢者の32.8%が「同居ではなく近居したい」と回答していて最も多く、「同居したい、同居を続けたい」が23.2%と続きます。
近年は、子どもや孫と一緒に暮らす同居よりも、互いに行き来しやすい場所で暮らす近居に人気が集まっています。同居と比べて、子どもや孫の負担が少なく、適度な距離感を保ちながら生活することが可能です。
老後の生活に向けてマンションを購入する方法
高齢者の場合、住宅ローンの審査が通りにくくなるといわれています。老後の住まいとしてマンションの購入を考えている人は、退職金や預貯金などを活用し、ある程度の自己資金を用意しておくとよいでしょう。
国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査」によると、比較的高齢の人が多い二次取得者(マンションなどの購入が2回目以降の人)の場合、分譲マンションの購入資金の自己資金比率は72.8%です。
自己資金で足りない部分は、高齢者でも比較的利用しやすいとされるリバースモーゲージ型ローンや、家を売却した資金などによって補うとよいでしょう。
リバースモーゲージ型ローンとは、家を担保としてローンを組み、生活資金を得たり、住まいの購入や建て替えの費用を捻出したりするローンです。特に住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用した金融機関によるリ・バース60は、住み替えを検討している人向けのローンとなっています。
リバースモーゲージ型ローンでは、毎月の支払いが利息分だけになるため、現在の収入が年金のみの人でも利用しやすいのが特徴です。元金の返済は、担保物件の売却代金によって行うため、亡くなった後に相続人が債務を負うこともありません(ノンリコース型の場合)。
また家を売却した資金を活用し、マンションの購入資金にするのもよいでしょう。高齢になってから住まいを探す場合、新居がなかなか決まらないことが想定されるため、リースバックというサービスを利用すると便利です。
リースバックとは、“住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住む”サービスです。
新居が決まるまでの間、リースバックを利用することで、旧居を仮住まいとして利用できます。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。