全国的に増加傾向にある空き家問題。その対策として、専門業者による空き家管理サービスの需要が高まっています。しかし、どのような会社を選べば良いのか、どんなサービスが必要なのか、費用はどのくらいかかるのか、多くの方が疑問を抱えているのではないでしょうか。
東京での空き家管理について、サービスの内容や費用相場、信頼できる会社の選び方まで、空き家所有者の方々に役立つ情報を詳しく解説していきます。これから空き家の管理を検討される方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家問題の現状と課題
近年、日本全国で深刻化している空き家問題。特に東京都においては、高齢化や人口移動に伴い、その数が年々増加傾向にあります。空き家の適切な管理は、所有者だけでなく地域社会全体にとっても重要な課題となっています。
ここでは、東京における空き家の現状と、その管理方法について詳しく解説していきます。
東京都の空き家の実態
東京都の空き家率は、全国平均と比較すると低い水準にありますが、実数でみると決して少なくありません。2018年の「住宅・土地統計調査」によると、東京都内の空き家総数は約81万戸で、空き家率は約11%となっています。
特に、都心部から離れた地域ほど空き家率が高くなる傾向がみられ、高齢化が進む地域では空き家の増加が顕著です。
この背景には相続による空き家の発生、建物の老朽化、所有者の高齢化や転居などさまざまな要因があります。また、所有者が遠方に住んでいるケースも多く、適切な管理が行き届かないことも問題を深刻化させている一因です。
空き家が引き起こす問題点
空き家の放置は、様々な社会問題を引き起こす可能性があります。その影響は所有者個人の問題にとどまらず、地域社会全体に及ぶことがあります。以下では、主な問題点について詳しく見ていきましょう。
防犯・防災面のリスク
管理が行き届いていない空き家は、不審者の侵入や放火などの犯罪の温床となるおそれがあります。実際に、空き家が犯罪の現場として使用された事例も報告されています。また、火災が発生した際は、近隣へ燃え移るかもしれません。
さらに、地震や台風などの自然災害時には、建物の倒壊や外壁・屋根材の一部が飛んでくるなど、周辺住民を命の危険にさらすことさえあります。
特に木造の古い建物の場合、防犯・防災面のリスクは高いでしょう。
近隣トラブル
空き家の管理不足は、近隣住民との関係悪化を招くことがあります。雑草の繁茂や庭木の越境、ゴミの不法投棄などは、見た目の問題だけでなく、害虫や野良猫の住処となることで衛生面での問題も引き起こします。
また、建物の老朽化による外壁の剥落や雨どいの破損は、隣接する建物や通行人に危害を及ぼす可能性があります。こうした状況は、近隣住民との深刻なトラブルの原因となることがあります。
資産価値の低下
適切に管理されていない空き家は、建物自体の価値が急速に低下するだけでなく、周辺の不動産価値にも悪影響を及ぼします。特に、外観の劣化や庭の荒廃は、街並みの美観を損ない、地域全体のイメージダウンにつながる可能性があります。
また、空き家の存在は、その地域の防犯・防災面での不安要素となり、結果として周辺物件の賃料や売却価格の下落を招くことがあります。このように、空き家問題は個人の資産価値だけでなく、地域全体の不動産市場にも影響を与える可能性があります。
空き家管理サービスの種類と選び方
空き家の適切な管理は、問題を未然に防ぐために非常に重要です。最近では、専門の管理会社によるサービスを利用する方法が注目されています。
ここでは、空き家管理サービスの具体的な内容と、選び方のポイントについて解説します。
基本的な管理サービスの内容
空き家管理サービスには、建物の状態を維持するための基本的なサービスがあります。これらは建物の劣化を防ぎ、安全性を確保するために必要不可欠な項目です。以下で、主要なサービス内容について詳しく見ていきましょう。
定期巡回・点検
定期巡回は空き家管理の基本となるサービスです。通常、月1〜2回程度の頻度で建物の外観や敷地内を巡回し、異常がないかを確認します。
特に建物の損傷は放置すると大きな問題に発展する可能性があるため、早期発見が重要です。
主な点検内容として、以下のような項目が挙げられます。
- 建物の外観における破損や劣化の確認
- 郵便物の確認と整理
- 不審者の侵入跡のチェック
- 雨漏りや水漏れの有無の確認
- 害虫や小動物の侵入の有無の確認
季節の変わり目は建物に与える影響が特に大きいため、より詳細な点検が行われます。また、台風や大雨の後には臨時の点検も必要となることがあります。
通気・換気
建物内の空気を循環させることは、カビや害虫の発生を防ぐために重要です。定期的な換気により、室内の湿気を適切にコントロールし、建材の劣化を防げます。
通気・換気サービスでは、窓や扉の開閉による自然換気を基本に、室内の温度・湿度管理を行います。必要に応じて除湿器の設置や管理も行われ、換気扇の作動確認なども定期的に実施されます。
これらの作業頻度は、建物の状態や季節に応じて調整されます。特に梅雨時期や夏季は湿気が多くなるため、より頻繁な換気が必要でしょう。
庭木の手入れ・除草
空き家の外観管理において、庭の手入れは非常に重要です。放置された庭は近隣への迷惑となるだけでなく、不審者に空き家であることを悟られる原因にもなります。
庭の管理には以下のような作業が含まれます。
- 定期的な草刈りや除草
- 庭木の剪定
- 落ち葉の清掃
- 害虫の駆除
- 植木への水やり(必要に応じて)
オプションサービス
基本的な管理サービスに加えて、建物の状態や所有者のニーズに応じて、様々なオプションサービスを追加できます。
具体的には以下のようなオプションサービスがあります。
- 室内清掃サービス:定期的な室内清掃やエアコン等の設備清掃を行う
- 設備点検サービス:給排水設備や電気設備の動作確認、必要に応じた修繕を行う
- セキュリティサービス:防犯カメラの設置や警備会社との連携による24時間監視を提供する
- 残置物の整理・処分サービス:遺品整理や不用品の処分を行う
これらのサービスは空き家の状況や管理の目的、予算に応じて選択できます。
料金体系の比較
空き家管理サービスの料金は、建物の規模やサービス内容によって大きく異なります。適切なサービスを選択するには、料金体系を理解することが重要です。
基本料金プランには、一般的に月1〜2回の定期巡回、建物外観の確認、郵便物の確認・整理、簡単な通気・換気作業などが含まれています。
料金は建物の種類や規模によって異なり、戸建て住宅の場合は月額8,000円から1万5,000円程度、マンションの場合は月額5,000円から1万円程度が一般的な相場となっています。
ただし、建物の立地条件や築年数、面積などによって変動する可能性があります。
加えて、オプションサービスを利用する場合は、それぞれのサービス内容に応じた以下のような追加料金が発生します。
- 室内清掃:1回あたり約1万5,000~3万円
- 庭木の手入れ:1回あたり1~2万円
- セキュリティサービス:月額3,000円~1万円
- 設備点検:1回あたり5,000~1万5,000円
これらの料金は、作業の範囲や建物の状態によって変わりますので、具体的な料金については各管理会社に確認することをおすすめします。
空き家の活用方法
空き家を放置せずに有効活用することで、維持管理費用の捻出や資産価値の維持・向上が可能です。ここでは、様々な活用方法とそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
賃貸活用は、空き家活用の代表的な方法の一つです。安定した賃料収入が得られるうえに、賃貸管理会社に管理を任せることで、所有者の負担を軽減できます。さらに、条件によっては固定資産税の軽減措置を受けられる可能性もあります。
ただし、、賃貸借を開始する前にリフォーム費用が必要となることが多く、初期投資の負担が発生します。また、賃貸管理会社に支払う管理手数料も必要です。加えて、入居者とのトラブル対応が必要となる可能性もあるため、心理的な負担を考慮する必要があります。
これらのメリット・デメリットを十分に検討したうえで、自身の状況に合わせて賃貸活用を決断することが重要です。特に物件の立地や状態、想定される賃料収入と必要経費のバランスを慎重に見極める必要があります。
売却による活用
建物の維持管理が困難な場合や、相続対策として売却を選択するケースもあります。売却を検討する際は、以下の点に注意が必要です。
- 市場価値の適正な評価
- 売却のタイミング
- 不動産会社の選定
- 必要な修繕・リフォームの見極め
- 税金対策(譲渡所得税等)
リノベーションによる価値向上
リノベーションにより建物の価値を高め、より有利な条件での賃貸や売却が可能となります。最近では、以下のようなリノベーション事例が増えています。
- 古民家を活かしたカフェやレストラン
- シェアハウスやゲストハウス
- コワーキングスペース
- 地域コミュニティの交流施設
地域資源としての活用例
空き家を地域の活性化に活用する取り組みも増えています。具体的な活用例には、以下のようなものがあります:
- 子育て支援施設
- 高齢者向けのデイサービス施設
- 地域の交流スペース
- アーティストの制作活動拠点
- 起業家向けのインキュベーション施設
行政による支援制度
空き家対策には様々な行政の支援制度が用意されています。これらの制度を活用することで、管理や活用にかかる負担を軽減できます。
東京都では空き家問題への対策として、総合的な施策を展開しています。まず基本となるのが空き家等対策計画の策定です。この計画に基づいて定期的な実態調査を実施し、空き家の分布状況や管理状態の把握を行っています。
また、空き家所有者への指導・助言も積極的に行われており、特定空家等(周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼす空き家)に対しては、法律に基づく措置を講じています。さらに、空き家の利活用を促進するための事業も実施されており、所有者と利用希望者のマッチングなども行われています。
各区市町村でも独自の補助制度を設けており、空き家の解体やリフォーム、耐震改修などに対する経済的支援を行っています。具体的には、「空き家の解体費用の一部を補助する解体補助金」「住宅としての機能を維持・向上させるためのリフォーム補助金」「安全性を高めるための耐震改修補助金」などがあります。
また、空き家を地域の活性化に活用する事業に対する補助金や、家財道具の処分費用を補助する制度なども用意されています。
これらの補助制度は、区市町村によって補助額や条件が異なるため、具体的な内容については、物件が所在する自治体に直接確認することをおすすめします。
相談窓口の活用も重要です。各自治体に設置されている相談窓口では、空き家の管理方法に関する専門的な助言を受けられます。
また、利用可能な補助制度の案内や、建築士や弁護士などの専門家の紹介も行っています。定期的に法律相談会なども開催されており、相続や登記に関する相談にも対応しています。
さらに、地域での空き家活用の成功事例なども紹介されており、活用方法の検討に役立つ情報を得られるでしょう。
空き家管理会社の選び方
空き家の適切な管理を実現するには、信頼できる管理会社を選ぶことが重要です。ここでは、管理会社を選ぶ際のポイントと、契約時の注意事項について解説します。
信頼できる会社の特徴
信頼できる空き家管理会社には、いくつかの共通する特徴があります。まず、業界での実績や経験が豊富であることが重要です。空き家管理の専門知識を持ち、地域の特性をよく理解している会社を選ぶことで、より適切な管理が期待できます。
また、サービス内容が明確で、料金体系が透明であることも重要な特徴です。見積もりや契約内容について丁寧な説明を行い、質問にも誠実に対応する姿勢があるかどうかを確認しましょう。
さらに、緊急時の対応体制が整っていることも重要です。24時間対応可能な連絡体制や、地域の協力業者とのネットワークを持っているかどうかも確認すべきポイントです。
契約時の注意点
管理会社との契約時には、サービスの具体的な内容と頻度を明確にし、契約書に明記してもらうことが重要です。また、基本料金に含まれるサービスと、オプションとして追加料金が必要なサービスの区別を明確にしておくことも大切です。
契約期間や解約条件についても、事前に確認が必要です。特に、解約時の手続きや違約金の有無などについては、しっかりと確認しておくべきでしょう。また、鍵の保管方法や使用に関するルール、個人情報の取り扱いについても、契約書に明記されているかを確認します。
サービス内容のチェックポイント
管理会社のサービス内容を評価する際は、定期巡回の頻度と内容が適切かどうかを確認します。建物の状態や立地条件に応じて、必要な巡回の頻度や内容が異なるためです。
また、報告体制についても確認が必要です。巡回後の報告書の内容や、写真による状況報告の有無、報告方法(メール、Web、書面など)について確認しましょう。緊急時の連絡体制や対応方針についても、事前に確認しておくことが重要です。
さらに、管理会社がどのような協力業者のネットワークを持っているかも重要なポイントです。建物の修繕や設備の点検、庭木の手入れなど、様々な作業に対応できる体制が整っているかを確認しましょう。

一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
【保有資格】宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/損害保険募集人資格/管理業務主任者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー/相続診断士
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社で新規事業立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に4年間従事。その後、リストグループで不動産仲介営業・営業管理職・支店長を経て、一心エステート株式会社を創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、東京都心を中心に不動産仲介実績を積み上げている。2023年に著書「住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術: 不動産は「リセール指数」で買いなさい」を出版。