老後のマンションは一括購入がおすすめ? 老後生活の負担を考えた選択を

老後のマンション購入は、現金一括がおすすめなのでしょうか。一括購入であれば家賃やローンの支払いがないため、老後生活の負担が少なくなります。住宅ローンを組む場合も、できるだけ頭金を用意しましょう。

手元の資金に余裕がない場合は、現在の住まいを売却し、新居の購入代金に充てる「住み替え」がよいでしょう。

老後にマンションを一括購入すべき理由や、住み替えのメリットを詳しく紹介します。

高齢になると住宅ローンは組みにくくなる?

国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、マンションの取得費用の平均は4,716万円です。

マンションの購入資金が不足する場合、住宅ローンを利用することが一般的です。実際にマンションの購入者のうち、54.8%の人がローンを借りています。

しかし、老後のマンション購入では、住宅ローンが組みにくいといわれています。ここでは、高齢になると住宅ローンの条件が厳しくなる理由をみていきましょう。

住宅ローンの審査では年齢や健康状態が重視される

国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、金融機関が住宅ローンの審査で考慮する項目として、もっとも回答率が高いのが「完済時年齢(98.5%)」です。次いで「健康状態(96.6%)」の回答率が高く、3番目が「借入時年齢(96.0%)」となっています。

このように住宅ローンの審査では、年齢や健康状態が重視されるため、高齢の人は審査に落ちる可能性があります。

ただし、住宅ローンの申し込み可能年齢を見ると、20~70歳に設定している金融機関が一般的です。完済時年齢が80歳未満であれば、高齢の人でもローンを申し込めるでしょう。

住宅ローンは返済期間が短くなるほど月々の負担が増える

しかし、老後に住宅ローンを借りると、借入金の返済期間が短くなるため、月々の負担が増加します。たとえば、60歳で定年を迎えた人がローンを申し込む場合、返済期間は10年~19年となることが一般的です。

国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅ローンを借りてマンションを購入した世帯の返済期間の平均は約28年です。さらに借入金の年間返済額は約123.6万円、世帯収入に占める返済負担率は15.5%となっています。

高齢者の場合、返済期間が10年~19年となるため、より短い期間で住宅ローンを払い終えなければなりません。通常よりも年間返済額が大きくなり、老後生活の負担が増える可能性があります。

老後にマンションを購入する場合は、まとまった金額の頭金を用意し、借入金額をできるだけ減らすとよいでしょう。

リバースモーゲージ型の住宅ローンという選択肢もある

持ち家がある人の場合は、リバースモーゲージ型の住宅ローンを借りる選択肢もあります。

リバースモーゲージとは、“住まいを担保にして、金融機関から融資を受けられる仕組み”です。亡くなった際に担保物件を売却し、借入金の一括返済を行うため、高齢の人でも審査に通りやすいというメリットがあります。

特にノンリコース型のリバースモーゲージなら、担保物件の売却後に債務が残っても、相続人に返済義務が引き継がれません。住宅金融支援機構と提携している金融期間が提供するリ・バース60の場合、約99%の人がノンリコース型を選択しています。

老後にマンションを一括で購入するメリット

手元の資金に余裕がある人は、住宅ローンを借りず、現金一括でマンションを購入することをおすすめします。老後生活を始めるにあたり、マンションを一括購入するメリットは2つあります。

  • 家賃やローンの支払いがないため、老後生活の負担が少ない
  • 好立地の物件なら、子どもの世代になっても資産価値が低下しにくい

家賃やローンの支払いがないため、老後生活の負担が少ない

総務省の「家計調査報告」によると、2人以上の世帯のうち、世帯主の年齢が60~69歳の世帯の生活費は、1カ月あたり30万6,476円です。世帯主の年齢が70歳以上の世帯でも、毎月24万9,177円の生活費がかかっています。

老後は定年を迎え、世帯収入のほとんどを公的年金などに頼る人が増加します。体力の衰えにより、医療費や介護費の支払いが増加し、生活水準を下げざるを得ない人もいるでしょう。ゆとりある老後生活を送るためには、60代や70代になってからの生活費を考慮した住まい選びが大切です。

老後にマンションを一括購入すれば、毎月の家賃や住宅ローンの支払いがありません。特にローンの返済は負担が大きく、マンションを購入した世帯の年間返済額の平均は約123.6万円です。マンションの一括購入により、月々の支出が大きく減少するため、老後生活の負担を抑えられるでしょう。

好立地の物件なら、子どもの世代になっても資産価値が低下しにくい

好立地のマンションは、築年数が経過しても資産価値が低下しにくいといわれています。資産価値の高いマンションを一括購入すれば、安定した資産形成につながるだけでなく、子どもの世代に相続財産として残すことも可能です。

一般的に立地条件がよいマンションには、以下のような特徴があります。

  • 都心に近いエリアにある
  • 居住者からの人気が高いエリアにある
  • 人口が多いか、今後増加が見込まれるエリアにある
  • 駅前や幹線道路沿いなど、交通の利便性が高いエリアにある
  • 住環境が良く、周辺施設が充実している
  • 犯罪発生率が少なく、女性や子育て世帯が暮らしやすい

老後の住まいとしてマンションを購入する場合は、将来の資産価値にも着目して物件を選ぶとよいでしょう。

老後のマンション購入なら住み替えがおすすめ

老後の住まいを探している人の中には、あまり自己資金に余裕がない人もいるでしょう。その場合は、現在の住まいを売却し、その代金でマンションを買う「住み替え」がおすすめです。

住み替えを行うメリットを2つ紹介します。

  • 住まいの売却代金をマンションの購入資金に充てられる
  • 退職金や預貯金を老後の生活資金のために残せる

住まいの売却代金をマンションの購入資金に充てられる

内閣府の「令和6年高齢社会白書」によると、住み替えの意向を持つ高齢者の割合は、全体の30.4%にのぼります。しかし、そのうち33.1%の人が資金不足を理由として、住み替えを実現できていないと回答しています。

資金不足が生じる要因の一つが、マンションの取得費用の高さです。国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、マンションの取得費用の平均は約4,527万円となっています。二次取得者(住み替えなど)に限定すると、取得費用の平均は約5,478万円です。

しかし、持ち家を高く売ることができれば、マンションの購入資金を捻出できます。実際にマンションへの住み替えを行った人の多くが旧居を売却しており、戸建住宅では3,117万円、集合住宅では4,151万円の売却代金を得ています。

手元の資金に余裕がない人は、住まいの売却代金をマンションの購入資金に充てるとよいでしょう。

退職金や預貯金を老後の生活資金のために残せる

マンションを購入するため、退職金や預貯金を取り崩そうとしている人もいるでしょう。

しかし、長い老後生活では、突然の病気や交通事故、大規模な自然災害など、予測不能な出来事が起きる可能性があります。住み替えを行えば、退職金や預貯金を生活資金として手元に残し、不測の事態に備えることが可能です。

老後のゆとりある生活のため、住み替えを通じてマンションの購入資金を捻出しましょう。