築40年のマンションの選択肢、売るか貸すかどっちがよい?

築40年のマンションは見た目が古くなっているうえに、最新設備もないため、積極的に購入しようという人は少ないかもしれません。しかし、新築マンションの価格が高騰しているいま、築40年であっても購入の選択肢にはいる可能性があります。

もし、いま築40年のマンションを活用するのなら、売ってしまうのと貸し出すのとどちらがよいでしょうか。築40年のマンションが持つ価値を見直してみましょう。

築40年のマンションはどんな状態?

マンションは築40年にもなると資産価値がなくなり、売却も賃貸することも難しいのではないかと思う人が多いかもしれません。しかし、必ずしもそういった選択肢がないとは限りません。まずは、築40年のマンションの主なポイントを解説します。

残りの寿命はどれくらい?

マンションの寿命を考えるとき、鉄筋コンクリート造の耐用年数である47年が引き合いに出されることがあります。しかし。法定耐用年数とは不動産など固定資産(土地を除く)を減価償却する際に用いる会計上の年数であって、必ずしも「法定年数=寿命」ではありません。マンションは適正なタイミングで大規模改修や修理をすることで、その寿命を延ばせます。したがって、マンションの寿命を一概に何年と判断することはできないのです。

事実、築40年を超えるマンションも実際に売買されており、賃貸物件として貸し出されているということです。

東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」によれば、2023年に成約した首都圏のマンションのうち、18.0%が築41年以上のマンションでした。築年数が比較的古いマンションでも、売買が成立していることがわかります。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」

これからどれくらい費用がかかる?

マンションは築40年にもなると、外壁や共用部などの改修工事に高額な費用がかかることが多くなります。修繕積立金の値上げや、一時金として数十万円から百万円単位の修繕費用を徴収されることもあるため、急な出費を想定しておきましょう。

旧耐震基準と新耐震基準を確認する

マンションの耐震基準は大きく分けると、旧耐震基準と新耐震基準に区分できます。築40数年のマンションの場合はちょうど分かれ目の時期になるため、購入時の資料をチェックするなどして、旧耐震基準と新耐震基準のどちらになるか確認しましょう。

耐震基準建築確認の時期耐震強度
旧耐震基準1981年5月31日まで震度5程度の地震が起きても倒壊や崩壊をしない
新耐震基準1981年6月1日以降震度6強~7程度の地震が起きても、倒壊や崩壊をしない

なお旧耐震基準で建てられているからといって、売却や賃貸ができないというわけではありません。

地震によるマンション倒壊は、自然災害であり不可抗力です。しかし、耐震基準を満たしていないことが原因で、万が一入居者が亡くなった場合は、貸主が損害賠償責任を負わなければならないリスクがあることは理解しておきましょう

たとえば、耐震診断を実施し、耐震補強をするなどして対処する方法はあります。管理組合で話し合うなどして、マンションの建て替えも視野に入れて話し合いましょう。

建て替えることになったらどうなる?

耐震基準を満たしていないマンションへの対処法として、「建て替え」があります。区分所有者にとっては多額な費用がかかり、仮住まいが必要になるため簡単なことではありませんが、実際に建て替えを実現したマンションもあります。

マンションを建て替える場合は、おおまかには4つの段階を踏むことになります。建て替えは、区分所有者および議決権の4/5以上の賛成が必要です。また、建て替え決議が成立したとしても、デベロッパーの選定や建て替えプランの作成に時間がかかります。建て替えにかかる流れは次のとおりです。

  1. 【準備】建て替えすべきかどうか、管理組合で話し合う
  2. 【決定】建て替え決議が成立(区分所有者および議決権の4/5以上の賛成が必要)
  3. 【計画】設計や施工を依頼するデベロッパーを決定し、建て替え計画を立てる
  4. 【実施】区分所有者は仮住まいへ引っ越し、建て替え工事を実施する

建て替えについて話し合ってから、実際に住めるようになるまで10年以上かかることが多く、なかには15~20年かかるケースもあります。

マンションの規模や戸数、建て替えプランによっても異なりますが、区分所有者の負担額の目安は、1,000万~3,000万円といわれています。建て替えれば新築のマンションになりますが、誰でも負担できる金額ではありません。

難しい場合は、計画段階で時価での買い取り(売渡請求権)を希望する方法もあります。

築40年のマンションを「売る」ってどう?

築40年のマンションを売却する場合、どのようなことが課題になるのでしょうか。また賃貸と比べて売却のほうが向いているとしたら、どのように売却したらよいのでしょうか。ここでは、築40年のマンションを売却する際に、知っておきたいポイントを紹介します。

購入希望者がいるかどうかがポイント

築40年のマンションでも、売却は可能です。しかし売り出しても、成約に至っていないマンションがあるのも確かです。売却を検討するときは、まず不動産会社に査定を依頼しましょう。不動産会社の査定価格に納得できれば、売却を具体的に進めていきましょう。

査定価格で売り出しても、必ずしもその価格で売却できるとは限りませんが、査定価格に近い価格で売却できる可能性があります。

基本的に高額売却は難しい

築40年のマンションは、基本的には高額での売却は難しいかもしれません。早期に売却を成立させたいときは適正価格で売り出すようにし、3カ月程度経っても買い手が見つからないときは、値下げや賃貸への切り替えを検討しましょう。

それでもなるべく高く売却したいときは耐震診断を実施して、ほかのマンションとの差別化を図るなどの工夫をしてみましょう。ただし、多額の費用をかけても、売買価格に上乗せできるわけではありません。リフォームやハウスクリーニングをする際は、不動産会社の担当者に相談するようにしてください。

マンションリノベーションが注目されている

近年新築マンションの価格が高騰していることもあり、中古マンションを安く購入して、自分の理想どおりにリノベーションして住みたいと考える人が一定数存在します。あえて築年数が古いマンションを購入する人もいるため、価格次第では早期売却も夢ではありません。

築40年のマンションはいまのマンションよりも早い時期に建てられているため、立地条件がよい傾向があります。ターゲット層を見極めて、メリットを上手にアピールしましょう。

築40年のマンションを「貸す」のはどう?

築40年のマンションを貸し出す場合、どのようなことが課題になるのでしょうか。また売却に比べて賃貸のほうが向いているとしたら、どのように入居者を募集したらよいのでしょうか。ここでは、築40年のマンションを賃貸する際に、知っておきたいポイントを紹介します。

駅から遠いと借主を見つけるのが困難

賃貸物件を探すときに駅からの距離や立地条件を重視する人が多く、築年数が古いうえに駅から遠い場合は、借主を見つけるのに苦労するでしょう。

逆にいえば、駅から近いうえに賃料が安ければ、入居したい人は一定数存在するでしょう。「駅から近い」「日当たりがよい」「買い物が便利」など、貸しやすい条件が揃っているときは、マンションを賃貸にして家賃収入を得ることを検討してみましょう。

リフォームなどの費用がかかる

マンションを貸し出すときは、内装をリフォームするのが一般的です。また水回りを一度もリフォームしていない場合は、貸し出すにあたって多少リフォームが必要になるかもしれません。築40年のマンションは設備が古いため、貸し出すとき初期投資の費用が高くつくことを想定しておきましょう。

ただし、空室期間を短くするためにも、賃料を安く設定することが大切です。費用をかけすぎないように注意し、必ず不動産会社に相談してから、リフォームや改修をする箇所、内容を決定しましょう。

定期収入が加わって生活が安定する

築40年のマンションを賃貸にすることで、安定した家賃収入を得られると、収入を増やせます。マンション売却は資産を手放すことになりますが、賃貸できれば不労所得になります。まとまった資金が必要でないのであれば、賃貸に出すことも検討してみましょう。

「売る」「貸す」を判断するポイントは?

最後に、「売る」のが向いている人と、「貸す」のが向いている人の特徴を紹介します。

売却がおすすめの人

  • 固定資産税や管理費の支払いから解放されたい
  • まとまった資金が必要
  • 今後マンションの維持管理に費用がかかることが心配

賃貸がおすすめの人

  • 家族の思い出があるマンションを手放したくない
  • 不動産で不労所得を得たい
  • 将来的に自分が住む可能性がある

築40年のマンションを売却するか、それとも賃貸するかで迷ったら、どちらが向いているか検討してみましょう。